某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

優の出産

(10月24日 某県県庁所在地の産婦人科 分娩室にて)

優「痛い痛いいたいい゛いだい゛くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」

了「はい、ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!!」

優「ヒっいた、ヒっ、いた」

了「できてないできてない!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!」

優「ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!」

了「そうそうそうそう!!!」

優「了痛いよー!!鼻からティラノサウルス出ちゃう!!」

了「ときにおちつけ!!それは人体にはさすがに入らない!!」

助産師1「鼻からスイカくらいが妥当かと」

優「それでも痛いですよ!!痛い痛い痛い痛い!!」

助産師2「もうお腹のところまで出てますからね!もうひとふんばりですよ!」

了「お腹さするか?」

優「さすってぇ~なでてぇ~いいこいいこしてぇ~~」

こんな甘えん坊な優は未だかつていなかっただろう。

了「だから無痛分娩のほうがいいって言ったのに」

了が暖かい両手で優のへその下から恥骨までのあたりをやさしくなでる。

優「だって、出産の痛みを知っておきたかったし、

  きっとそれもいい思い出になるし、無痛分娩で子供に悪影響あったら

  やだもん」

助産師1「あ!脱力したのがよかったのか、するする出てきました!!」

助産師2「いきんでください!」

優「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

産まれてきたのは、男児の身体障害児だった。

右手の指は親指と中指が当たるくらいの距離で手指がすべて

内側に曲がっていて(指は伸びている)、両肘が90°くらいまでしか伸びない。

おまけに瞳は濁った水色をしていた。

眼球振盪だった。腎臓も少しだけ弱かった。

優は35歳になっていた。

身体障害者であることは、産まれる前からわかっていた。

それでも優は「産む!!育てる!!」ときかなかった。

了は優の根性と、あらゆるところで調べたであろう

論文も読んだであろう優の障害児の子育て論を聴いて

納得して出産に立ち会ったのである。

しかし、助産師たちの反応は

助産師1「これからたくさん苦労なさるでしょうが、がんばってくださいね」

助産師2「あんなに決意を固くしていたのですから、自信をもって育ててくださいね」

と、表面上は前向きな言葉を発しつつも、顔は気の毒そうに歪んでいた。

優「なんでそんな顔するのよ!私がいいっていってんのよ!

  もっと明るい顔しなさいよ!!ただでさえ男の子がほしかったのに!!」

優は激怒した。まるで自分が侮辱されたような感覚に陥ったのだ。

了「そうですよ、障害児だからって無事に自然分娩で生まれたことに

  変わりはないじゃないですか。バカにしないでください!」

了も珍しく声を荒げた。

助産師1・2「すみませ…おめでとうございます!!」

助産師たちは一瞬頭をさげかかったものの跳ね起きて、

とびきりの笑顔で祝辞を述べた。

某県郊外のマンション801号室 寝室

ふたりはベッドにねそべり、誠と名付けられた子供は

ベビーベッドで眠っていた。

優はベッドから手をのばし、乳幼児のプニプニと柔らかい頬を

やさしくなでていた。

優「優しい子になるのよ~ あなたには無限の可能性があるんだから

  左手はなんともないんだから、左手でいろいろやればいいのよ

  おかあさんも手伝ってあげるからね、愛してるわ誠」

優は今、母性に満ち満ちていた。その乳房はIカップに届く勢いで

膨らんでいる。当然、母乳も出る。

優「お乳が張って痛い~」

誠「オギャア、オギャア」

了「ちょうどよかったな嫁、おっぱいの時間だ」

優は起き上がり、誠を抱っこして、立ったまま授乳した。

優「ん~~~??」

誠「ん、んん、ばっ、んっ、んばっ」

優「そうなの~」

優はそれだけ言って、誠をベビーベッドに寝かせた。

すると誠はやすらかに眠り始めた。

了「日本語でおk

優「もうお腹いっぱいだって」

了「そっか…『ばっ』『んばっ』でわかるのか」

優「だって拒むように手で押し返してきたもん」

了「これからはこっちに背を向けて授乳するのはやめてください…」

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夜中2時間ごとに誠に起こされ、優は授乳する。

誠の泣き声で、了も起きる。

こんどは授乳風景をおがめたようだ。

了「いいな~、オレも母乳飲みたい」

優「ちょっとだけよ?栄養過多でお腹こわすから」

了「へーい つーか今のバストカップいくつよ!?」

優「Iくらいかなあ」

了「でっかくなったよな…」

了は優のパジャマをはだけ、さきほど誠が吸っていなかったほうの

乳首をやさしく吸った。

了「ばぁぶ~」

優「どんな味した?」

了「ほのかに甘い」

優「そうなんだ?私も飲んでみようかな、口移しおねがい」

了「そんだけ胸あるならクチまで届くんじゃね」

優「自分で自分の乳首吸うなんてやーだー!!口移し!口移し!」

了はもう一度、今度は誠の唾液がついた方の優の乳首を軽く吸って

口移しで優に母乳を与えた。

優「うん、ほのかに甘い」

了「でそ?」

眠りの時間がやってくる。

了「あのさ」

優「なに?」

了「次は女の子がいいね」

優「うん!次は五体満足な子供が生まれるように

  いろいろ勉強するね!今回もしたけど!」

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その後、一家は生涯女児には恵まれなかった。

それでも、十分幸せだった。

専業主婦とはいえ、障害児と健常児を同時に育てるのは

バイタリティあふれる優とはいえ、難しかったはずだ。

終わりよければすべてよし。

のちに誠は追悼ライブを開かれるほどの人格者になったのは、

また別のお話である。

一家の物語は、まだ始まったばかりである……