某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

初めてのデート パート2

完「ところで、お腹がすきませんか?」

鈴「そうですね…もうこんな時間…」

カーニバルビルでは完と鈴が昼食時をとうに過ぎていた。

完は登りエスカレーターを見上げると

完「ゆあめいど…おかえりなさい…?」

またしても看板を読み上げ、首をかしげた。

鈴(ダメ!メイド喫茶だけはダメ!)

鈴がメイド喫茶に危機感を覚えるのは、

そこの料理の味だった。

さほど味覚にこだわらない人間でも、

あからさまにインスタントな食事であることがわかる。

食べられないことはないが、

鈴は完の趣味を知っていたので

彼の味覚には合わないと考えていた。

完「おかえりなさい、ということは、

  客は家にいるかのようにくつろげ…ということでしょうか?」

鈴「あれはメイドさんがいる喫茶店です」

完「メイド??この時代にメイドですか。

  明治大正時代みたいで興味深いですね」

鈴「お料理の味は保証いたしかねます…」

完「えっ、おかえりなさいといいながら不味い物を食わせるんですか?」

完は何故か好奇心をそそられてしまった。

完「せっかく珍しいビルに来たのですから、記念に食べていきましょう」

鈴「記念になるような味じゃないんですう…」

完「そんなに不味いんですか?」

鈴「はっきり言って礼英の食堂のほうがずっとおいしいです」

完「え?そんなに不味いんですか…」

鈴「食べられないわけではありませんが、あからさまに冷凍ですよ?」

完「うーん、少し体に悪そうですね…」

完は少し考えた。

完「では、食事は近くのレストランで取りましょう。

  その後ここにお茶を飲みに来ましょうか」

鈴「はい」(そのぐらいだったら…うん)

完は鈴をつれて行こうとしたが、

「よお中畑、マブいスケ連れてんじゃん」

メイド喫茶からエスカレーターで降りてきた二宮に出くわした。

無造作なヘアスタイルにカジュアルとトラッドが織り混ざったファッション。

とても完と同い年とは思えない若々しさだ。

鈴(わあ…かっこいい)

完「いつの時代のセリフなの?そこ通してよ」

二宮「草餅さんだっけ?あのメイド喫茶楽しかったよ。

   トランプしてきちゃった☆

   中畑は味覚にうるさいから無理かもしれないけど」

二宮はそれだけ言うと、バイバイをして去っていった。

完「しゃくに触りますね…たしかに味覚にはうるさい方ですが」

鈴「うさぎさん…?」

完「ここまで来てメイド喫茶とやらに行かなかったと知れたら

  あとで二宮になにを言われるかわかったものじゃありません」

鈴「え、ちょっ…」

完「行きましょう」

完は半ば使命感を覚えているようだった。

(カーニバルビル7階 ゆあめいど おかえりなさいっ☆)

メイド「お帰りなさいませご主人様、お嬢様」

完「ただいま帰りました」

鈴(ぶっwwwwww)

完は素で言っているのである。

メイド「こちらのお席にどうぞ」

メイドに案内され、窓際の席に座らされる。

カウンターでは、客がメイドとトランプで遊んでいる。

ほどなくして、メイドはメニューと二人分の水をコップに入れて持ってきた。

完「ドジっ子メイドの落書きオムライス…?」

メニューの一番上をそのまま読み上げる。

メイド「出来立てオムライスに、私たちメイドがケチャップでお絵かきします☆」

完「あなたがドジっ子メイドなんですか?」

メイド「ここのメイドはみんなドジっ子です☆」

完「大丈夫なんですか?いろいろと…」

鈴(わりと普通に会話してる…!)

メイド「ご主人様のためになんとかします!」

完「じゃあ、このドジッ子メイドの落書きオムライスをひとつ…」

鈴「二つで」

メイド「落書きオムライスふたつと、お飲物はいかがなさいますか?」

完「ダージリンを」

鈴「同じく」

メイド「かしこまりました。少々お待ち下さい」

完は店内を見渡している。

鈴(わわっ、あのメイドさんスカート短い…!)

