某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

有頂天高原旅行記 その3

鈴「ひゃー!」

完「うわわわわ」

(有頂天高原ハイランドパーク ジェットコースター)

ジェットコースターを降りた二人は、

肩で息をしていた。

完「け、けっこう、スリルありましたね…」

鈴「楽しかったです!」

園内はやはり閑散としていて、客は少ないようだった。

完「これだけすいてると乗りたい放題ですね」

鈴「次はバイキング行きましょう!」

絶叫マシンにばかり乗りたがる鈴だった。

鈴「あの、大丈夫ですか?」

完「すみません、ちょっと酔ってしまって…

  ソフトクリームでも食べればなんとか」

鈴「買ってきます!」

完は近くのベンチに腰掛けて鈴を待った。

完(情けないなあ…)

まだセミのなく9月下旬。

有頂天高原の自然は豊かで、

遊園地の中でさえセミの鳴き声が聞こえてくる。

鈴「お待たせしましたぁー!」

鈴がふたりぶんのソフトクリームを手にやってきた。

鈴「ジャージー牛ソフトクリームだそうですよ!」

完「それは濃厚ですね」

鈴「ご存じなんですか?」

完「よく食べたものです。お代はあとで…いただきます」

冷えたソフトクリームは、完の体調をいやしてくれる。

鈴「このくらいおごらせてくださいよー」

完「400円を笑う者は400円に泣くんですよ」

鈴「いえ、うさぎさんが具合悪くなったの

  私のせいですから…おごらせてください」

それもそうだった。乗り物の選択が悪かったのだ。

完「それじゃ…お言葉に甘えまして…

  おいしいですねこれ」

鈴「昨日食べたソフトより濃厚です!」

ふたりでひとしきりソフトクリームに夢中。

鈴「猫さん」

ソフトクリーム彫刻である。

完「写真撮りましょうか」

鈴「はい!」

ソフトクリームの猫は完のカメラに収まった。

鈴はソフトクリームをなめる完に見とれていた。

鈴(うさぎさんのフェラ画像…)

鈴はそっとカメラを構えていた。

完「えっ、なんですか?」

鈴「そのままソフトクリーム食べててください」

完「変なところ撮りたがるんですね…」

完は素直に従った。

鈴はあらゆる角度から完を撮りまくった。

完「そ、そんなに撮らなくても…」

鈴「うさぎさんがおいしそうなのでうれしくてつい」

半分は本当だが、半分はウソである。

鈴(妄想画像ゲット!!)

鈴は隠れてガッツポーズした。

完「次は酔わないところに行きたいです」

鈴「じゃあ…お化け屋敷とか…」

完「お化け怖くないんですか?」

鈴「怖いですけどせっかく来たんだし!」

完「そうですね、せっかくですから行きましょうか」

ふたりでお化け屋敷に入る。

完「足元気をつけてくださいね」

鈴「はい…あ、あの」

完「はい?」

鈴「手…つないでもいいですか?」

完「どうぞ」

井戸から幽霊がでてくる。

完「こんにちはー」

鈴「作りモノですよねこれ」

完「うーん、どうもお粗末ですね」

いまひとつ盛り上がらないお化け屋敷である。

鈴「うわっ」

足元がいきなりやわらかくなった。

その拍子に鈴は完に抱きついた。

鈴「すすすみません」

完「大丈夫です。きっと死体でもふませてるつもりなんでしょう」

鈴「イヤなこといわないでくださいよ~」

今度は棺の中からドラキュラが出てきた。

完「こんにちはー」

鈴「こんにちはー」

ドラキュラ「血~を~よ~こ~せ~」

ドラキュラは棺から出て二人におそいかかった。

鈴「きゃあああああ!!」

完「逃げましょう!」

ふたりは一目散に逃げ出した。

その後も幽霊や化け物に追い回される。

鈴「どうなってるんですかこれー!」

完「し、進化してますね明らかに」

お化け屋敷から出る頃には二人とも息を切らしていた。

完「次は何かに追い回されないところに行きましょう」

鈴「そうですね…あ!メリーゴーランド!」

鈴は意気揚々と馬車に乗り込んだ。

完「馬には乗らないんですか?」

鈴「こっちに乗るのがあこがれだったんです」

完「じゃあ、向かい側に失礼して…」

ブザーが鳴ると、メリーゴーランドは回りだした。

鈴「うさぎさんはい、チーズ!」

完はピースサインを出した。

完「草餅さんもはい、チーズ」

鈴はダブルピースを出した。

鈴「本当にフェイスブロックに載せないでくださいね…」

完「載せませんよ。大丈夫です」

鈴「上下に動かないから酔わなくて済みますね」

完「あの馬の上下動くらいなら大丈夫ですよきっと」

ふたりはメリーゴーランドを降りると、

園内を散歩し始めた。

鈴「あっ、射的があります!」

完「やってみますか」

係員「5玉300円だよ~」

完「ふたりで10玉でお願いします」

係員「はい、ここにコルク詰めてね」

係員は銃口を指さした。

鈴「よーし」

完「草餅さん、撃鉄を引かないと打てませんよ」

鈴「あう」

完「のび太くんみたいに当ててみたいですね」

完は両肘を台について構えた。

その戦果は。

係員「はい、お嬢ちゃんあたり~

   賞品のシャボン玉セットだよ」

鈴「わあい!うさぎさん、私やりました!」

完「よかったですね。僕は全部はずしました」

それでもにこにこと鈴の喜ぶ様を見ている完。

完「あ、もうこんな時間…」

鈴「お宿ですか?」

完「今夜は山奥のペンションなので時間がかかります」

鈴「ペンション!?」

鈴は心躍った。

完「ここも十分山奥ですが、さらに奥になるので

  もうそろそろ向かいましょう」

鈴「はい!」

(有頂天高原 ペンション 森のキツツキ)

オーナー「いらっしゃいませ、冷たいお飲物はいかがですか?」

完「アイスティーで」

鈴「お、同じく」

オーナー「かしこまりました」

ポーター「お荷物お運びします」:

完「お願いします」

一週間分の服が入っているので当然ふたりとも

トランクになってしまっていた。

部屋はツインで、窓の外は鬱蒼としげる森。

鳥のさえずりが聞こえる。

荷物を置いてベッドに腰掛けていると、

オーナー「お飲物をお持ちしました」

オーナー自らアイスティーを二つ持ってきた。

オーナー「夕食は19時からです」

完「わかりました」

鈴は座りながらベッドをなでていた。

ツインのベッド。

今日は別々に眠るのだろうか。

しかし、ツインとはいえひとつのベッドが

セミダブルくらいの大きさがある。

それゆえ、部屋が少し狭く感じられた。

完「コンタクトレンズはずしてきますね」

鈴「あ、はい」

鈴(そういえば眼鏡のうさぎさん撮ってないな…)

完「終わりました」

鈴「はい、チーズ!」

完「え?」

また間の抜けた顔で写ってしまう完だった。

完「どうしたんですか急に」

鈴「眼鏡のうさぎさんを撮り忘れていたので」

完「心の準備ができてる時に撮ってください…」

鈴「心の準備できました?」

完「ええ、まあ一応…」

完はベッドに腰掛けた。

鈴「いきますよー、はい、チーズ」

完ははにかんだ笑顔を浮かべた。

鈴(かわいいいいいいいいいいいい)

デジカメのプレビュー画面でニヤニヤする鈴だった。

完「そんな変な顔で写ってますか?」

鈴「とてもいい顔で写ってますよほら!」

完「わ…なんだか恥ずかしそうに写ってますね」

鈴(そこがいいのだ!)

