礼英ハイパー鬼ごっこ
龍崎「なっつやっすみー☆」
【医療機関礼英 体育館】
卯月「お言葉だけど龍崎ぼっちゃん」
龍崎「なあに?」
卯月「僕たち出勤してるんだけど、何が夏休みなの?」
如月「しかも有給返上で。どういうことなの?」
体育館のステージでは、礼英3トップによる
漫才もどきが繰り広げられていた。
観客席には、それぞれ運動に適した服装をした面々。
全て有給返上で出勤させられている。
叶具「あの…何が始まるんですか…?」
最近、研修期間を終えたばかりの叶具が
恐る恐る情技の看護士にたずねた。
ロッソ「漫才」
鈴「それはもう始まってるから」
了「柏木さんナイスツッコミ」
龍崎「こーらー!私語は慎みたまえ!」
叶具「は、はいっ!すみませんっ!」
この場でかしこまっているのは叶具だけだった。
龍崎「ここにいる人たちには夏休みのチャーンス!」
卯月「お盆過ぎてるんだけど」
如月「有給返上させられてるんだけど」
龍崎「だーかーらー…」
龍崎がパチンと指を鳴らすと、
ステージの背後に大きな垂れ幕が現れた。
完「ハイパー鬼ごっこ…」
柏崎「上司をゲットで夏休みゲット…?」
首を傾げる面々にかまわず、龍崎は続ける。
龍崎「僕たち3人が逃げ回りまーす☆」
如月「うまく捕まえられた人たちにはー!!」
卯月「……なんだっけ?」
龍崎、如月の二人が派手にずっこけた。
龍崎「卯月さあぁあああん!!」
卯月「あっはっはっは冗談だよ冗談」
卯月が咳払いをして、高らかに宣言する。
卯月「一週間の夏休みをプレゼントー!!」
会場が静まり返った。
龍崎「…あれ?」
卯月「僕、ハズした…?」
如月「みんなどうしたの?」
ステージ上の3人が、予想外の反応にうろたえている。
会場の面々と言えば、
完(医療機関の人間が何考えてるんですか…)
了(一週間もあの嫁相手に、もたない…棄権しよう…)
二宮(楽勝すぎて怪しいな…)
柏崎(さ…酒が飲める…!?)
矢野(一週間っていつからいつまで…?)
長瀬(楽勝じゃん…)
青木(ロックバンドフェス行きたい)
ロッソ(ロックバンドフェス行きたい)
マカポー(コミパラの時にしてほしカッタ…!!)
鈴(う、うさぎさんと旅行…!!)
叶具(大学の連中とバンドやりてええぇえ!!!!)
それぞれいろいろなことを考えていたようだ。
龍崎「ここに集められた皆さんにはー☆」
如月「全力で僕たちを追いかけてもらいまーす☆」
二宮「質問いいですかー?」
卯月「なーにー?」
二宮「普通に楽勝だと思うんですけどー」
それは誰もが抱く疑問だった。
追う側は20~30代、追われるのは50~60代である。
如月「それはどうかなー?」
如月がニヤリと笑った一瞬後、
ステージから如月が消え去った。
了「え!?」
柏崎「あそこだ!」
如月はステージからバスケットボールのゴールに
一瞬のうちに飛び移っていたのだ。
龍崎「はーっはっはっは!」
今度は龍崎がステージから消えた。
体育館の天井に張り巡らされたポールに
ぶら下がっているのである。
叶具「あ、あり得ない…!」
二宮「どうなってるんだ…!?」
矢野「おい!所長どこいった!?」
さらに卯月は影も形も声もなく。
青木「これ…無理じゃん?」
マカポー「NINJAダ!ジャパニーズNINJA!!」
長瀬「いくらドーピングしたってあんなの無理だろ…」
龍崎「ヘーイ!」
天井のポールにぶら下がっていた龍崎が
そのまま床へと落下した。
普通に考えれば無謀としか思えない高さだが、
大した音もたてずに軽やかに着地する。
龍崎「僕たちが若い君たち相手に、普通に鬼ごっこすると思ったー?」
如月「ハイパー鬼ごっこって書いてあるでしょー☆」
如月も続いてバスケットゴールから床へと着地する。
完「所長はどこへ…」
卯月「ヘーイ☆」
卯月の声は体育館のスピーカーから流れてきた。
卯月「今日の僕たちは、礼英傘下のメーカーが作ったパワードスーツを着用していまーす」