完「うーん、昭和初期のイメージかと思ったんですが…」

スカートの短いメイドが完の目にもとまったようだ。

完「あんなに短いスカートのメイドは見たことがありませんね…」

鈴「ここはかなりカジュアルなメイド喫茶なので」

完「メイド長とかがいるんでしょうか?」

鈴「そこまでは…わかりません」

メイド「ドジッ子メイドの落書きオムライスになります☆」

はなしているうちに、どう見ても冷凍食品なオムライスが運ばれてきた。

完「………」

完は冷凍食品のオムライスを見たことがなかった。

ゆえに、きれいに卵に包まれたオムライスに少し感動していた。

和が作るオムライスは、チキンライスに卵焼きを乗せただけの物だったからだ。

メイド「何を描きましょうか?」

鈴「うさぎさん描いてください」

完「え?」

鈴「動物の、うさぎさん描いてください」

メイド「…?かしこまりました」

メイドは鈴のオムライスにファンシーなうさぎを描いた。

完「上手ですね」

メイド「ありがとうございます」

完「それでは、こちらには胃袋を書いてください」

メイド「胃袋ですか!?」

完「簡素な図でかまいません」

メイド「それじゃ…」

メイドは完のオムライスに、TVのCMにでてくるような胃袋の図を描き、胃の中央に携帯電話の絵文字のような笑顔を描いた。

メイド「できました!」

完「よく描けていますね」

メイド「ありがとうございます!ご主人様☆」

メイドは一礼して去っていった。

完「うーん、これだけ上手に絵が描けるのにどうしてドジっ子なんでしょう」

鈴「深く考えてはいけません…あ、写真撮っていいですか?」

完「どうぞ」

鈴は携帯電話でうさぎが描かれたオムライスの写真を取った。

完「僕も記念に取っておこうかな…食べたらなくなってしまいますから」

完も鈴に習って笑う胃袋が描かれたオムライスの写真を携帯電話で撮ってみる。

完「いただきます」

鈴「い、いただきます」

鈴(どうしよう…幻滅されたら…)

完「すごいですね!さすがドジっ子が作るだけあって

  味も素っ気もないオムライスです」

鈴「んぐっ、げっほげほげほ!!」

完「大丈夫ですか!?ひょっとして魚のホネとか入ってたんじゃ…」

鈴「入って、ません…」

完「油断してはいけませんよ、ドジっ子メイドさんが作ったお料理なんですから」

鈴(ドジってるのはうさぎさんの言動です…!)

そんなことをクチに出せるはずもなく。

完はといえば、慎重にスプーンを進めている。

完「これはなかなか…母では出せない味ですね。

  母の作るオムライスはもっと具だくさんです。

  それに、こんなにきれいに卵に包まれていません。

  しかし…」

鈴「ど、どうしたんですか」

完「これだけきれいに卵に包めるのに、

  どうして中身だけドジなんでしょうか」

近くにいた客がいつの間にかふたりの会話に耳をそばだてていた。

客1「あの人メイド喫茶初めてかな」

客2「ずいぶんな素ボケっぷりだな」

鈴(あわわ…これは早々に撤退しないと…)

完「うん、ドジっ子が作ったわりに、普通に食べられました。

  うちの看護師がドジったら注射針とか混入しますから」

鈴「シャレになりませんね…」

完「シャレはシャーレの上だけで…ごめんなさい聞き流してください」

鈴(うさぎさんの初ダジャレ!)

鈴「はい!シャレはシャーレの上だけにしておきましょうね!」

完「繰り返さないでください、恥ずかしいです…」

鈴(うさぎさんかわいい!!)