鈴「私もコンタクトはずしてきます」

完「カメラ持って待ってます」

鈴「持たなくていいです!」

鈴が洗面所でコンタクトレンズをはずしている間に

完はショルダーバッグからデジカメを取り出していた。

鈴「終わりましたー」

完「はい、どうぞ座ってください」

鈴「撮る気満々じゃないですかー!」

完「二人しかいないので二人そろった写真がとれませんね」

鈴「それもそうですね」

完「はい、チーズ!」

鈴「はい!?」

完「冗談です。ポーズ決めてからにしましょう」

鈴はピースサインを出した。

少し上目遣いになってしまうのは、恥ずかしさからか。

完「はい、チーズ」

かくして眼鏡姿のふたりがお互いのカメラに収まった。

完「撮られたら撮りかえす…何かのゲームみたいですね」

鈴「負けませんよ!」

ペンションの夕食は多国籍というか無国籍というか、

説明のつけようがない料理だった。

一応オーナーから説明はあったものの

覚えきれるものでもなかった。

鈴「これ…なんて名前でしたっけ」

完「気にしないで頂きましょう」

鈴「そうですね」

鈴が「あ」と口を開いた。

鈴「カメラ持ってくるのわすれました…」

完「あ、僕は持ってきましたよ」

料理の写真を撮る完。

完「あとで送りますね」

鈴「お願いします!」

夕食を満喫したふたりは、部屋に戻ってきた。

鈴「ツインなんですね…」

隣の部屋から話し声が聞こえる。テレビの音だろうか。

完「ここ壁薄いんですかね…」

鈴「テレビのボリュームが大きいのかもしれませんよ」

ほどなくして話し声が聞こえなくなる。

完「草餅さんの読みが当たったみたいですね」

鈴「よかった…」

完「それじゃ、シャワー浴びてきちゃいましょうか」

ユニットバスなので二人同時には入れない。

髪が乾くのが遅い鈴が先に入ることになった。

ペンションには備え付けのパジャマなどはない。

それぞれ持参したパジャマを着ることになった。

鈴はこの日のためにパジャマを新調していた。

なぜなら、この季節はTシャツとパンツのみで寝ていたからである。

これが私のパジャマだ、と主張できればよかったのだが

そういうわけにもいかなかった。

恥ずかしかったのである。

一方、完といえばシルクのパジャマに身を包んでいた。

完「かわいらしいパジャマですね」

鈴「えへへ…そうですか?」

完「写真、撮ってもいいですか?」

鈴「ええっ!?」

完「撮らせてください」

撮り撮られ。

鈴「うさ…おさ…むさん」

完「は、はい」

鈴「一緒に寝てもいいですか…?」

完「…は、はい…」

鈴は完のベッドに腰掛けた。

どちらからともなくキスをする。

そのままベッドに倒れ込む。

今夜は鈴は受け身に徹した。

しかし、完がなかなか仕掛けてこない。

鈴「あの…完さん」

完「はい」

鈴「キスしていいですか」

完「ど…どうぞ…」

瞳を閉じた完の唇を奪い、犯し、なぶる。

完「どうしてそう…激しいんですか?」

鈴「す、好きだからです…すみません…」

完は鈴の太股をなでさすった。

ふたりとも横向きに寝ているので、

太股の脇側をなでることになる。

完「草餅さん」

鈴「はい」

完「腹筋運動しましょうか」

鈴「ここまできてそれですかーorz」

完「冗談です。もっと言うと、照れ隠しです」

鈴「キスがしたいです」

完「どうぞ…」

鈴「目、閉じてもらっていいですか?」

完「やさしくしてくださいね?」

鈴「はい…すみません」

鈴は完にやさしくキスをした。

しかし、その深さはさきほどと変わりなかった。

完「は…はあ…ぼくはもうらめれす…」

ダメです、の呂律がまわらない完だった。

そんな完の手が鈴の胸元にのびる。

鈴「あ…」

完「おかえしですよ」

鈴はノーブラだった。

なので、目的地をめざすのは容易だった。

完はパジャマの上から鈴の乳首をさぐりあて…

鈴「あ…んっ」

鈴を仰向けにし、布越しに両手で乳首をくすぐった。

これはよく弟にしていた行為である。

鈴「あふっ…ぅん…、完、さん……」

完(男も女もかわらないんだな…)

完は鈴の首筋に顔を埋めた。

完(いい匂い…)

両手を動かしつつ、完は鈴の首筋にすいついた。

鈴「あっ…はあっ、あんん…」

鈴(うさぎさんお上手だよぉ…おとといまで童貞とは思えないよ…)

完「実は僕はものすごい甘えん坊なんです」

鈴「え?」

完「でも、いい年して父や母に甘えられないので…その…弟に…」

鈴「え!?」

完「高校ぐらいの時ですよ?」

鈴(BLの旬じゃないかーーーー!!!!!!)

鈴「え、そ、それでどこまでやったんですか」

完「今したところまでです」

鈴「え…」

完「あ、キスはしていません」

鈴「ですよね、ですよね!」

完「こうやってくすぐりあって…」

鈴「あ……完さん……」

完「僕はそのうち眠ってしまうんです」

鈴「弟さんと一緒に…?」

完「はい。弟はあの体質ですから大変なことに…」

鈴「あ…そういえばそうでしたね…」

完「逆に僕もくすぐられたりして…大変でした」

鈴「お互い弱点は知られてますからね…」

完「だから上半身は得意なんです」

鈴「あう、完さん、あっ…そこばっかり…んっ」

完「痛いですか?」

鈴「きもちいい、です…んっ」

お互い一枚も脱いでいないのに

鈴はできあがりつつあった。

鈴「わ…私もしたいです…」

完「ダメです。今日はおとなしくしていてください」

鈴(ダメ出しされたー!)

鈴「私そんなにヘタクソでしたか!?」

完「お上手すぎるからダメです。調子が狂います」

完は眼鏡をはずしていなかった。

鈴(鬼畜眼鏡!!)

完は鈴のパジャマのボタンに手をかけた。

鈴の素肌があらわになる。

さきほどからいじられつづけて鈴の乳首は敏感になっていた。

そこに吸い付かれる。

鈴「あっ、あんっ、完さんそんな…、そんなにしちゃ…」

完は半分童心に返っていた。

左の乳首を手のひらでなでまわし、

右の乳首に乳幼児のように吸い付く。

完「邪魔ですねこれ」

完は眼鏡をはずし、ベッドサイドに置いた。

鈴(ああ、鬼畜じゃなくなった…)

ほっとしたのもつかの間。

煌々と電気のついた室内で

完は布団をはぎとって隣のベッドに置いてしまった。

鈴「ど、どうしたんですか」

完「布団があると見えませんから、ここ」

鈴「ひゃいっ」

完が鈴の股間に触れた。

もちろんパジャマ越しである。

完「腰…あげてもらってもいいですか」

鈴「は…はい…」

完は鈴が腰を上げると、鈴のパジャマを下着ごと奪い去った。

鈴「丸見えじゃないですかー」

完「何かいけませんか?」

鈴「やっぱり恥ずかしいです…」

完は一枚も脱いでいなかった。

鈴「不公平!不公平です!!」

鈴は完のパジャマのズボンを下ろそうとした。

が、完は鈴の両手を押さえつけた。

鈴(すごい力…全然かなわない…)

完はその細身からは想像もつかないくらい力強かった。

完「今度イタズラしようとしたらお仕置きしますよ」

鈴(うさぎさんのお仕置き!)

鈴「お仕置きってちなみにどんな…」

完「腹筋50回です」

鈴(色気ない!!)

鈴は落胆した。

完「それとももっと恥ずかしいのがいいですか?

