某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

礼英ハイパー鬼ごっこ

龍崎「なっつやっすみー☆」

医療機関礼英 体育館】

卯月「お言葉だけど龍崎ぼっちゃん」

龍崎「なあに?」

卯月「僕たち出勤してるんだけど、何が夏休みなの?」

如月「しかも有給返上で。どういうことなの?」

体育館のステージでは、礼英3トップによる

漫才もどきが繰り広げられていた。

観客席には、それぞれ運動に適した服装をした面々。

全て有給返上で出勤させられている。

叶具「あの…何が始まるんですか…?」

最近、研修期間を終えたばかりの叶具が

恐る恐る情技の看護士にたずねた。

ロッソ「漫才」

鈴「それはもう始まってるから」

了「柏木さんナイスツッコミ」

龍崎「こーらー!私語は慎みたまえ!」

叶具「は、はいっ!すみませんっ!」

この場でかしこまっているのは叶具だけだった。

龍崎「ここにいる人たちには夏休みのチャーンス!」

卯月「お盆過ぎてるんだけど」

如月「有給返上させられてるんだけど」

龍崎「だーかーらー…」

龍崎がパチンと指を鳴らすと、

ステージの背後に大きな垂れ幕が現れた。

完「ハイパー鬼ごっこ…」

柏崎「上司をゲットで夏休みゲット…?」

首を傾げる面々にかまわず、龍崎は続ける。

龍崎「僕たち3人が逃げ回りまーす☆」

如月「うまく捕まえられた人たちにはー!!」

卯月「……なんだっけ?」

龍崎、如月の二人が派手にずっこけた。

龍崎「卯月さあぁあああん!!」

卯月「あっはっはっは冗談だよ冗談」

卯月が咳払いをして、高らかに宣言する。

卯月「一週間の夏休みをプレゼントー!!」

会場が静まり返った。

龍崎「…あれ?」

卯月「僕、ハズした…?」

如月「みんなどうしたの?」

ステージ上の3人が、予想外の反応にうろたえている。

会場の面々と言えば、

完(医療機関の人間が何考えてるんですか…)

了(一週間もあの嫁相手に、もたない…棄権しよう…)

二宮(楽勝すぎて怪しいな…)

柏崎(さ…酒が飲める…!?)

矢野(一週間っていつからいつまで…?)

長瀬(楽勝じゃん…)

青木(ロックバンドフェス行きたい)

ロッソ(ロックバンドフェス行きたい)

マカポー(コミパラの時にしてほしカッタ…!!)

鈴(う、うさぎさんと旅行…!!)

叶具(大学の連中とバンドやりてええぇえ!!!!)