鈴は完の写真を撮りたくて仕方がなかった。

スーツ姿でオムライスを頬張っている完。

その姿は鈴の目を釘付けにした。

完「…?草餅さん、食欲がありませんか?」

鈴「えっ!?そ、そんなことありませんもぐもぐ」

鈴は完を見るのに夢中で、食べるのを忘れていたのだった。

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最後にダージリンを飲んだ完は、

完「機関長からいただいた長期休暇ですが…」

鈴「あ、はい。9月末の一週間ですね」

完「有頂天高原に遊びに行きませんか?」

鈴「有頂天高原!?はい!是非!」

鈴は礼英のある某県に就職しておきながら

有頂天高原に行ったことはなかった。

鈴の休日は同人誌即売会イベントや

録画がたまったアニメの消費に費やされていた。

鈴「有頂天高原にはアルパカがいると聞いてます!」

完「いますよ。よくご存じですね」

鈴「アルパカ触りたいですアルパカ!」

完「そうですね、僕もアルパカパークへは行ったことがありませんので是非」

デートコースにアルパカパークが加わった。

完「紅葉にはまだ早いと思いますが、景色は良いですよ」

鈴「有頂天高原楽しみです!」

完「ところで…」

完は何か言いよどんでいるようだった。

鈴「ところで…なんでしょう」

完「日帰りが良いですか?泊まりが良いですか?」

客1「リア充キタコレ」

客2「しーっwwしーっww」

鈴「え…と…そ…の」

客1・2「泊ーまーり!泊ーまーり!」

完「外野がうるさいですね…場所を変えましょうか」

鈴「は、はい…////」

完は右手を上げた。

完「お勘定を」

メイドが寄ってくる。ここはテーブル会計のようだ。

メイド「2600円になります」

完「カードで」

メイド「すみませんご主人様、ここはカードは対応していないんです…」

完「そうですか。では現金で」

完は長財布から一万円札を差し出した。

鈴(ひょっとして一万円札かカードしか持ってないんじゃ…)

鈴の予測はおおむね当たっていた。

テーブルで会計を済ませると完と鈴はメイド喫茶を後にした。

メイド「行ってらっしゃい、ご主人様、お嬢様☆」

完「行ってきます。いつ帰るかはわかりませんが」

鈴(ご丁寧!)

メイド「お待ちしております☆」

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完「もうすこしくつろげる店に行きましょうか」

鈴「そ、そうですね…」

完「あ、その前に…」

完は近くの書店に立ち寄った。

ごく普通の大型書店だ。

鈴「何か捜し物ですか?」

完「有頂天高原のドライブマップでもあればと思いまして…ありました」

表紙には大きくアルパカが写っている。

完「これがアルパカですね。気に入らないことがあると

  相手に唾を飛ばすことで有名です」

鈴「えっ、そうなんですか!?」

完「そうです。接する際には気をつけましょう」

鈴「はい…」

完「これを買って近くの普通の喫茶店にでも行きましょう」

鈴「はい!」

(喫茶 アルモニカ

完「コーヒーを」

鈴「ロイヤルミル…いえストレートティーで」

店員「かしこまりました」

完「ロイヤルミルクティーは良かったんですか?」

鈴「えっとその…ダイエット中なんです」

完「やめましょう」

鈴「え?」

完「貴女は十分健康体です。それ以上やせるのは僕が反対します」

鈴「で、でも…」

完「僕と友達でいたいならダイエットはやめてください」

鈴「う、うう…」

鈴は二十代後半。

実はぽっこりお腹が気になるお年頃なのだ。

鈴「実は私…お腹がちょっと…」

完「ちょっとなんですか?」

鈴「ふ、服でごまかしてるだけで、けっこうその…」

完「腹筋運動しましょう」

鈴「あうう…」

運動は苦手だった。

完「僕も手伝いますから腹筋運動しましょう」

鈴「そ、そんな…有頂天高原はどうなるんですか」

完「宿で腹筋運動しましょう」

鈴「えっ」

完「一週間有頂天高原に日帰りでは燃費がかかりますから泊まりましょう」

鈴「えっ…えっ」

完「泊まりがけで腹筋運動しましょう」

鈴(いいけどやだ!!)

