某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

高校兄弟 4

中畑一が渡米して2週間が経った。

【昼休み 某県立中央男子高 2-C教室】

D「中畑最近VIP待遇だよね」

了「へ?」

E「放課後いつもお兄さんが迎えにくるし」

F「そのせいで僕たちちょっと困ってるんだけど」

了「兄さんが迎えに来て何か困ンの?」

了はあと少しで食べ終わりそうな弁当をつつく箸を止めて、首をかしげた。

D「困るんだよね。お楽しみの時間がとれなくて」

E「2週間もおあずけはちょっとね」

F「だからはやくそれ食べちゃってよ」

了「なん……の話だかよくわかりません」

父が渡米してから、了の放課後は安泰だった。

完がすぐに迎えに来て、穏やかに了を連れ去ってゆく。

それも、毎日。

3人が何を求めているのか見当はついていたが、

しらを切ってことさらにゆっくりと弁当をつつく了。

D「…明日早弁ね」

了「は!?」

E「3限と4限の間にみんなで食べよう」

了「なんで!?」

F「中畑が食べるの遅いから」

了「ゆっくり食べるように言われてるんだよ、親から」

D「一日くらい親不孝したって大丈夫」

E「早弁したくらいで怒らないでしょ」

F「食べないで帰るよりずっといいじゃない」

了「おまえら昼休みまるまるオレにセクハラする気か!?」

3人「うん、そう」

あっさりと肯定される。

了はがっくりとうなだれた。

了「いい加減他にオカズ探せよお前ら…」

D「自分で触って声聴けるのは中畑だけだから」

了「オレは男だー!」

了はちゃぶ台もとい机を返したくなった。

放課後。教室に完が迎えに来る。

そうとわかっているので3人は了に手出ししなくなっていた。

完「了、帰るよ」

了「うん。みんなまた明日」

3人「また明日~」

放課後は安泰だった。

だが、了の放課後を安泰にしている張本人に

毎晩、「接触」を求められる。

それが「日常」になっていた。

並んで歩く帰路。

完「…ごめんね、いつも…」

了「なにが?」

完「その…夜、とか…」

了「い…いいよ、その、…兄さんなら……」

完「えっ、あの…、え!?」

了「い、いやあの、変な意味じゃなくてね!?」

路傍で誰かが会話を聞いていたら大変だと思った。

了「あ、そうだ…兄さん、お願いがあるんだけど…」

完「なに?」

了「明日の昼休みが始まったらすぐに教室に来てくれない?」

完「別にいいけど…どうして?」

了「変態3人組が昼休みにセクハラするから早弁しろって」

完「ねえ…バカなの?それともよっぽど馬鹿なの…?」

了「兄さん、同じこと2回言ってるからww」

完「同じじゃないよ、ただのバカと大馬鹿は違うでしょ

了「ど…どう違うの…?」

完「馬鹿なことするけど言えば直すのは普通のバカ。言っても直らないどころか悪化するのは大馬鹿」

了「いやあの、言えば直る時点でバカじゃないんじゃ」

完「人間なんて生まれた時はみんなバカでしょ」

了「なるほど」

完「…僕も大馬鹿の部類なんだけどね…」

了「え?なに?今なんて言ったの?」

自嘲を帯びた兄のつぶやきは弟の耳に届かず、

そのまま二人は家の前にたどり着いてしまった。

【夕食後 中畑家2F 完の自室】

了が完の風呂上がりをここで待つのが日常になった。

了(…でも、毎回やられっぱなしってのもなぁ)

2週間も経てば、こんな思いを抱いても無理はない。

了(兄さんは…笑わなくなったな…)

そう思った了は、あることを思いついた。

思いついたところで、完が部屋に戻ってきた。

完「…了」

後ろ手にドアを閉めて、了のいるベッドの上へと。

その「日常動作」の途中で了は完の脇の下に手を滑り込ませた。

了「こちょこちょこちょこちょww」

大抵の人間はコレをやられると笑う。

了は久しく見ていなかった完の笑顔が見たいだけだった。

が。

完「あっ、や、やめっ、やめて…!」

困り顔で、上ずった声。

了「兄さんが笑うまでやめなーいwww」

全身性感帯と呼ばれる了でも、これはくすぐったい。

だからきっと、完も笑うだろう。…と思っていた。

完「ふ…あっ、やめっ…て…お願いっ…んっ…!」

荒い息、上気した頬、弱く自分にすがりつく腕。

その様子は、兄弟間で日常と化した「接触」における

自分のソレそのものだった。

了「あ…あの…、兄さん?」

了は思わず完の脇の下に差し入れていた手を引っ込めた。

その後すぐに完が逆襲してくる。

了「あう…っ、兄さ…あ…!」

完「あんなの笑えないよ…恥ずかしいから二度としないで…」

了「んっんん…!!」

予想外、不可抗力…言いたいことが言葉にできないまま、

触れられ抱かれ、相手は眠る。

了(…なにこの不公平感)

結局いつものように安らかに眠ってしまった兄を見ながら、

次も絶対にくすぐってやる…と思う弟だった。