  おしりぺんぺんとか」

鈴「どうぞ…ぺんぺんしてください…」

鈴がうつぶせになった。

完「…冗談です」

完は鈴の尻をなでた。

そのままするりと濡れた秘部に指を這わせる。

鈴「ひゃう!」

鈴の腰が跳ねた。

完「やっぱり仰向けに…」

完が鈴の体勢を変えようとする。

鈴は完と目が合うたび、少しも衣服に乱れのない完を見てしまう。

鈴「やっぱり不公平です~」

鈴は枕に顔を埋め、仰向けになるのを拒んだ。

完「昨日僕の浴衣を滅茶苦茶にしておいて

  下着以外全然脱がなかった人が何を言いますか」

鈴「そこ根に持ってるんですか!?」

完「持ちますよ、初めてだったのに…

  ものすごく恥ずかしかったんですから」

鈴「恥らううさぎさんがかわいくてですね…」

完「やっぱりお仕置きですね」

完は強引に鈴を仰向けにすると、激しいキスをした。

鈴「んっ………ん…………」

鈴は完のされるがままに貪られた。

完「はあっ……とにかくこっちにもキスするんです…」

完は鈴の秘部に指を這わせると、そのまま顔を寄せた。

指で開き、目的の肉芽に舌を這わせる。

鈴「あうっ、ひああ…完さん、完さあぁん……」

もはや鈴になすすべはなかった。

指で舌で犯され、何もかもどうでもよくなってくる。

完「……おいしいです」

耳元で囁かれる。

鈴の蜜を味わった完の口から発せられる言葉に

鈴は羞恥を抑えられなかった。

鈴「もう…入れてください…我慢できません…」

鈴は懇願した。

完「僕も我慢できません…鈴さん…あの……」

鈴「はい…ご用意します……」

コンドームをつけるのは鈴の役目だった。

鈴がバッグの中からコンドームを探す間に

完はパジャマと下着を脱ぎ捨てていた。

鈴「やっと脱いでくれましたね…」

鈴はコンドームをつける前に、

完のしたたりに舌を這わせた。

完「ん……」

完が身をよじると、鈴は興奮に襲われた。

コンドームの封を切ると、手早くかぶせる。

鈴「入れて…ください…」

自ら脚を開き、両手で太股を支える。

これほど扇情的な格好もない。

完は鈴の入り口を自らの先端で探り当て、侵入する。

完「…ふ………っ」

鈴「ああ…あ………」

完は鈴の中で、まるで泳ぐかのようにゆらゆらと揺れた。

鈴を抱きしめたまま、快感の波にただよう。

完「気持ちいい…です……」

鈴「私も……」

森の湖畔に浮かぶボートのように完は揺れ続けた。

快感の波が押しては引いて、

いつまででもこうしていられそうだった。

完「ずっとこのままこうしていたいです…」

鈴「完さん……」

揺れる完の動きに合わせて、鈴は完を締め付けた。

完「っ…鈴、さん…」

鈴「は…、あ…、んっ、ん…」

やがて鈴も腰を動かし始めた。

より深く繋がったふたりは、互いに限界へと近づいていった。

鈴「はあっ、はあ…あ…ああ…」

完「すみません、もう…ん…ッ」

完の腰ががくんと跳ねた。

鈴「完さん…好きにしてください…」

完「鈴さん……!」

完はそれまでのゆらめきとは打って変わって、

激しく腰を打ちつけ始めた。

鈴「あっ!ああぅ、完さ…あ!」

完「鈴さん…鈴、さん…ん…!」

完は鈴の絶頂と同時に精を放った。

鈴の内側で完が脈打つ。

鈴「完さん……」

完「…はい」

鈴「もうすこしこのまま…」

完「はい…」

ふたりは呼吸が整うまで繋がりあった。

やがて離れると、脱ぎ捨てたパジャマを着る。

完「こうしたかったんです」

鈴「え?」

完「最後の日に…こうしたかったんです」

鈴「ごめんなさいごめんなさい…」

鈴は完の夢をぶちこわしたことに頭を抱えた。

完「いいんです。楽しみが増えましたから」

完は鈴の乳房を軽くつついた。

完「したかったことにかわりはありませんから」

完は正直に言って、鈴の乳房を手で丸く包んだ。

鈴「すいません私…狼女で……」

完「かまいませんよ狼でも……鈴さんなら……」

完は眠りについた。

鈴はその寝顔をいつまでも見ていた。

やがて鈴も眠りについた。

旅はまだ続くのだった。

有頂天高原旅行記 2

体を洗い終えたふたりは、横に並んで岩風呂に浸かっていた。

ふたりとも大事なところはタオルでガードしている。

完「本当は湯船にタオルは入れてはいけないんですけどね…」

鈴「そ、そうなんですよね…」

完「川の音が聞こえますね」

鈴「あ!星が見えます!」

完「ほんとだ…僕の視力で星が見えるなんて…」

鈴「眼鏡かけてまた空を見てみましょうか」

完「それも良さそうですね」

言葉少なくなってくる二人。

完「………あの」

鈴「はい?」

完「いえ…お風呂からあがったら、きいてほしい話があります」

鈴「今じゃダメなんですか?」

完「相手の表情が見えませんから」

鈴「なるほど…」

響く虫の音。

完「このお湯熱めですね…露天だからでしょうか」

鈴「そうですね、ちょっとのぼせてきました」

完「大丈夫ですか?先に上がってても大丈夫ですよ」

鈴「そうさせていただきます…」

鈴は岩風呂から上がると、脱衣所で体を拭いて浴衣を着て眼鏡をかけた。

部屋で涼んでいると、完も上がってきた。

完「……………………」

鈴「どうしました?」

完「話が切り出せなくて…」

どうやら重大な話らしい。

鈴「あの…私この旅行で何か失礼なこと…」

完「いえ、そういうわけではなく…」

眼鏡をかけた完は深呼吸した。

完「草餅さんは僕と友達になりたかったんですよね?」

鈴「は、はい」

完「でも僕は…もう友達ではいられそうにありません」

鈴「えっ」

うつむいた完の顔は、前髪が邪魔で見えない。

完「誰か他の男性に草餅さんを取られるのかと思うと我慢ができないんです」

鈴「うさぎさん…」

完「だからこれからは…」

完は鈴に向き直った。

完「結婚を前提におつきあいさせていただいてよろしいでしょうか」

鈴「!!…………」

鈴は面食らった。

もちろん、そのつもりでいたのだ。

だが、時が来たら自分から言い出そうと思っていた。

鈴「は…はい…」

完「え、本当にいいんですか?」

鈴「はい、是非…」

完「友達になりたいって…」

鈴「お友達からはじめましょう、という意味で…私も同じように思ってましたから…」

完「…………………」

相思相愛。

その言葉が完の脳裏をよぎった。

完「じゃあ……」

鈴「はい?」

完「キスしていいですか」

鈴「…はい…」

すでに敷かれた布団の上。

鈴はうっとりと瞳を閉じた。

完は鈴の唇にそっと口づけをした。

鈴(もうだめだ辛抱たまらん!)

鈴は完に抱きついた!

完「わっ!?」

二人して布団に寝転がってしまう。

鈴「うさぎさんうさぎさん!!」

鈴は完の浴衣の合わせに手を差し入れた。

完「えっ、ちょっと、待っ…」

完の浴衣はあっという間に着崩れてしまった。

鈴「うーさーぎーさーーーーん!!」

鈴は完のわきの下をくすぐった。

完の弱点は弟である了から学習済みだったのである。

完「ちょ、ちょっとそこは…あ、ん…っ」

完は鈴の肩を押し返そうとするが、力が入らない。

完「草餅さん、草餅さん…鈴、さん…」

鈴は、はっと顔をあげた。

いまにも羞恥で泣き出しそうな完の顔を見て、

鈴(しまったー!)

あわてて完から離れた。

完「そんなに離れなくていいですから…」

鈴「ごめんなさいごめんなさい!!つい出来心で…」

完「情技の人ってみんなこうなんですか?」

鈴「う…ノーコメントでお願いします…」

鈴は布団にくるまって団子になってしまった。

完「草餅さん」

鈴「はいぃ」

完「その中に入れてもらってもいいですか」

鈴「…はい」

布団は2枚敷かれていたが、一枚の布団の中に

ふたりで無理矢理おさまる。

鈴(うさぎさん乳首見えてる乳首!)

完「もう一度キスしてもいいですか」

鈴「はい…」

体勢が変わる。

今度は完が上になった。

鈴の口内で完の舌がぎこちなく動いていた。

そのぎこちなさが愛おしかった。

完「ん………ふ…」

鈴のほうから舌をからめると、

完はくぐもった声を漏らした。

鈴は完の顔を手で押さえて、思う存分キスをした。

完「ふ……んん………」

完は口内が敏感だった。

味覚にうるさいのはそのためでもある。

鈴(キスだけで声が出ちゃうんだ…)

離れた時には、完の瞳は快感に潤んでいた。

完「きょ…今日はここまでにしましょう…」

鈴「え?」

完「休みはまだありますから…」

鈴「そんなこと言わずに…」

また鈴が完のわきの下をくすぐる。

完「ダメ…草餅さん…あっ…は……」

鈴の手が完の下半身にのびた。

完「!!!」

鈴「こんなに硬くして…うさぎさん…」

完「だ、ダメですダメです…初日でこんなの…」

鈴「い…いつする予定だったんですか?」

完「最後のホテルで…」

鈴「待てません」

鈴は布団にもぐりこみ、硬くなった完の半身を口にくわえた。

完「あ、あ、あ………」

飲み込まれていく。そんな錯覚がした。

完「や…やめてください…そんなことしたら…」

鈴は聞く耳を持たなかった。

舌で舐めあげ、先端を口に含むと舌を動かす。

完「離して…くださ…い…おねがい……」

鈴がやっと離れると、今度は完も布団にもぐりこんできた。

完「お返しです」

鈴「きゃあ!」

すでに濡れた秘部に手をふれられそうになった。

完「脚を開いてください…」

鈴「うう…」

ふとんはどこへやら。

蛍光灯の下。丸見えである。

完「これでよく見えます」

鈴「やああ…」

完は今までに吸収した知識を総動員して

鈴の秘部を舌で愛撫した。

鈴「ひゃん!あふ、ふああぁ!」

鈴(クリトリスばっかり責めないでぇ…!!)

