デートの後遺症
完「ただいま…」
(某県 中畑家 玄関)
和「おかえりなさい!どうだったの?」
完「……………」
完が何も言わないので、和は不安になった。
和「なにか悪いことでもあったの?」
完「ううん…いいことしかなかった…」
完はまだ放心していた。
家まで帰り着いたのが不思議なくらいである。
和「まあvvよかったわねえ~」
完「うん……ねえお母さん」
和「なに?」
完「ええと……なんでもない」
和「気になるじゃないの」
完は頬にキスをされた事実を伝えるかどうか迷った。
そして、悶々としながら床についた。
完(キス…されちゃった…)
左頬に手をあててみる。
完(キスされちゃったんだ…)
完は事実を反芻していた。
幸せ色に染まった自室で、ひとり。
そして闘魂を燃やす。
完(僕も不意打ちしてやる!)
それは無謀というモノだった。
(某県 礼英職員寮)
鈴(キスしちゃったキスしちゃった!!)
鈴はベッドの上で枕を抱き、ごろごろ転がっていた。
鈴(キスしちゃったキスしちゃった!!)
そのうちベッドから落ちた。
鈴(キスしちゃったぁ~)
ベッドから落ちても幸せ色だった。
鈴(それにしてもうさぎさん萌える!)
鈴は今日一日のデートを反芻してみた。
そして思い出した。
鈴(…あのBL本、どうなったんだろう…)
(某県 中畑家 2F 完の自室)
完(落ち着かないから本でも読もう…)
今日買ってきた
「オレの花婿さん☆」を手にとる。
完(………意味がわからない……)
あまりにも非現実すぎて完は頭をかかえた。
完(情技の人たちはこんなの平気で読んでるのか…)
そして濡れ場。
完(いや…ないない…)
完はごく平然とツッコミを入れる。
そのころにはキスの余韻もすっかり冷めていた。
完(肛門にそう簡単に男性器は入らないよ…
しかもこんなに大きいの無理だよ…)
完は本をそっと床に置いた。
完(うーん…ついていけないどうしよう…)
完は宿題が終わらない小学生のように悩んだ。
翌日。
完「行ってきます」
和「行ってらっしゃい☆」
ごく普通に挨拶をかわし、家を出ていく。
完(今日は第一食堂で食べようかな…)
少しでもデートの後遺症をやわらげようと思うのだった。
(国際医療福祉機関礼英 情技ナースステーション)
ロッソ「で?どうだったのさ昨日」
鈴「えへへへへへへへへへ…」
ピアノ「何があった!」
プリモ「聞かせろ!!」
鈴「えへへうふふ…うさぎさん萌え~…うふふ…」
ロッソ「ダメだ、話にならん」
了「すいませーん柏木さん、この前基礎データとった人のカルテある?」
鈴「えひゃ!?はい!!」
なんとか仕事はするのだった。
了「なんか、大丈夫?」
鈴「大丈夫です!」
了「兄さん、失礼なこと言わなかった?」
鈴「とんでもない!全然そんなことありませんでしたよ」
了「よかった~…あ、今日は兄さん第一食堂だって」
鈴「はいっ」
鈴は元気よく返事をする。
了(何かいいことあったのかな…よかった)
(昼休み 国際医療福祉機関礼英 第一食堂)
二宮「おい中畑大丈夫か?」
完「何が?」
矢野「カルテ取り違えるとか前代未聞だぞ」
完「み、見てたの?」
二宮「いや、マウスから聞いた」
柏崎は出張中である。
完「べっ、別に…なんでもないよ」
二宮「そうかぁ~?」
矢野「明らかに何かあったツラだぞ」
完「そんなに変?僕の顔…」
二宮「顔はともかく、上の空すぎるだろ」
矢野「そんなんで最終でやっていけるのかよ」
完「あうう…」
完は頭をかかえた。
二宮「まさか昨日のデートお陀仏だったんじゃないだろうな」
矢野「デートだと?聞き捨てならんな」
完「お陀仏じゃないし、矢野が気にすることでもないよ」
二宮「おっ、じゃあイイトコまでいったとか?」
矢野「ドコまでいったんだよ、え?」
完「カーニバルビルだけど」
二宮「そのドコじゃねえよ馬鹿ったれ」
二宮が完のカレーの肉を箸でつまんでそのまま自分の口へ放り込む。
完「僕のカレー…」
二宮「キスくらいはしたんだろ?」
完「……………」
完は真っ赤になってしまった!
矢野「っくー!この反応やべぇなww」
二宮「クセになりそうこれ。柏崎いたら絶対抱きしめてるな」
完「やめてよ…食事がまずくなるでしょ」
完は事務的にカレーを口に運んでいる。
龍崎「こ~んにっちわ~☆なっかはったせ・ん・せ☆」
二宮・矢野(で、でた~~~www)
完「…なんですか第一食堂くんだりまで」
龍崎「ちゃんとお仕事してる~?」
完「問題ありません」
二宮「ありますよ。こいつカルテ取り違えて
あわててナース室に取りに戻ったんですから」
龍崎「あらあら…困るなあ~最終の先生がそんなんじゃ」
龍崎はプレートを完の向かいの席に置いた。
完「ここで食べる気ですか?」
龍崎「そうだよ、悪い?」
完「はい。他の場所で食べることをおすすめします」
矢野「こいつリア充満喫してるんで」
二宮「水さしてやってくださいよ。ヤカンですよマジで」
完「うるさいよ…」
龍崎「ヤカンね~…」
龍崎は完の額に手をあててみた。
完「何をなさるんですか」
龍崎「熱はないみたいだけど」
二宮「デートの翌日に熱出して寝込んでたらオレがはり倒しますよw」
龍崎「デートいいなぁデート」
矢野「機関長www」
完は自分のペースを乱されまくっていた。
結局、完も鈴も日々の仕事を無事に終えて、帰途につく。
かわりない日常。
しかし、刻一刻と日々はすぎていく。
9月末の「連休」まで、そうそうかからない。
完(2人きりで旅行…不意打ちするんだ不意打ち…)
鈴(うさぎさんうさぎさんうさぎさんうさg)
それぞれの想い(?)を胸に、その日まで。
待ち遠しい日々を暮らすのであった。