柏崎「パワードスーツ…!?」
叶具「まさか…装具をつけているように見えない…」
龍崎「そこが技術の魅せどころ☆」
マカポー「Oh,NINJAスーツ!NINJAスーツ!!」
マカポーは一週間の休暇よりも、上司が身につけている
パワードスーツに目が釘付けになっているようだ。
マカポー「HEY室長!夏休みはイイからNINJAスーツプリーズ!!」
如月「ごめんねー、このスーツってマカポーくんの年収より高いんだよねーww」
龍崎「しかもまだ開発途中の試作品☆」
長瀬「試作で完成度高すぎ…」
マカポー「ザンネンムネンデゴザル」
矢野「マカポーは一体どこで日本語習ったんだよww」
マカポー「中坊の頃から日本語学校にイテマシタ」
完「機関長」
龍崎「なぁに?」
完「鬼ごっこを始める前に、少し時間を下さい」
如月「作戦会議?いいよね別に」
龍崎「おっけー☆」
こうして、「ハイパー鬼ごっこ」の作戦会議が始まった。
完「まず、一週間の夏休みが欲しい人と欲しくない人に分かれようか」
柏崎「欲しくない奴なんているかよw」
了「オレいらない」
マカポー「休みよりNINJAスーツが欲しかったでゴザル」
矢野「何?中畑弟は奥さんとうまくいってないの?」
了「うまくイかされすぎて腰がダメになります」
叶具「誰か放送コード持ってきてください!」
了・マカポーが「夏休みいらない組」になった。
完「で…追っ手になれそうなのは柏崎、二宮、長瀬くんってところかな…」
柏崎「あんな人間離れした奴ら相手に、3人がかりでもキツいんじゃないか?」
完「追いつめるだけならひとりに対して3人いれば十分だよ」
二宮「そうか、オレたち3人で追いつめれば…」
長瀬「あとは 上 に逃げるしかなくなりますね」
青木「上か、着地点で待ち伏せすれば捕まえられる…?」
ロッソ「フェス…フェス…」
鈴「ロッソww」
青木「フェス…?」
完「問題は 誰 が夏休みを取るか…」
了「え?そんなのオレとマカポー以外全員とりたいんじゃ」
柏崎「それに対して賞金首は3人しかいないな…」
矢野「所長ー!」
卯月「はーいー?」
矢野「一週間っていつからいつまでですかー?」
卯月「夏休みって言ったけど、9月だよー」
矢野「えー?じゃあオレもいらなーい」
二宮「なんでじゃww」
矢野「だってジャズフェスタ、8月いっぱいで終わりだもん」
完「まあ僕もこんな非常識な鬼ごっこしてまで休みなんて…」
鈴「あっあの!う、うさぎさん…」
完「はい?」
鈴「わ、私はお休み欲しいです…」
ロッソ「最終の中畑先生と一緒に?」
鈴「えっ、ちょ、まだそこまで言ってな…////」
了「まだ?ww」
長瀬「言うつもりだったんだ?ww」
鈴「う、その、あの、」
二宮「おい中畑」
完「なに?」
矢野「休み取れ」
柏崎「絶対取れ」
完「え、何?僕はどう考えても戦力外だし」
了「オレとマカポーもサポートするから」
マカポー「Yes,sir!」
叶具(リア充フラグなのか…)
ポジションは
アリーナ
柏崎・二宮・長瀬
二階観客席北側
完・マカポー・矢野
二階観客席南側
鈴・了・叶具
青木・ロッソ
となった。
人間離れした運動能力をもってしても、
チームワークにはかなわない。
龍崎、如月はそれぞれ完と鈴に捕獲され、
残るは卯月のみとなったが
卯月「見つかっちゃったー」
卯月は体育館の放送室内で両手をあげて降参していた。
彼を追いつめたのはリベロの青木とロッソだったが、
青木「3日間でいいです」
ロッソ「半分ずつ下さい」
青木・ロッソ「ただし同日に」
ふたりはロックバンドフェスのために結託していたのだった。
完「9月か…」
鈴「あの、うさぎさん…」
完「はい?」
鈴「あの…これ…」
完「?」
鈴は完に紙片を差し出すと、走り去った。
それは鈴の名刺。
裏には、
「一週間のお休みに、ふたりで旅行しませんか?」