完「………おいしいです」

鈴の愛液を舐め取った完が言う。

鈴は羞恥に焦がれた。

鈴「は、はずかしい…」

完「僕のことだって散々な目にあわせたじゃないですか」

鈴「散々だったんですか!?」

完「いえ…その…気持ちよかったです」

鈴「あの…その…」

鈴は完の右手をとって、

人差し指と中指を舐め始めた。

完「ん…」

手にも快感はある。

鈴「入れて…ください…」

鈴は完の右手を自分の脚の間へと導いた。

完「……痛かったら言ってくださいね?」

鈴「はい…」

完は人差し指と中指をそろえて鈴の内部へ侵入した。

鈴「あ、ん……」

完は慎重に鈴の内側をまさぐる。

そのたびに鈴の口から嗚咽にも似た声が漏れた。

完の指は根本まで鈴の内側に入ってしまっていた。

完はいたずら心が芽生えた。

指を入れたまま、鈴のクリトリスに舌を這わせたのだ。

鈴「あああん!」

鈴の体がびくんと跳ねた。

それでも完は行為をやめなかった。

鈴「ひっ、うさぎさんっ、あうっ、らめぇ…」

完「おさむと呼んでもらませんか」

鈴「あう、お、おさむさん!」

完は気が済んだのか、鈴の中にいれていた指を引き抜いた。

そして、その指についた液体をきれいに舐め取る。

完「おいしいです」

鈴「二回目です…」

完「弟からこれを渡されまして」

コンドームである。

完「本当は今日使うつもりではなかったのですが…」

鈴「使いましょう」

鈴が封を切ると

鈴「ちょっと股間失礼しますね」

と言って完の自身にすっぽりかぶせた。

完「すごいですね…僕なんて付け方知りませんでした…」

鈴「一応その、経験済みなので…」

完「情技っていろんなことするんですね…」

鈴「仕事じゃないです!」

鈴は完を押し倒した。

鈴「ここは私に任せてください…」

完「はい…」

童貞の完は素直に従った。

鈴「ん……」

完の分身が鈴の中に飲み込まれてゆく。

完「………っ、…………!」

完はこみあげる快感に耐えていた。

鈴はゆっくりと動き始めた。

腰を前後にすりつけるように体の内側で完を愛撫する。

鈴「あ…あ…うさぎさん……」

完「完です…」

鈴「完さん……好き…です…」

完「僕も…好きです、鈴さん…」

お互いの境界が溶けてなくなってしまうほどに。

ふたりのつながりは情愛と快感に満ちていた。

完「これでよかったんでしょうか…」

事後。

すっかり熱もさめた頃、完は独り言のようにつぶやいた。

鈴「結果オーライということで」

完「なんだか…すごく眠くなってきました…」

鈴「私も…とても満たされた気分です…」

ふたりはいつしか眠りについた。

翌日。

純和風の朝食を食べた二人は、次の目的地へ向かっていた。

有頂天ハイランドパーク。

有頂天高原に位置する遊園地である。

鈴「絶叫マシンなんて乗るの久しぶりですよ~」

完「僕もです」

旅はまだまだ続きそうだった。

ドイツにて 2

(ドイツ フリューゲルホテルへの道)

無事に仕事を終えた柏崎は、

雪とともに帰路についていた。

雪「あっ、そこのコンビニに寄っていいですか?」

柏崎「いいですよ」

雪「すぐ終わりますので外で待っていてください」

柏崎「え?入っちゃダメですか?」

雪「そ、その…生理用品を…」

柏崎「いってらっしゃいませ!」

その実、雪が買ったのは生理用品とコンドームだった。

生理用品はカモフラージュだったのだ。

柏崎(そうか生理か…じゃあできないな…)

柏崎も柏崎で、頭はソレでいっぱいだったのである。

雪「お待たせしました」

柏崎「大丈夫ですか?体調とか」

雪「いえ、念のために買っただけですからまだ来てません」

柏崎「そ、そうですか」

柏崎は希望を持った!

(ドイツ フリューゲルホテル)

連泊ということもあって、気軽にエレベーターに乗る。

夕食はもう済んでいた。

柏崎「ああ…ビールが飲みたい……」

雪「ダメですよ!お酒はダメですよ!」

雪も悪意があって言っているわけではないのだ。

そのことが声の色から伝わってくる。

柏崎「これからずっと紺野さんがそうやって言ってくれたら

   一生禁酒できそうな気がします」

雪「一生…」

エレベーターが目的の階についた。

柏崎「ドイツにいる間の特権ですけどね」

雪「一生…」

柏崎「紺野さん?」

雪「いっいえ、なんでもないです」

柏崎に、一生の禁酒を誓わせる。

そのためには、一生一緒にいなければならない。

つまり、結婚しなければならないのだ。

雪はそれを望んでいた。

ホテルの部屋。ダブルのベッドにふたりで腰掛けて

会話を交わす二人。

雪「柏崎先生」

柏崎「ん?」

雪「もし私が柏崎先生に今後もつきまとって、禁酒させようとしたらどうしますか?」

柏崎「え…それは…禁酒は所長からも言われてますし…」

雪「私の独断でそうした場合はどうなりますか?」

柏崎「紺野さんはオレに一生つきまといたいですか?」

雪「………………………」

雪は真っ赤になってしまった!

柏崎「な…どうしたんですか紺野さん」

雪「ちょっと先にシャワー浴びてきます!」

雪は浴室に逃げ込んでしまった。

柏崎(紺野さん…)

雪がシャワーから上がるまで、柏崎はベッドに横たわっていた。

雪「お待たせしました、どうぞ…」

柏崎「さっきのお話ですが」

柏崎は切り出した。

柏崎「オレは紺野さんに一生禁酒を言い渡されてもかまいません。

   そのかわり、ひとつ条件があります」

雪「なんでしょう」

柏崎「オレと結婚してください」

雪「!!……………」

あまりにも唐突なプロポーズ。

雪「わ、わかりました」

柏崎「え」

雪「私、柏崎先生と結婚します。身も心も柏崎先生に捧げます」

柏崎「そ、そんな大げさな」

雪「だからお酒はダメですよ!」

オチが待っているのだった。

柏崎「紺野さんはオレに禁酒させたいのか結婚したいのかどっちなんですか」

雪「え…それは…けっこん…」

柏崎「え?はい?よくきこえませんでした」

雪「柏崎先生と結婚したいです!禁酒は二の次でいいです!

  でもドイツにいる間はお酒はダメなんです!」

雪は肩で息をしていた。

柏崎「…なんだか変なプロポーズになっちゃいましたね」

雪「そうですか?」

柏崎「帰国したら…やり直させてください」

柏崎も浴室に入った。

雪は枕の下にコンドームを忍ばせた。

雪(柏崎先生と…エッチするのかな今日…)

雪も期待していたのである。

雪の携帯電話が鳴る。

雪「紺野です」

龍崎「やあっほー☆今日も柏崎先生と寝てるー?」

雪「柏崎先生はお風呂に入ってます」

龍崎「ダメじゃないの一緒にお風呂にはいらなきゃ」

雪「それは昨日…いえあのはい」

龍崎「それで?昨日は一緒に寝たの?」

雪「はい」

龍崎「よしよし。今日も一緒に寝るように!明日早いからまたねー!」

一方的に国際電話が切れる。

それと同時に柏崎が浴室から出てきた。

柏崎「電話ですか?」

雪「機関長からでした…」

柏崎「あの人何考えてるかわからないですよね…」

柏崎がごく自然な動作で冷蔵庫に手をのばす。

雪「あっ!お酒はダメですよ!」

柏崎「炭酸水ですよ」

柏崎の言ったとおり、ボトルは透き通っていた。

柏崎「飲みます?」

雪「あ…はい」

ふたりぶんのグラスに注がれる炭酸水。

柏崎は一気に飲み干した。

喉が鳴る。

雪はその様子を見ていた。

雪(男らしい人…)

こんなステレオタイプな男らしさでもときめいてしまうのだった。

雪はゆっくりと炭酸水に口をつけた。

その口に柏崎が素早くキスをした。

雪「んっ…」

口内ははじけ、唇は甘い。

未体験の感覚に雪は戸惑った。

そのうち柏崎の舌が雪の唇を割って入り、

雪の口内の炭酸水は柏崎に奪われてしまう。

柏崎「おいしいです」

雪「びっくりしたじゃないですかー」

雪が不満を口にする。

柏崎「風呂上がりで喉がカラカラなんです」

雪「だからってあんな飲み方しなくたって……」

柏崎「ああしたほうがおいしいんです」

雪「……………」

雪は柏崎の目を見ながら炭酸水を口に含んだ。

そして目を閉じる。

柏崎は雪に口づけ、炭酸水をもらいうける。

柏崎は雪をベッドにそっと押し倒した。

柏崎「今日はキスだけじゃ済みませんよ」

とはいえ何の用意もしていないので

途中までしかできないのはわかっている。

雪「今日は…最後まで…」

雪は枕の下のコンドームを取り出し、柏崎に渡した。

柏崎「こ…こ…これは」

雪「さっきのコンビニで…」

柏崎(紺野さんナイス!!)