店員「コーヒーとストレートティーになります」

店員が去ると、完はテーブルの上に

有頂天高原ドライブマップを広げた。

完「アルパカパークはここですね。その前に有頂天動物王国があります」

鈴「うさぎさんは、動物がお好きですか?」

完「ええ。特に猫のロシアンブルーが好きです」

鈴「ロシアンブルーかっこいいですよね」

完「あの気品のあるたたずまいが好きで、

  子供の頃は夏休みに毎年有頂天動物王国に

  遊びに行っていました」

鈴「ロシアンブルーがいるんですか?」

完「今もいるんでしょうか…」

完はドライブマップから顔を上げると

少し遠くを見ていた。

鈴「行って確かめましょう!」

完「え」

鈴「今もロシアンブルーがいるかどうか確かめに行きましょう!」

完「…それはいいお話ですね」

完は笑顔を見せた。

鈴(つかみはばっちりだ!)

完「有頂天動物王国は広いので、一日いても飽きないと思います」

鈴「では一日目は有頂天動物王国で!」

このような具合で旅行プランは着々と練られていった。

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完「…あの」

鈴「はい?」

完「夕食はどうしましょうか」

鈴「あっ、もうこんな時間…」

完「この近くに僕の好きなレストランがあるので入っていきませんか?」

鈴「は…えーと」

完「?」

鈴「この格好、おかしくないですよね…?」

鈴は了からいろいろと聞いていた。

完が入るような「レストラン」についても。

完は微笑んだ。

完「大丈夫です。あとは変な奴にさえ会わなければ」

鈴「さっきの人ですか?」

完「同僚の二宮です。今日休んでいるとは知りませんでした」

鈴「奇遇ですね…」

ふたりはごく自然にホテルの最上階へのエレベーターに乗った。

(ホテル飯塚 レストランHAMASAKI)

完「ここのレストランはメニューがひとつしかないんです」

鈴「えっ!?」

完「でも大丈夫です。実際は選べますから」

鈴(どういうことなの…)

どういうことかというと。

メインメニューは選べるものの、前菜やデザートは

「シェフの気まぐれ」になるということだった。

真っ白いテーブルクロスは、

汚すことを許されない威圧感を醸し出す。

鈴(い、いちまんえん……)

ひとつしかないメニューが一万円。

完「今日一日つきあっていただいたお礼にごちそうさせてください」

鈴「は…はい…」

完「どうしました?メニューに不都合でもありましたか?」

鈴「そ…その…高いんですね…」

完「ホテルのディナーならこのくらいは普通ですよ」

鈴(ホテル…ホテル……)

なにやらいかがわしいことをかんがえてしまう鈴だった。

店員「お決まりでしょうか」

完「お決まりですか?」

鈴「えっ、え」

完「すみません、もう少し待ってください」

店員「かしこまりました」

ウェイターは一礼して去っていった。

完「僕は白身魚のマリネにします」

鈴「わ、私もそれで…」

食べ物に好き嫌いが無かったのが幸いしたのか、

鈴はメニューを考える手間を省くことができた。

食事が始まる。

ナイフとフォークで器用に、静かに食べる完を前にして

鈴は緊張を隠せずにいた。

完「ナイフとフォークは不慣れでしょう、気軽に食べてください」

鈴「は…はい……」

完「食べにくければフォークだけで食べてもかまいません」

鈴「すみません…」

メインについてきたライスがどうしてもうまくいかないのだった。

完(それにしても)

完はガチガチに緊張している鈴を見ながら思った。

完(よく僕なんかと友達になってくれたよね…)

そして言った。

完「草餅さん」

鈴「んぐっ」

完「ゆっくり食べてください」

鈴「…はい、なんでしょう」

完「その…よく僕なんかとお友達になってくれましたね」

鈴「え?」

完「友達は選んだほうがいいですよ」

鈴「どういう意味ですか?」

鈴はきょとんとしている。

完「僕はマザコンファザコンです」

鈴「あ、その辺は情技の中畑先生から聞いてます

  とてもご両親を大切になさるお方だと」

完「………」

そう返されては返す言葉がない。

事実だからだ。

鈴「いいじゃないですか」

完「えっ?」

鈴「そんなうさぎさんも…私は…す、」

店員「デザートをお持ちしました」

四季のフルーツゼリーが運ばれてきた。

完「え?」

鈴「いっいえ!なんでもないんですなんでも!」

鈴(店員のバカ!!)

