某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

完の誕生日

(国際医療福祉機関礼英 第一食堂)

柏崎「中畑、これ誕生日プレゼントな」

完「え、いいのに」

今日は最終の若手が全員そろっているので、

4人揃って昼食をとっていた。

二宮「忘れてたwww」

矢野「オレもwwww」

柏崎「お前らなー、中畑の携帯のメルアドに誕生日

   書いてあっただろ?」

完「嬉しい、開けてもいい?」

柏崎「おう、大したもん入ってないけどな」

紙袋はずっしりと重い。

完は恐る恐る封を切ってみた。

完「……………………」

中身はプロテインの粉末と専用シェイカーだった。

柏崎「もっと筋肉つけた方がいいぞ」

二宮「柏崎贈り物のセンスねえwww」

矢野「ひでえwwww」

完「あ…ありがとう…」

二宮「オレからはあとでロシアンブルーの写真集贈るわ」

矢野「オレは…秘密」

完「え、教えてよ」

矢野「イエス・ノー枕…」

二宮が爆笑した。

完「なにそれ?」

二宮「お前ほんとにモノ知らないのな、カップルが使う枕だよ」

矢野「表にイエス、裏にノーが書いてあって」

柏崎「イエスのほうを向いてれば今日はセックスOKってわけだ」

完「なるほど…でも勤務時間帯も一緒だし意味なくない?」

矢野「そうだった でもあらためてイエスって示されると嬉しくね?」

完は赤面してしまった!

二宮「相変わらずウブいな~ww」

矢野「たまんねえなこれ」

柏崎「彼女…いや奥さんの前でもこうなんだろうな」

完「もうちょっとマシだよ…」

完は鯛の塩焼きを一口食べた。

矢野「イエス・ノー枕でいい?」

完「違うものがいい…できれば小さい物」

矢野「じゃあペアのマグカップとか?」

完「食器はあふれるほどあるけど…あらためて新調するのもいいかもね」

矢野「きまり!」

後日、二宮からはロシアンブルーの写真集、

矢野からはゴールデンハムスターの模様が入った

名入りペアマグカップが贈られるのであった。

(夜 某県郊外 中畑家 ダイニング)

和「ハーッピバースデートゥーユー♪」

鈴「ハーッピバースデートゥーユー♪」

優「ハーッピバースデーディアお兄さーん♪」

了「ハーッピバースデートゥーユー♪」

完がデコレーションされたレアチーズケーキに

ささったろうそくの炎を息で吹き消す。

拍手が起こる。

和「今日はごちそうよ~~」

テーブルには鮭のマリネと鶏の唐揚げが並んでいた。

前者は完の好物、後者は了の好物である。

鈴「これ…つまらない物ですが…」

完「開けてもいいですか?」

鈴「はい…」

包みの中には、テーブルにあるケーキそっくりの

フェルト細工があった。

完「このところずっと了の部屋にこもってると思ったら…」

鈴「お気に召しませんでしたか?」

完「とんでもないです。この『おさむ』のステッチが素敵ですね」

鈴「ありがとうございます…//」

了「うめー!唐揚げうめー!!」

優「私たちからはこの白ワイン、意外と高かったのよ」

完「僕と同い年の白ワインですね、ありがとうございます」

誠「んにゃー、オギャー」

優「あらあら大人たちばっかりずるいって」

鈴「優さんお酒好きなのに飲めなくて大変ですね…」

優「そうなのよね~ ちょっと了の部屋借りるね」

了「りょー」

「りょー」とは、「了解」の意味である。

鈴「それにしても優さん、お胸大きくなりましたよね…」

了「Iカップだって」

鈴「グラビアモデルになれますよ!?」

了「今のうちに写真撮りまくってる」

完「子供の写真も撮りなよw」

了「もちろん撮ってる」

和「でも、重い障害を持って生まれちゃって…」

了「そのへんは優も覚悟の上」

優「おまたせ~」

優が授乳を済ませて食卓に戻ってきた。

側にあるふとんに誠を寝かせる。

優「障害を持った子ですが、私が責任を持って育てます

  お母様、見守ってください」

和「手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」

優「はい!お願いします!」

完「あ、そうだ遅くなっちゃったけどこれ出産祝い」

完が美しい装飾の施された祝儀袋をうやうやしく差し出す。

もちろん蝶結びだ。

優「いいのに~~」

了「兄さんのことだから、たくさん包んだんでしょ?」

完「ポケットマネーだよ」

実は10万円入っているのだった。

あとで開封したふたりはびっくり仰天することになる。

和「ほらほら、今日は完がメインなんだから」

優「そうですよ~お二人はお子さんはまだなんですか?」

完「鈴さんと相談していずれ…」

鈴「私はいつでもOKですよ!」

鈴は自分の胸をドンと叩いた。

鈴「日々勉強してますから!