柏崎「すみません紺野さん…買うの恥ずかしくなかったですか?」

雪「ちょっと…いえ、かなり…」

柏崎「全力で奉仕させていただきますので」

雪「えっ、何をですか?」

柏崎は雪の耳元に顔を埋めると、雪の耳をくわえた。

雪「ひゃん!」

そのまま柏崎の舌が雪の耳の中に侵入する。

雪「きゃあ!あう!ひ…」

柏崎は面白がっていた。

耳全体を舐めしゃぶりながら、

雪の豊かな乳房に手をのばす。

雪「あ…あっ、あんん…!」

ゆっくりとなでまわされ、雪は快感の波にさらされた。

簡素な作りのホテルのパジャマはいとも簡単にほどけてしまう。

そこには素肌のままの雪がいた。

柏崎は花の蜜に誘われる昆虫のように、雪の乳首にすいつく。

雪「あ…あ…柏崎先生…」

雪は柏崎の頭を抱えた。

柏崎の手はといえば、もう片方の乳首をつまんでいた。

雪「柏崎先生…私…あっ…あふ…」

柏崎「なんれふか?」

雪「幸せです…」

ただの殺し文句だった。

柏崎は興奮し、雪の股間に手を這わせた。

さすがに下着はつけているようだ。

柏崎「脱いでもらってもいいですか?」

雪「はい…」

雪はもぞもぞと動き、下着を枕元に置いた。

美しいレースの装飾がついた水色の下着。

柏崎(勝負下着とか…?オレいつも通りだ…)

柏崎は雪の秘部を探り当てると、指で下からなぞりあげた。

それだけで密がしたたる。

柏崎を受け入れる準備は整っているようだった。

雪「あの……」

柏崎「はい?」

雪「私…初めてなんです…」

柏崎「はい?」

雪「で、ですから…男の人とこうするの…初めてで…」

柏崎「冗談ですよね?」

雪「信じてもらえませんか?」

雪は困り顔だった。

雪「あの…やさしくしてください…」

柏崎「わかりました」

その後の柏崎は死ぬほどやさしかった。

まるで患者に接するかのように。

少しずつ雪の緊張を解いていった。

もちろん強烈な快感とともに。

雪「ふあああ、も、もうダメです…」

雪は志半ばにして絶頂を迎えようとしていた。

柏崎「入れてもいいですか?」

息の荒い雪の隣で、柏崎はコンドームを装着していた。

雪「え……」

雪(こんなに大きいの…)

柏崎のソレは見事なまでに反り返っていた。

雪「そ、そんな大きいの入りません…」

柏崎「確かに最初は痛いかもしれませんが、ゆっくりやれば大丈夫です」

雪「やさしくしてください…」

柏崎「やさしくします」

柏崎はやさしかった。

進んでいるかいないかの速度で柏崎は雪に侵入していった。

雪「う…う…痛…う…」

それでも痛みを伴う結合。

柏崎は雪の胸をまた愛撫し始めた。

雪の緊張が解ける。

その隙に柏崎は腰を進めていった。

柏崎「…全部入りましたよ」

雪「ああ…!」

雪は感動していた。

愛する人を受け入れる喜びに満ちていた。

柏崎「もう少しこのままでいますか?」

雪「う…動いてください…」

柏崎「え、いいんですか?」

雪「はい…」

柏崎は雪と深くつながったまま、腰をこすりあわせた。

雪「ふああっ…ん…ああ…はあっ…」

やがて律動へと、柏崎の動きが変わる。

雪は突かれるたびに可憐な喘ぎ声を漏らした。

雪「あっ、あっ、あ…あ!」

柏崎「紺野さん…」

柏崎も限界に近づいていた。

右手でクリトリスを探り当て、愛撫しながら動く。

雪「だめ…だめえ!…あああう…!」

柏崎「イっていいですか?」

雪「はいぃ…」

柏崎は最後に激しく動いた。

獣のように激しく貪る。

雪「あうっ!ひゃ、あああ…!」

柏崎「っ……!!」

柏崎は精を放つと、そっと自身を雪から抜いた。

雪「柏崎、先生…」

柏崎「はい?」

柏崎が後始末をしていると、

横たわったままの雪が彼を呼んだ。

雪「日本に帰ったら、結婚しましょうね…」

それは純粋な願いだった。

柏崎「…はい」

柏崎はそれに口づけでこたえた。

出張は一週間。

一週間限りの愛の巣で、ふたりは思う存分

愛し合うことになる。

高校兄弟 6

中畑一が渡米して、2ヶ月が過ぎようとしていた。

中畑兄弟は夏休みを終えて、学校生活を送っていた。

完「…嫌な予感がする」

了「え?」

完「お父さん、アメリカで大丈夫かな」

完の予感は的中した。

(昼下がり 中畑家 リビング)

和「えっ、熱!?」

和は国際電話で一の同僚と会話していた。

和「それで、無事なんですか!?」

同僚「今のところは落ち着いていますが…」

和「本当に大丈夫なんですか?」

同僚「それが…」

一は原因不明の発熱の後、失明していた。

和「…冗談ですよね?」

和はふるえる声で言った。

冗談ではなかった。

和はN空港ではじめて、一が視力を失ったことを知る。

和「おかえりなさいお父さん」

一「ただいまぁ」

一は笑顔だ。

しかし、その目はどこを見ているのかわからない。

同僚に手をひかれ、ここまで帰ってきた。

一「そういうわけだから、これから僕の目になってね和さん」

和は泣き出した。

人目もかまわずに一に抱きつき、大声で。

一「ごめんねぇ」

一が悪いわけではないのだ。

しかし、謝ることしかできなかった。

(Q都 電車内)

一「うー怖い怖い、和さんそこにいる?」

和「いますよ、和さんここにいますよ」

一「あれだね、見えないとどこにつれていかれるかわからないよね」

和「大丈夫よ、私ひとりじゃないんだから」

同僚「すみません…こんなことになって…」

和「貴方こそお仕事大丈夫なんですか?」

同僚「中畑さんを送りとどけるように命じられましたので」

和「そうよ、いったい何の研究してたのよ」

一「そうだなあ、相互依存についてかな」

和「変なウイルスに感染したんじゃないの?」

同僚「原因は不明で…」

一「まあいいじゃないの、おかげで面白いこと教えてもらえたし」

和「面白いこと?」

一「僕たちが住んでる某県内にある医療のテーマパークに

  ご招待されちゃったんだ」

同僚「礼英はいいですよ」

和「れいえい…?」

(某県 中畑家 リビング)

一と和が家に着く頃には、完と了も帰宅していた。

完「お父さんおかえりなさい!」

一「おお、完だね、ただいま」

完「? お父さんどこ見てるの?」

一「うん、見えないんだよどこも。

  お父さん失明しちゃった」

完は目の前が真っ暗になった。

完「うそだ…」

了「ほんとに…!?」

一「うん、真っ暗。なんにも見えないやあはは」

完「あははじゃない!」

完は壊れた。

完「ちゃんと見てよお父さん!僕の顔ちゃんと見てよぉ…!!」

完は一に抱きついて泣き叫んだ。

一「やれやれ困った坊やだなぁ…」

完「坊やじゃない!お父さん…お父さん…」

完は両手で一の顔をつかまえて、自分のほうを向けようとする。

完「お父さん!」

しかし、一の目は焦点が合わない。

完「僕のこと…見てくれないの…」

完は絶望した。

一「礼英に行けばきっとなんとかなるから」

完「礼英…あの最先端医療の?」

父はそんなところに世話にならなければいけないのか。

了「兄さん、もうやめよう?」

了は完を父から離そうとした。

完は力なく父から離れた。

そして言った。

完「アメリカが悪いんだ…全部アメリカのせいだ…」

一「やめなさい完」

完「アメリカのせいだ!」

一「やめなさい!」

一が一喝すると、完はその場に泣き崩れてしまった。

そんな完を見ていたら、和は泣く気も失せてしまった。

和「完、私のかわりに泣いてくれるのね…」

完は、この日を境に人がかわってしまった。

(放課後 某県立中央男子高 3-A 教室内)

小野「中畑ぁー」

小野が呼んでも返事ひとつない。

完は小野の横をすり抜けて教室から出ていく。

小野「中畑…どうしたんだ…?」

冷徹な瞳。

この世界のすべてを憎むような、

憎悪に満ちたまなざし。

完(治すんだ、かならず…僕の手で、お父さんを)

完は進路を決めた。

(国際医療福祉機関 礼英 情技107号室)

如月「このたびは大変お気の毒でした」

一「人生なにが起こるかわかったもんじゃないね」

一はあちこちで講演などしていたため、

如月にとって全く知らない人間というわけではなかった。

如月「あの講演がもう聞けないとなると寂しくなります」

一「引退しちゃったからねぇ」

如月「ところでどうでしょう。見えます?」

一は情技で視力補助装置をつけていた。

一「うん。見える見える。如月さんやっほー」

如月「やほー☆」

ふたりはハイタッチした。

一「一日4時間か…夕食の時に使えるように、

  今日はここまでにしておこうかな」

如月「食事介助ならいくらでもしますよ?うちのナースが」

一「いやいや、それはそれは」

一は陽気に笑うと、付け加えた。

一「うちの長男が来たら、追い返してください」

如月「どうしてですか?」

一「あの子、とんでもない進路選ぼうとしてるんです。

  受験勉強大変なんだから、ここに来るヒマがあったら

  勉強してなさいってことですよ」

如月「あらあら、つれないお父さんだこと」

完の進路。

玲央医大の複数学部志願。

某県立中央男子校でも前代未聞である。

(某県 中畑家 2F 完の自室)