鈴がおよそヤケになりながらゼリーをつついていると

完「さっき何か言いかけましたか?」

完がダメ押しをしてくる。

鈴「そ、そんなうさぎさんも素敵だなって…」

完「え………」

完は少なからず感動していた。

完「あ…ありがとうございます…」

突然口数の少ないデザートタイムになる。

鈴「お、おいしいですねこのゼリー」

完「そうですね。おかわりしたいくらいです」

甘さ控えめのフルーツゼリーは完の心もガッチリつかんだようだ。

完「でも…」

鈴「はい?」

完「草餅さんがバレンタインデーに下さったケーキのほうがおいしいです」

鈴「そ、そ、そうですか?/////」

完「僕は味覚にうるさいんです」

完は笑顔で言う。

完「できればまた…作ってくれますか?」

鈴「はい!」

元気のよい返事だった。

店員「ハーブティーをお持ちしました」

ハーブティーの入ったティーカップが二つ置かれる。

完「そういえばその後あのお茶は飲まれましたか?」

鈴「はい!全部すごくおいしくて…感動しました」

完「それはよろしゅうございました」

完は笑顔で答えた。

鈴(全部一つずつ飲んだだけなんだけど…)

鈴はもったいない精神のかたまりだったのである。

(某県内 国道)

夕食をとり終えた二人は、帰りの車の中にいた。

完「旅行、楽しみですね」

鈴「はいvv」

完「あ、腹筋運動とかアレ冗談ですから気にしないでくださいね」

鈴「冗談に聞こえませんでした…」orz

完「寮まで送ります」

相変わらず駆動音がしない車内には

クラシックピアノが流れていた。

ショパンノクターン

誰もが一度は耳にしたことがあろう曲である。

鈴「今日は本当にありがとうございました。

  夕食までごちそうになってしまって…」

完「いいえ、こちらこそ楽しかったです」

鈴「いい旅行にしましょうね!」

完「腹筋的な意味でですか?」

鈴「」

完「冗談ですってば…すみません」

鈴「もう、うさぎさん…」

鈴(キスしたい!!)

鈴は衝動にかられた!

鈴「…あの」

(国際医療福祉機関 礼英 職員寮)

完「着きましたよ」

鈴「あの…あの……」

完「はい?」

鈴「ちょっと目をつぶっててくれませんか」

完「?」

鈴「まぶたに何かついてます!」

完「え?どこですか?」

完は瞳を閉じると鈴のほうに顔を寄せてきた。

鈴は完の頬にキスを落とした。

鈴「…とれました」

完「……………」

完は完全に放心していた。

鈴「うさぎさん?うさぎさーん」

完「え、あ、はい!?」

鈴(かわいい!!)

鈴は非処女なのだ。

完は童貞である。

鈴「帰り、気をつけてくださいね」

完「はい…」

鈴「本当に大丈夫ですか?」

完「…ダメですね」

鈴「えっ」

完はハンドルに突っ伏した。

完「僕はもうダメです。明日の仕事に穴をあけるくらいなら

  このままここで車中泊します」

鈴「そ、そんな、ちゃんとベッドで寝た方がいいですよ」

完「誰のせいだと思っているんですか?」

完が鈴のほうへ向き直った。

完「こんな気持ちは初めてです」

鈴「うさぎさん…」

完「友達だって、言ってたのに…」

完はヤケを起こした!

完「これはもう宿で腹筋ですね」

鈴「冗談って言ってたじゃないですかぁ」

(つづく)