  お母様も妊娠しやすくなる料理を作ってくださってますし!」

完「最近大豆が多いなと思ってたんだ」

了「じゃあ最近は避妊してないの?」

優「こら、なんてことをきくんだ」

了「だって…」

完「し…し…してない…よ」

しどろもどろになってしまう完だった。

和「あらあら、してたの?全然聞こえなかったわ」

了「防音室だもんねお母さんの部屋」

完「一応…その…声は…抑えてもらってるからね…」

鈴と完は赤面してしまった。

優「うふふ、ふたりともかわいい~」

了「隔世遺伝でお父さんの体質受け継いだりして」

完「ありえないこともないね」

了「どうすんの教育…オレがお風呂での体の洗い方とか

  拭き方教えてあげようか?」

鈴「まだ気が早いですよ~~」

和が何やらぶつぶつ言っている。

完「どうしたのお母さん」

和「ケーキを5等分するのってむずかしいわよね」

完「貸して」

完が包丁でケーキに軽く目印をつけた。

チョコレートプレートなどの装飾ははずしてある。

和「あら、簡単にできちゃうのね」

完「簡単だよ、32等分するんだ。まあ、誤差は出るけどね」

了「オレできない…」

優「5人集まってケーキ食べる機会なんてそうそうないんじゃない?」

和がケーキを切って配る。

完が早速食べ始めた。

続いて他の面々も食べ始める。

完「ん、いつものところのレアチーズケーキだね」

了「ここのレアチーズケーキおいしいんだよね」

優「本当、美味しい~~」

鈴「濃厚で、でも後味がさっぱりしてて美味しいです~」

和「お母さんからのプレゼントは、ケーキとお料理よ」

完「十分だよお母さん」

了「兄さんの誕生日なのに唐揚げまで作ってるしね」

優が、誠の方を見た。

誠「んにゃ、あー、あ゛ーーーーーー」

優「はいはい、おむつね~」

和「ここでやっちゃっていいわよ」

優「食事の席で申し訳ないんですが失礼します」

了「つーか泣き声でわかるのか」

完「泣き出す前に優ちゃん、誠くんのこと見てたよね」

優「そろそろかなと思って」

和「母親ってそういうカンが働くのよ」

優が慣れた所作で誠のおむつを替える。

幸い、小便しかでていなかったので匂いはそれほどなかった。

優「おむつの替えがないのでケーキを食べ終わったら

  おいとましますね」

了「兄さん、柏木さ…違った、えーと、奥さんを大切にね」

完「もちろんだよ」

了と優と誠を、和と完と鈴が見送る。

(某県郊外 中畑家 駐車場)

完「車、新しくした?」

了「いや、これ嫁の車」

和「優ちゃんのこと嫁なんて呼んでると、

  誠くんに移っちゃうわよ」

了「いけね、これお母さんの車」

和「お母さん?」

優「ごっちゃになってますよお母様www」

誠「ばーばー」

和「あら~~おばあちゃんよ~~」

和が満面の笑みで呼びかけに応える。

優「ばーばーじゃなくておばあちゃんでしょ?」

誠「おばーばー」

了「寒空の中にいると誠が泣くから、ほら」

了が助手席のドアを開け、誠をチャイルドシートに載せる。

了「じゃ、ばいばーい」

優「ごちそうさまでした~」

誠「ばーばー」

和「またいつでもいらっしゃいね」

完「歓迎するよ」

鈴「また集まりましょうね!」

車は了の運転で走り去っていった。

(某県郊外 中畑家 ダイニング)

完「それにしても、いつぞやのホワイトデーの紅茶が

  まだ残っていたとは…」

鈴「すみませんすみません…もったいなくてつい…」

和「いいじゃない、乾いた物だから賞味期限切れてたって

  大丈夫よ」

3人はケーキを食べ終わって、ティータイムを過ごしていた。

和「今度は五体満足な子が生まれるように努力するわ~~」

鈴「私も努力します!」

完「そうだ、今日同僚からプロテインもらったんだった」

鈴「飲みましょう!」

完「うう、美味しい紅茶の後でプロテインは飲みたくないです…」

鈴「近頃のプロテインは美味しいものも多いんですよ~~」

完「また今度にします…今日は余韻に浸っていたいです…」

今日は完と鈴は一緒に風呂に入った。

湯船に浸かっている鈴が、体を洗っている完に言う。

鈴「実は、もうひとつプレゼントがあるんです…」

完「何でしょう?」

鈴「それは…うさぎさんの部屋で開封しましょう」

(某県郊外 中畑家 完と鈴の部屋)