了「あ…っ」

いつもの接触

だが、完の様子が違っていた。

痛いほど抱きしめて、了の首筋で呼吸する。

完「お父さん…お父さん…」

完にとって、了は父の代理だった。

その体質、その匂い。

完「勉強しなきゃ」

完は充電が完了すると机に向き直る。

完「了、いつもありがとう」

了「いいけど…兄さん本気で玲央の2学部併願するの…?」

完「するよ。僕はお父さんの後をついで、

  お父さんを治すんだから。

  誰にも触らせない、お父さんは僕が治す」

決意は固いようだった。

了「じゃ…オレも部屋に戻るね」

完「うん」

了は完の変化に気づいていた。

気づいていたからこそ、いつも通りに振る舞った。

了(兄さん…大丈夫かな)

了は完を心配していた。

和は毎日のように礼英に足を運んでいた。

そしてある日、一から完宛の手紙を受け取る。

完へ

お元気ですか?なんちゃって。

お父さんはこのとおり文字を書けました。

礼英での生活は退屈知らずで楽しいです。

以前から書いてみたかった小説なんか書いて

楽しく過ごしています。

お母さんと了に心配かけないようにね。

お父さんはここで完の合格通知がくるのを

楽しみに待っています。

大好きだよ。

一より

完「お父さん…」

完は涙が止まらなくなった。

その手紙は、完のお守りになった。

受験勉強も本場。

やがて迎える春の日へと、時は進む。

最終医科学研究所。

完の進路はこの頃から決まっていた。

完(絶対に治す…僕の手で)

試験はすぐそこまで来ていた。

有頂天高原旅行記 1

残暑も厳しい9月下旬。

中畑完と柏木鈴は、有頂天高原動物王国に来ていた。

完「向かって左手に見えるのがわんにゃんランド、

  右手に見えるのが動物ふれあいコーナーです」

鈴「猫!猫見たいです猫!」

完「じゃあ、こっちですね」

鈴(うさぎさんポロシャツも似合う…)

完と鈴は連れだってわんにゃんランドへ足を運んだ。

園内は閑散としていて、老夫婦や犬を連れた人などと

時折すれ違う程度だった。

完「すいていてよかったですね」

鈴「夏休み…って時期じゃないですしね」

係員「いらっしゃいませ」

完「猫コーナー大人2人で」

係員「600円になります」

完「これで」

完が差し出したのは、

有頂天高原ドライブマップについていたクーポン券だった。

係員「400円になります」

完は小銭入れを取り出すと、400円を支払った。

鈴(きちんとしてる…)

完「200円を笑う者は200円に泣きます。さて…」

鈴「わ~、かわいい~!」

鈴はデジカメ片手に被写体選びに夢中だ。

だが、そのスキに完ウォッチングも欠かさない。

完は、一匹のロシアンブルーの隣にすわっていた。

その背をなでる手つきに愛情がただよう。

完「さすがに代変わりしたか…」

鈴「え?」

完「子供の頃、この子を連れて帰るんだってだだをこねましてね」

鈴「そんな過去が…」

完「どうやらあのときのロシアンブルーではないようです」

もし生きていたら妖怪猫又ですね、と完はおどけた。

鈴「どうですか?記念に一枚」

鈴がカメラを構えると

完「え…草餅さんは入らな…入れないんですね」

鈴「いえ、私は入ってなくていいんです」

完「え?」

鈴「いきますよー、はい、チーズ」

完「え?」

完のとぼけた顔と、しっかりカメラ目線の猫。

鈴(よっしゃーうさぎさん画像ゲットー!!)

完「……あの」

鈴「はい?」

完「僕は写真は撮られるより撮るほうが好きでして」

そう言うとショルダーバッグからデジカメを取り出した。

完「草餅さん、はい、チー…」

鈴「うわわわわちょっと心の準備が…」

完「そうですね、どうせなら猫と一緒にうつりましょう」

完はロシアンブルーの隣から立ち上がった。

が、ロシアンブルーは完についてきてしまった。

鈴「あらら…」

係員「シャッター押しましょうか?」

完「お願いします」

完がデジカメを手渡すと、ロシアンブルーはきっちりと

ふたりの間におさまった。

係員「はい、チーズ」

デジカメを返してもらうと、写りを確認する完。

完「よい記念になります」

鈴「あっ、あの!」

完「はい?」

鈴「フェイスブロックとかに載せないでくださいね…」

完「載せませんよ。安心してください」

鈴「って、やってるんですかフェイスブロック…」

完「情報収集のためにやっているようなものですね。自分から発信はしません」

鈴「そうなんですか」

完「同僚の記事にいいね!したりするくらいで…」

鈴「どんな記事がいいね!なんですか?」

完「最近では同僚の二宮が通っているカフェの看板猫の写真です」

鈴「猫、お好きなんですね…」

完「他にも再生医療に関する興味深い講演とか…まあいろいろです」

係員「おやつの時間で~す」

係員が、ふたりにねこのおやつを配る。

係員「今日はおふたりだけなので、ちょっと多めです」

ペレット状の「ねこのおやつ」の匂いをかぎつけて猫が寄って来ていた。

完「おすわり」

鈴「犬じゃないんですから」

完「こらそこのアメリカンショートヘアー、君はもう2粒食べたんだからダメ、そこの三毛猫ももうダメ、しっ」

完が手で猫を制すると、猫たちは素直にかえってゆく。

鈴「このペルシャ猫に全部食べられました…」

完「さすがはあの猫の家系ですね…血は争えないというわけですか」

常連客のセリフである。

完「どうします?動物ふれあいコーナーいきますか?」

鈴「はい!」

(有頂天動物王国 動物ふれあいコーナー)

羊「メエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!」

子供「うわあああああん!!」

鈴「うわっあの子、羊に襲われてますよ!?」

完「洗礼です」

ほどなくして子供は親にだきかかえられ、事なきを得た。

完「ここのふれあいコーナーは柵の外から餌を与えることになっているのですが

餌をもったまま柵の中に入るとあのようなことに」

鈴「おそろしいですね…」

完「弟は毎年柵の中に入ってたんですけどね」

鈴「え!?」

完「そのたびに餌に散財していました」

鈴「そ、そんなに…」

完「ほらすごいですよ、牛の舌ってこんなにのびるんですね」

牛に餌をやりながら完は余裕だ。

鈴(牛や羊に追い回されるうさぎさんも見てみたいかも…)

完「ほらすごいすごい」

鈴「うさぎさんは柵の中へは入らないんですか?」

完「怪我はしたくないので…手元の餌が尽きたら入ります」

鈴「あ、手元に餌がなければ大丈夫なんですね」

完「その通りです」

柵の中では牛やヒツジが思い思いにくつろいでいた。

木陰で座る者、水を飲む者…

完「ほーら何も持ってないよー」

完がホールドアップで柵の中を歩きまわる。

鈴「ヒツジの毛って思ったよりゴワゴワしてるんですね…」

完「洗い立てでブラッシング済みというわけにはいきませんからね…」

鈴「きゃ!」

牛が鈴の背中に体当たりしてきた。

完「こら、僕ならともかく草餅さんに何するんだ、謝りなさい」

鈴「うう…」

しかし、なぜか続けざまに牛が鈴の背中に突進してくる。

完「草餅さん、そのバッグ!」

鈴「え?」

赤いバッグ。

完は鈴の体からそのバッグを引き離し、柵の外へ退散した。

完「あぶなかった…」

鈴「この色に反応してたんですね…」

近くの人工湖では鯉がゆうゆうと泳いでいる。

完「ボートにでも乗りますか?」

鈴「はい!」

完「その前に鯉のえさを買いましょう」

ガチャガチャ式の販売機で鯉の餌を買う。

カプセルのかわりにもなかで包まれていて、

それ自体も鯉の餌になるのだった。

鈴がちびちびと餌をやっていると、

完が豪快にガチャガチャ一回分の餌をばらまいた。

鈴「ええっ!?なにこれ!?」

鯉、鯉、鯉、鯉。

水面にクチをあけて鯉が一気に群がってきたのだ。

完「自分が人間に生まれたことに優越感を感じるひとときです」

鈴(何がうさぎさんをそうさせたんだ…!!)