それぞれいろいろなことを考えていたようだ。

龍崎「ここに集められた皆さんにはー☆」

如月「全力で僕たちを追いかけてもらいまーす☆」

二宮「質問いいですかー?」

卯月「なーにー?」

二宮「普通に楽勝だと思うんですけどー」

それは誰もが抱く疑問だった。

追う側は20~30代、追われるのは50~60代である。

如月「それはどうかなー?」

如月がニヤリと笑った一瞬後、

ステージから如月が消え去った。

了「え!?」

柏崎「あそこだ!」

如月はステージからバスケットボールのゴールに

一瞬のうちに飛び移っていたのだ。

龍崎「はーっはっはっは!」

今度は龍崎がステージから消えた。

体育館の天井に張り巡らされたポールに

ぶら下がっているのである。

叶具「あ、あり得ない…!」

二宮「どうなってるんだ…!?」

矢野「おい!所長どこいった!?」

さらに卯月は影も形も声もなく。

青木「これ…無理じゃん?」

マカポー「NINJAダ!ジャパニーズNINJA!!」

長瀬「いくらドーピングしたってあんなの無理だろ…」

龍崎「ヘーイ!」

天井のポールにぶら下がっていた龍崎が

そのまま床へと落下した。

普通に考えれば無謀としか思えない高さだが、

大した音もたてずに軽やかに着地する。

龍崎「僕たちが若い君たち相手に、普通に鬼ごっこすると思ったー?」

如月「ハイパー鬼ごっこって書いてあるでしょー☆」

如月も続いてバスケットゴールから床へと着地する。

完「所長はどこへ…」

卯月「ヘーイ☆」

卯月の声は体育館のスピーカーから流れてきた。

卯月「今日の僕たちは、礼英傘下のメーカーが作ったパワードスーツを着用していまーす」

柏崎「パワードスーツ…!?」

叶具「まさか…装具をつけているように見えない…」

龍崎「そこが技術の魅せどころ☆」

マカポー「Oh,NINJAスーツ!NINJAスーツ!!」

マカポーは一週間の休暇よりも、上司が身につけている

パワードスーツに目が釘付けになっているようだ。

マカポー「HEY室長!夏休みはイイからNINJAスーツプリーズ!!」

如月「ごめんねー、このスーツってマカポーくんの年収より高いんだよねーww」

龍崎「しかもまだ開発途中の試作品☆」

長瀬「試作で完成度高すぎ…」

マカポー「ザンネンムネンデゴザル」

矢野「マカポーは一体どこで日本語習ったんだよww」

マカポー「中坊の頃から日本語学校にイテマシタ」

完「機関長」

龍崎「なぁに?」

完「鬼ごっこを始める前に、少し時間を下さい」

如月「作戦会議?いいよね別に」

龍崎「おっけー☆」

こうして、「ハイパー鬼ごっこ」の作戦会議が始まった。

完「まず、一週間の夏休みが欲しい人と欲しくない人に分かれようか」

柏崎「欲しくない奴なんているかよw」

了「オレいらない」

マカポー「休みよりNINJAスーツが欲しかったでゴザル」

矢野「何?中畑弟は奥さんとうまくいってないの?」

了「うまくイかされすぎて腰がダメになります」

叶具「誰か放送コード持ってきてください!」

了・マカポーが「夏休みいらない組」になった。

完「で…追っ手になれそうなのは柏崎、二宮、長瀬くんってところかな…」

柏崎「あんな人間離れした奴ら相手に、3人がかりでもキツいんじゃないか?」

完「追いつめるだけならひとりに対して3人いれば十分だよ」

二宮「そうか、オレたち3人で追いつめれば…」

長瀬「あとは 上 に逃げるしかなくなりますね」

青木「上か、着地点で待ち伏せすれば捕まえられる…?」

ロッソ「フェス…フェス…」

鈴「ロッソww」

青木「フェス…?」

完「問題は 誰 が夏休みを取るか…」

了「え?そんなのオレとマカポー以外全員とりたいんじゃ」

柏崎「それに対して賞金首は3人しかいないな…」

矢野「所長ー!」

卯月「はーいー?」

矢野「一週間っていつからいつまでですかー?」

卯月「夏休みって言ったけど、9月だよー」

矢野「えー?じゃあオレもいらなーい」

二宮「なんでじゃww」

矢野「だってジャズフェスタ、8月いっぱいで終わりだもん」

完「まあ僕もこんな非常識な鬼ごっこしてまで休みなんて…」

鈴「あっあの!う、うさぎさん…」

完「はい?」

鈴「わ、私はお休み欲しいです…」

ロッソ「最終の中畑先生と一緒に?」

鈴「えっ、ちょ、まだそこまで言ってな…////」

了「まだ?ww」

長瀬「言うつもりだったんだ?ww」

鈴「う、その、あの、」

二宮「おい中畑」

完「なに?」

矢野「休み取れ」

柏崎「絶対取れ」

完「え、何?僕はどう考えても戦力外だし」

了「オレとマカポーもサポートするから」

マカポー「Yes,sir!」

叶具(リア充フラグなのか…)

ポジションは

アリーナ

柏崎・二宮・長瀬

二階観客席北側

完・マカポー・矢野

二階観客席南側

鈴・了・叶具

リベロ

青木・ロッソ

となった。

人間離れした運動能力をもってしても、

チームワークにはかなわない。

龍崎、如月はそれぞれ完と鈴に捕獲され、

残るは卯月のみとなったが

卯月「見つかっちゃったー」

卯月は体育館の放送室内で両手をあげて降参していた。

彼を追いつめたのはリベロの青木とロッソだったが、

青木「3日間でいいです」

ロッソ「半分ずつ下さい」

青木・ロッソ「ただし同日に」

ふたりはロックバンドフェスのために結託していたのだった。

完「9月か…」

鈴「あの、うさぎさん…」

完「はい?」

鈴「あの…これ…」

完「?」

鈴は完に紙片を差し出すと、走り去った。

それは鈴の名刺。

裏には、

「一週間のお休みに、ふたりで旅行しませんか?」