鈴はダブルベッドに腰かけたが、

完は鈴に制されて鈴の前に立っていた。

鈴「ちょっとあっちむいててください」

完「こうですか?」

鈴「そうです」

しばらくして

鈴「もう向き直っていいですよ」

完「………………!!!」

そこには、裸体にリボンを巻き付けた鈴の姿があった。

鈴「プレゼントは私自身です。どうぞ召し上がれ…」

完はたまらず、鈴を押し倒した。

そして激しいキスをする。

鈴「ん…ん…、は、ん……」

完「鈴さん…色っぽいです。写真に撮りたいくらいです」

鈴「ダメです…その目に焼き付けておいてください…」

完「わかりました…」

完は体を起こすと、鈴のリボンの巻き付いた肢体を

くまなく見つめた。

秘部にリボンがまとわりついている…

完「これ邪魔ですね」

鈴「ひゃんっ!!」

あかりのついた部屋で、鈴の敏感な部分が晒される。

そこに完はそっと舌を這わせた。

鈴「あっ…ふぁ…んっ…んん…」

完「リボンを巻いていて興奮しましたか?

  鈴さんのここ、濡れていますよ…?」

鈴「あうう…」

図星だったのである。

鈴は期待のあまり、リボンを巻く段階から、

いやそれ以前から股間を濡らしていた。

完「我慢できません…入ってもいいですか…?」

鈴「完さん、いつもと違ってせっかちですね…」

完「鈴さん、その赤いリボン、似合ってます…」

完は鈴の耳に口づけしながら、鈴の内部に侵入していく。

鈴「あっ…う…んんっ…完さんの、硬い…」

完「鈴さん…召し上がれということは、好きにしていいと…?」

鈴「そうです…」

完「それなら」

完は鈴から離れ、仰向けになった。

完「自分でまたがって入れてください」

鈴「この恰好でですか…?」

完「そうです」

鈴は恥じらっていたが、完と向かい合うようにして

完の腰にまたがり、完の自身を自らの中へ導いた。

鈴「恥ずかしい…」

完「とてもかわいらしいですよ、鈴さん」

鈴が動くたび、お互いが快楽で追いつめられる。

やがて完も腰を使い出した。

鈴「あっ、やあっ、完さんっ!!」

完「しー…」

鈴「うっ、ぁ、っ…」

完が制すると、鈴は声を抑えた。

しかし、完は容赦なく鈴を突き上げてくる。

鈴「んっんっんっんっんんっん!!」

完「鈴さん…鈴さん…!!」

完は鈴の中に直接精液を流しこんだ。

同時に鈴も絶頂を迎えた。

のけぞり、痙攣し、軽い酸欠を起こし…

果ては完の胸元に倒れこんだ。

鈴「ふふっ」

完「どうしましたか?」

鈴「今度こそ、赤ちゃんできちゃうかもしれませんね」

完「そういう周期なんですか?」

鈴「そうなんです」

完さんの誕生日に排卵なんて、おめでたいですねと

鈴が笑う。

完「出産には立ちあいます」

鈴「お願いしますね」

そんな約束をしたのは深夜。

鈴は完の横に体を横たえて、完の腕枕で眠る。

完「…おやすみなさい」

鈴の寝息が聞こえてきても、完はまだ眠れなかった。

携帯電話でフランス語を音量を低くして流し、

ようやく眠りについた。

自分にはわからない言語のほうが眠りやすいのである。

(翌朝 中畑家 完と鈴の部屋)

鈴「はっくしょん!はっくしょん!は…はくしょん!!」

完「大丈夫ですか草餅さん!?」

鈴「こんな格好で寝たからですかね…っくしょん!!」

完「今日は仕事を休んでください、いいですね?

  それと、妊娠しているかもしれませんから、お薬もダメです」

鈴「大げさにしないでくだ…っくし!!」

完「とりあえずこのパジャマを着て、おとなしく寝てください」

鈴「熱がなければ仕事にいき…っくしょん!!」

完「くしゃみがとまらないじゃないですか、絶対にお仕事はダメです」

完は、鈴に寝ているように念を押すと、1階に下りて行った。

(中畑家 ダイニング)

和「あら、鈴ちゃんは?」

完「お母さん、たまごがゆ作って」

和「あらあら、どっちが風邪?」

完「鈴さん。妊娠してるかもしれないから薬は絶対に飲ませないで」

和「大根のはちみつ漬けも作ったほうがいいかしらねえ」

完「そうして」

完は携帯電話を操作し、最終医科学研究所に電話した。

完「もしもし所長?今日休みます」

卯月「どうしたの突然、風邪?」

完「私ではないのですが、妻が…」

卯月「あらあら大変、そばについててあげて」

完「助かります」

完は通話を終了すると、納豆ごはんをかっこんだ。

味噌汁を飲むと、即座に歯を磨き、

完「おかゆまだ?」

和「できたわよ、もっていってあげなさいな」

完「お盆両手で持っててドアが開けられないから

  お母さんついてきて」

和「わかったわ」

(中畑家 完と鈴の部屋)