(国際医療福祉機関 礼英 機関長室)

龍崎「へっくし!へっくし!…えっくし!!」

如月「龍崎さん風邪?それとも…」

卯月「風の噂?」

龍崎(あーあー今頃デート楽しんでるんだろうなー)

(有頂天高原動物王国 人工湖

鈴「いい画がとれました!」

むらがる鯉の写真は、その場のすさまじさを物語っていた。

完「あ、それいいですね。あとで送ってください」

鈴「はい!」

完「もうそろそろ宿に向かわないと…」

鈴「もう、ですか?」

完「ここから少し距離があるので…この辺で切り上げましょう」

鈴(宿…や、やど…)

鈴は生唾を飲んだ。

完「草餅さん?」

鈴「はひっ!?」

完「ひょっとしておなかすいてませんか?」

鈴「いえ、そんなことは…」

完「暑いですね。ソフトクリームでも食べますか」

足下にはソフトクリームの模型が。

鈴「おいしい~」

完「有頂天高原に来てソフトクリームを食べるのは定番ですから」

鈴は自分がソフトクリームを食べながらも、

完ウォッチングに余念がない。

まず、ソフトクリームの先端からクチをつけ、

その周りを円周を描くようになめる。

鈴も真似してみた。

確かに効率よくソフトクリームが食べられる。

完「ピサの斜塔

ソフトクリーム彫刻である。

鈴「写真撮りましょう!」

完「写真好きですね…」

ふたりは有頂天動物王国周遊を終えた。

(有頂天高原 国道)

相変わらず静かな完の車内には

ここちよい冷風が満ちていた。

鈴「ここからどこへ向かわれるんですか?」

完「ちょっと温泉地に」

鈴「有頂天高原って温泉もあるんですか!」

完「ありますよ」

(有頂天高原 湯の郷 ふじ)

鈴(うわうわ、中畑家ご一行様ってかいてある…)

完「すみません、草餅さんの名前をふせるために無理矢理

家族にしてしまいました」

鈴(家族になりたいです!!)

完「将来的には…いえ、なんでもありません」

鈴「えっ、なんですかなんですか」

完「チェックインしましょう」

呼び鈴を押すと、女将が現れた。

完「予約した中畑です」

鈴はだまって待っていることにした。

完は宿帳に記入し、部屋の鍵を受け取った。

完「家族風呂がついているんですよ」

鈴「家族風呂?」

完「部屋にお風呂がついてるんです」

鈴「え!?」

(湯の郷 月見の間)

鈴(ひ…広い…)

寮の自分の部屋とは比べものにならない広さの畳の間。

完「…あの」

鈴「はい?」

完「着替えたいので…」

鈴「手伝いますか?」

完「ここまできて仕事する気ですか?」

完は部屋に備えてあった浴衣を取り出し、鈴にも渡した。

完「部屋にきたのですから、くつろぎましょう」

鈴「お手伝いします」

完「いえ、あの…ひとりでできます…」

鈴「お手伝いします!」

鈴の指はわきわきとその時を待っていた。

鈴「友達の着替えを手伝わないなんて友情に反します」

完「え、そうだったんですか?

  女性の友達がいなかったのでわかりませんでした」

鈴「とにかくはいばんざーい!」

座布団に座った完に万歳させ、

濃紺色のポロシャツをすっぽぬく鈴。

ポロシャツの下は素肌だった。

いつも室内にいるせいで白い完の肌に、鈴は見とれた。

完「…あ、あとは自分でできますから」

鈴「そ、そうですね」

残るはオフホワイトのジーンズ。

完「…あっち向いててくれますか」

鈴「は、はい!」

鈴(うさぎさんの恥ずかしがり屋さん!!)

鈴「じゃ、私も着替えさせていただきますね」

完(僕の後ろで草餅さんが着替えてる…)

完は真っ赤になった!

浴衣を来た完は、鈴の着替えが終わるまで

鈴に背を向けて正座して待っていた。

鈴「できました~」

完が振り向くと、そこには浴衣姿の鈴がいた。

完「…………………………」

鈴「え、なんですか?」

完「あ、記念に写真撮りましょう」

鈴「私が撮ります!浴衣姿のうさぎさんを!」

完「僕だって浴衣姿の草餅さん撮りたいです…」

完は真っ赤になってしまった!

鈴「あわわわ、うさぎさん顔真っ赤ですよ?」

完「え?え?」

顔に手を当てながら鏡を見に行く完。

完「日焼けです!」

鈴(無理がある!)

完が鏡を見に行っている隙に、鈴はデジカメを構えていた。

完「じゃあ…お願いします…」

鈴「カメラのほうは見なくてもいいですよ」

完「え?」

鈴「そこの和菓子でもつまんでてください」

完「それはそれで失礼な気がするのですが」

鈴「自然体を撮りたいので…」

完「じゃあ、僕は和菓子のほうを見ていますね」

鈴「はい、チーズ!」

姿勢が良いためか、完は写真写りがよかった。

完「次は僕の番です」

鈴「私は撮らなくていいです!」

完「撮らせてくださいお願いします」

正座から深々と土下座される。

鈴「えっと…どんなポーズで…」

断りようがなかった。

完「正座してこっちを向いてくださればそれで」

鈴は姿勢をただして完と向き合った。

完「はい、チーズ」

鈴は微笑みを浮かべたつもりだったが、いかんせん表情が硬い。

それでも、浴衣の鈴の写真は完の記念になるのだった。

完「家族風呂、見ます?」

鈴「はい」

入り口と反対側の扉をあけると、そこには

有頂天高原の大自然にかこまれた岩風呂があった。

眼下には川が流れ、その音がここまで聞こえてくる。

鈴「わあ…すごいですね…」

完「これは弟にきいたんですが…」

鈴「はい?」

完「家族風呂はふたりで入るモノだと…」

鈴「ふ、ふ、ふつうはそ、そうだとおもいまs…」

完「大丈夫です。僕はコンタクトレンズをはずして入りますから

ほとんど見えません」

鈴「わっ、私もコンタクトはずしたら0.0ナントカの世界なんで大丈夫です!」

完「変なところでおそろいですね」

完は笑った。

鈴(うさぎさんの笑顔!脳内HDDに焼き付ける!!)

完「じゃあ食事が終わったら、一緒に入りますか」

鈴「は、はい…」

鈴(うう~このおなか見られちゃうのか…)

完「6時から夕食です。もうすぐですね。食堂にいきましょうか」

鈴「はい」

鈴(食後でふくれたおなかを見られちゃうのか…)

だんだん憂鬱になってくる鈴であった。

だが、その後に目にする懐石料理を見ては

鈴「おいしそう!写真とってもいいですか?」

元気を取り戻していた。

山、川の幸をふんだんに使った懐石料理は見る者を魅了した。

完「僕も写真撮っておこうかな…」

鈴「あとで送りますよ!」

完「ありがとうございます」

傍らではふつふつと小さな土鍋が音をたてている。

その下では固形燃料の炎がゆらめいている。

完「いただきます」

完は割り箸を割って料理に手をつけた。

鈴もそれにならった。

食べ終わる頃にはふたりとも満腹だった。

完「ふう…お風呂は食休みしてから入りますか…」

鈴「そうですね…おなかいっぱいです…」

完「そういえば今日たくさん写真撮られてましたね。見せてもらってもいいですか?」

鈴「はい!」

部屋に戻り、鈴のデジカメのプレビュー画面で

完は写真を見ていた。

完「ずいぶん猫撮りましたね」

鈴「猫派なんです」

完「この僕すごい間の抜けた顔してますね…」

鈴「そうですか?自然でいいと思いますが」

鈴(うさぎさんの写真ならいくらでもほしい!)

完「削除ボタンは…」

鈴「わー!わー!」

鈴が完からデジカメを取り上げた。

鈴「消させませんよ!大切な記念写真なんですから!」

完「他の人に見せないでくださいね?」

鈴「個人で楽しみます」

完「そう楽しい写真でもないような気が…」

鈴「うさぎさんがうつってるからいいんです!」

完「そういうものなんですか?」

鈴「そういうモノです!」

最後はさきほど食べた懐石料理の写真で締めくくられていた。

そのころには、ふたりとも食休みが済んでいた。

完「じゃ、お風呂入りましょうか」

鈴「は、はい…」

脱衣所で背中合わせ。

夜はまだ始まったばかりだった。

デートの後遺症

完「ただいま…」

(某県 中畑家 玄関)

和「おかえりなさい!どうだったの?」

完「……………」

完が何も言わないので、和は不安になった。

  

和「なにか悪いことでもあったの?」

完「ううん…いいことしかなかった…」

完はまだ放心していた。

家まで帰り着いたのが不思議なくらいである。

和「まあvvよかったわねえ~」

完「うん……ねえお母さん」

和「なに?」

完「ええと……なんでもない」

和「気になるじゃないの」

完は頬にキスをされた事実を伝えるかどうか迷った。

そして、悶々としながら床についた。

完(キス…されちゃった…)

左頬に手をあててみる。

完(キスされちゃったんだ…)

完は事実を反芻していた。

幸せ色に染まった自室で、ひとり。

そして闘魂を燃やす。

完(僕も不意打ちしてやる!)

それは無謀というモノだった。

(某県 礼英職員寮)

鈴(キスしちゃったキスしちゃった!!)

鈴はベッドの上で枕を抱き、ごろごろ転がっていた。

鈴(キスしちゃったキスしちゃった!!)

そのうちベッドから落ちた。

鈴(キスしちゃったぁ~)

ベッドから落ちても幸せ色だった。

鈴(それにしてもうさぎさん萌える!)

鈴は今日一日のデートを反芻してみた。

そして思い出した。

鈴(…あのBL本、どうなったんだろう…)

(某県 中畑家 2F 完の自室)

完(落ち着かないから本でも読もう…)

今日買ってきた

「オレの花婿さん☆」を手にとる。

完(………意味がわからない……)

あまりにも非現実すぎて完は頭をかかえた。

完(情技の人たちはこんなの平気で読んでるのか…)

そして濡れ場。

完(いや…ないない…)

完はごく平然とツッコミを入れる。

そのころにはキスの余韻もすっかり冷めていた。

完(肛門にそう簡単に男性器は入らないよ…

  しかもこんなに大きいの無理だよ…)

完は本をそっと床に置いた。

完(うーん…ついていけないどうしよう…)

完は宿題が終わらない小学生のように悩んだ。

翌日。

完「行ってきます」

和「行ってらっしゃい☆」

ごく普通に挨拶をかわし、家を出ていく。

完(今日は第一食堂で食べようかな…)

少しでもデートの後遺症をやわらげようと思うのだった。

(国際医療福祉機関礼英 情技ナースステーション)

ロッソ「で?どうだったのさ昨日」

鈴「えへへへへへへへへへ…」

ピアノ「何があった!」

プリモ「聞かせろ!!」

鈴「えへへうふふ…うさぎさん萌え~…うふふ…」

ロッソ「ダメだ、話にならん」

了「すいませーん柏木さん、この前基礎データとった人のカルテある?」

鈴「えひゃ!?はい!!」

なんとか仕事はするのだった。

了「なんか、大丈夫?」

鈴「大丈夫です!」

了「兄さん、失礼なこと言わなかった?」

鈴「とんでもない!全然そんなことありませんでしたよ」

了「よかった~…あ、今日は兄さん第一食堂だって」

鈴「はいっ」

鈴は元気よく返事をする。

了(何かいいことあったのかな…よかった)

(昼休み 国際医療福祉機関礼英 第一食堂)

二宮「おい中畑大丈夫か?」

完「何が?」

矢野「カルテ取り違えるとか前代未聞だぞ」

完「み、見てたの?」

二宮「いや、マウスから聞いた」

柏崎は出張中である。

完「べっ、別に…なんでもないよ」

二宮「そうかぁ~?」

矢野「明らかに何かあったツラだぞ」

完「そんなに変?僕の顔…」

二宮「顔はともかく、上の空すぎるだろ」

矢野「そんなんで最終でやっていけるのかよ」

完「あうう…」

完は頭をかかえた。

二宮「まさか昨日のデートお陀仏だったんじゃないだろうな」

矢野「デートだと?聞き捨てならんな」

完「お陀仏じゃないし、矢野が気にすることでもないよ」

二宮「おっ、じゃあイイトコまでいったとか?」

矢野「ドコまでいったんだよ、え?」

完「カーニバルビルだけど」

二宮「そのドコじゃねえよ馬鹿ったれ」

二宮が完のカレーの肉を箸でつまんでそのまま自分の口へ放り込む。

完「僕のカレー…」

二宮「キスくらいはしたんだろ?」

完「……………」

完は真っ赤になってしまった!

矢野「っくー!この反応やべぇなww」

二宮「クセになりそうこれ。柏崎いたら絶対抱きしめてるな」

完「やめてよ…食事がまずくなるでしょ」

完は事務的にカレーを口に運んでいる。

龍崎「こ~んにっちわ~☆なっかはったせ・ん・せ☆」

二宮・矢野(で、でた~~~www)

完「…なんですか第一食堂くんだりまで」

龍崎「ちゃんとお仕事してる~?」

完「問題ありません」

二宮「ありますよ。こいつカルテ取り違えて

   あわててナース室に取りに戻ったんですから」

龍崎「あらあら…困るなあ~最終の先生がそんなんじゃ」

龍崎はプレートを完の向かいの席に置いた。

完「ここで食べる気ですか?」

龍崎「そうだよ、悪い?」

完「はい。他の場所で食べることをおすすめします」

矢野「こいつリア充満喫してるんで」

二宮「水さしてやってくださいよ。ヤカンですよマジで」

完「うるさいよ…」

龍崎「ヤカンね~…」

龍崎は完の額に手をあててみた。

完「何をなさるんですか」

龍崎「熱はないみたいだけど」

二宮「デートの翌日に熱出して寝込んでたらオレがはり倒しますよw」

龍崎「デートいいなぁデート」

矢野「機関長www」

完は自分のペースを乱されまくっていた。

結局、完も鈴も日々の仕事を無事に終えて、帰途につく。

かわりない日常。

しかし、刻一刻と日々はすぎていく。

9月末の「連休」まで、そうそうかからない。

完(2人きりで旅行…不意打ちするんだ不意打ち…)

鈴(うさぎさんうさぎさんうさぎさんうさg)

それぞれの想い(?)を胸に、その日まで。

待ち遠しい日々を暮らすのであった。

それぞれのハートブレイク 柏崎編

彼女は小柄で華奢で、かわいらしかった。

合コンで柏崎は運命の出会いを感じていた。

柏崎「よかったらメルアド交換しませんか」

__「え?あ、はい…」

彼女からしたら、何の気なしに交換したのだろう。

しかし、それからだった。

柏崎の猛アタックが始まったのだ。

ほどなくして2人は結ばれ、

幸せに暮らしていた。

が。

(Q都 郊外 カフェ)

医大生柏崎は、彼女に呼び出されていた。

彼女「ごめんなさい…」

柏崎「えっ、何が?」

彼女「他に好きな人ができたの…」

柏崎「えっ…」

それまで、幸せにくらしていたはずだった。

今までの生活は嘘だったのか?

柏崎「待って、オレに悪いことがあるなら直すから言って」

彼女「それがその…今更直せないことなの…」

柏崎「?」

彼女「あの…一度彼に会ってみてくれない?」

柏崎「彼は…オレにないモノを持ってるんだね?」

彼女がうなづく。

柏崎「わかった。会ってみるよ」

(後日 Q都某大学 カフェテリア)

彼氏「そ…その…こん…こんにちわ…」

彼氏といえば。

小柄で華奢な彼女と似たり寄ったりな体格で、

柏崎とは大違いだった。

柏崎「………………」

彼女「えっと…ごめんね…?」

柏崎は涙を飲んだ。

ここは引き下がるしかない。

ここで食い下がるほど頭が悪いわけではなかった。

柏崎「ちょっと来てくれ」

柏崎は「彼氏」の腕をつかんで彼女から引き離す。

彼氏(ひい!殴られる!!)

彼女「待って宗一くん!」

柏崎「彼と秘密の話があるんだ、悪いけどそこで待ってて」

彼女「でも…」

柏崎「大丈夫。乱暴したりしないから」

柏崎はある程度彼女から距離を置くと、彼に耳打ちした。

柏崎「あいつ耳が弱いから、ムネより耳攻めたほうがいいぞ」

彼氏「えっ…」

柏崎「何のことかわかってるよな?」

彼氏「………はい…」

柏崎「よし。本当に耳ばっかり攻めてると

   スットンキョウな声だすから笑えるぞ」

彼氏「あの、どうしてそんなこと教えてくれるんですか?」

柏崎「あのムネ見てると攻めたくなるだろ?」

彼氏「あ…いや…その、はい…」

柏崎「そこをぐっとこらえてだな」

柏崎は熱弁していた。

彼女「秘密の話って何?」

柏崎・彼氏「うわああ!!」

彼女がしびれを切らしてやってきた。

彼氏「な、なんでも、なんでもないんだなんでも…」

柏崎「男にしかわからない話だよ」

柏崎は笑顔で答えた。

彼女「本当にごめんね、あんなに良くしてくれてたのに」

柏崎「いいって」

柏崎は彼女の頭を軽くなでた。

柏崎「じゃあ、こいつのことよろしくな」

彼氏「は、はい…」

柏崎「返事が弱い!」

彼氏「はい!」

こうして、柏崎の恋は終わりを告げた。

彼女「ね、すごくいい人でしょ」

彼氏「うん…すごく」

彼女「ところでさっき何話してたの?」

彼氏「それは柏崎さんと僕の秘密」

彼女「なによ~」

彼氏「お、男にしかわからない話だよ」

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(国際医療福祉機関 礼英 ロッカー室)

完「だから、なんで僕に抱きつくの?」

柏崎「そうだなあ…オレ、お前の体格がうらやましいんだよ」

完「は?どうして?柏崎のほうが背は高いわ肩幅は広いわ

  いいことづくめじゃない」

柏崎「デカけりゃいいってもんでもないのよ」

これは、柏崎がドイツ出張に行く前の話である。

柏崎「デカいのが理由でフられたんだから」

完「ふーん…女の人の好みってわからないね」

もし、自分が完くらいの体格だったらフられずに済んだだろう。

そう思うと、ついつい抱きしめてしまうのだ。

自分と完との差を確認するかのように。

完「暑いよ~…」

柏崎「あっ、悪ぃ」

完は完で、感傷に浸っている柏崎を責められず、

なすがままになっていたのだった。

しかし、暑いのは苦手だった。

柏崎の恋は、またこれから始まるのである。