和がドアを開け、たまごがゆを持った完が部屋の中に入る。

完「体温何度でした?」

鈴「38.5℃…です…げほっげほっ」

完「今度は咳ですか…」

鈴「離れてください…うさぎさんに移ってしまいます…」

完「そんなことよりおかゆを持ってきました

  鈴さんほど上手に食べさせられないかもしれませんが

  食事介助させてください」

鈴「そんな…自分で食べられます…」

完「いいから壁にもたれていてください、はい、あーん」

しばらく食事介助を受けていた鈴は、

鈴「もう大丈夫です、ひとりで食べられます」

完「だめです、はい、あーん」

ダメ出しを喰らっていた。

完「礼英に妊娠中でも服用できる薬があればいいのですが…」

鈴「そんなものあるんですか…?げほっげほっ」

完「しゃべらないでください、すいません僕が悪かったです」

鈴は黙って首を横に振った。

鈴がたまごがゆを食べ終えると、

完はまた最終医科学研究所に電話をかける。

鈴は体をベッドに横たえ、完のほうを見ていた。

完「もしもし所長?」

卯月「こんどは何?」

完「妊娠中に服用できる風邪薬ってありますか?」

卯月「あるよー 臨床試験済だよ」

完「家まで届けてもらえませんか?」

卯月「薬理の人間に向かわせるよ~」

完「助かります」

完は通話を終えた。

完「しゃべらないで聴いていてください。

  薬理の人間が妊娠中に服用できる風邪薬を

  持ってきてくれるそうです」

鈴は驚いた表情をした。

完「僕はお休みを頂きました」

鈴はさらに驚いた顔をした。

完「治るまで、少なくとも鈴さんの熱が下がるまでは

  休むつもりです」

鈴はぶんぶんと首を振った。

完「だめです。僕が看病します」

鈴はその瞳に涙をためた。

完「泣かないでください。夫として当然のことです」

礼英の薬は鈴をあっという間に癒した。

昼までには熱も下がり、くしゃみもせきも出なくなっていた。

が。

完「ぶりかえすといけないので、明日まで様子を見ましょう」

食事介助も続いていた。

鈴「自分で食べられます…もう熱もないですし…」

完「本当ですか?嘘をつきませんか?」

鈴「本当です!」

鈴は梅がゆの器とれんげを完から奪い取ると、

がつがつと梅がゆを平らげた。

完「よっぽどお腹すいてたんですね…」

鈴「いえ、元気なところを見せたくて…」

完「無理はなさらないでくださいね」

鈴「どこまでも優しいんですねうさぎさんは…」

完の携帯電話が鳴る。

完「もしもし、中畑です」

如月「奥さんおめでただって?」

完「かもしれないというだけの話であって

  確定はしていません」

如月「生理が遅れてるとかは?」

完「まだその段階に入っていません」

如月「排卵日前後にセックスした?」

完「はい」

如月「もしかして昨日?」

完「なぜ室長が鈴さんの生理周期をご存じなんですか?」

如月「いや、そこまでは知らないけど

   旦那さんのお誕生日だからしたのかなーと」

完「それは…その…しましたけど」

如月「その後裸で寝ちゃったの?」

完「まあそんな感じです」

如月「あちゃ~お大事に…せっかく休み取ったんだから

   精一杯いたわってあげてね~~」

完「そのつもりです」

通話が終わる。

完「情技の室長からでした」

鈴「段階がどうとか…何だったんですか?」

完「生理が遅れているかと訊かれたんです」

鈴「それはまだですね」

当然のようにベッドに入ってくる完。

鈴「移っちゃいます!」

完「他に寝る場所がありませんので」

嘘である。

了の部屋の押し入れには、客人用の布団がある。

完「それに、症状はもうほとんど落ち着いているのですから

  大丈夫でしょう」

鈴「明日職場に行ってもいいですか…?」

完「ぶり返すかもしれないからだめです」

鈴「少なくとも礼英の薬を飲んでいればそんなことはないと

  思うのですが…」

完「僕が心配だからダメです」

鈴(やさしい…)

そのまま夕食の時間まで、完の腕枕で眠る鈴だった。

完もいつしか、眠りに落ちていた。

張り詰めていた気持ちが、ほぐれていくかのように。

結局、鈴は妊娠してはいなかった。

生理は順調に来た。

のちに鈴が礼英で無痛分娩で出産し、女児をさずかるのは

もう少し後の話である。