某医療機関での日常

現代医科学恋愛ファンタジーというわけのわからないジャンルの創作文置き場。 小説というカタチを成していないので読むのにいろいろと不親切。たまにR18。 初めての方は「世界観・登場人物紹介」カテゴリを一読の上でお読みください。

完の誕生日

(国際医療福祉機関礼英 第一食堂)

柏崎「中畑、これ誕生日プレゼントな」

完「え、いいのに」

今日は最終の若手が全員そろっているので、

4人揃って昼食をとっていた。

二宮「忘れてたwww」

矢野「オレもwwww」

柏崎「お前らなー、中畑の携帯のメルアドに誕生日

   書いてあっただろ?」

完「嬉しい、開けてもいい?」

柏崎「おう、大したもん入ってないけどな」

紙袋はずっしりと重い。

完は恐る恐る封を切ってみた。

完「……………………」

中身はプロテインの粉末と専用シェイカーだった。

柏崎「もっと筋肉つけた方がいいぞ」

二宮「柏崎贈り物のセンスねえwww」

矢野「ひでえwwww」

完「あ…ありがとう…」

二宮「オレからはあとでロシアンブルーの写真集贈るわ」

矢野「オレは…秘密」

完「え、教えてよ」

矢野「イエス・ノー枕…」

二宮が爆笑した。

完「なにそれ?」

二宮「お前ほんとにモノ知らないのな、カップルが使う枕だよ」

矢野「表にイエス、裏にノーが書いてあって」

柏崎「イエスのほうを向いてれば今日はセックスOKってわけだ」

完「なるほど…でも勤務時間帯も一緒だし意味なくない?」

矢野「そうだった でもあらためてイエスって示されると嬉しくね?」

完は赤面してしまった!

二宮「相変わらずウブいな~ww」

矢野「たまんねえなこれ」

柏崎「彼女…いや奥さんの前でもこうなんだろうな」

完「もうちょっとマシだよ…」

完は鯛の塩焼きを一口食べた。

矢野「イエス・ノー枕でいい?」

完「違うものがいい…できれば小さい物」

矢野「じゃあペアのマグカップとか?」

完「食器はあふれるほどあるけど…あらためて新調するのもいいかもね」

矢野「きまり!」

後日、二宮からはロシアンブルーの写真集、

矢野からはゴールデンハムスターの模様が入った

名入りペアマグカップが贈られるのであった。

(夜 某県郊外 中畑家 ダイニング)

和「ハーッピバースデートゥーユー♪」

鈴「ハーッピバースデートゥーユー♪」

優「ハーッピバースデーディアお兄さーん♪」

了「ハーッピバースデートゥーユー♪」

完がデコレーションされたレアチーズケーキに

ささったろうそくの炎を息で吹き消す。

拍手が起こる。

和「今日はごちそうよ~~」

テーブルには鮭のマリネと鶏の唐揚げが並んでいた。

前者は完の好物、後者は了の好物である。

鈴「これ…つまらない物ですが…」

完「開けてもいいですか?」

鈴「はい…」

包みの中には、テーブルにあるケーキそっくりの

フェルト細工があった。

完「このところずっと了の部屋にこもってると思ったら…」

鈴「お気に召しませんでしたか?」

完「とんでもないです。この『おさむ』のステッチが素敵ですね」

鈴「ありがとうございます…//」

了「うめー!唐揚げうめー!!」

優「私たちからはこの白ワイン、意外と高かったのよ」

完「僕と同い年の白ワインですね、ありがとうございます」

誠「んにゃー、オギャー」

優「あらあら大人たちばっかりずるいって」

鈴「優さんお酒好きなのに飲めなくて大変ですね…」

優「そうなのよね~ ちょっと了の部屋借りるね」

了「りょー」

「りょー」とは、「了解」の意味である。

鈴「それにしても優さん、お胸大きくなりましたよね…」

了「Iカップだって」

鈴「グラビアモデルになれますよ!?」

了「今のうちに写真撮りまくってる」

完「子供の写真も撮りなよw」

了「もちろん撮ってる」

和「でも、重い障害を持って生まれちゃって…」

了「そのへんは優も覚悟の上」

優「おまたせ~」

優が授乳を済ませて食卓に戻ってきた。

側にあるふとんに誠を寝かせる。

優「障害を持った子ですが、私が責任を持って育てます

  お母様、見守ってください」

和「手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」

優「はい!お願いします!」

完「あ、そうだ遅くなっちゃったけどこれ出産祝い」

完が美しい装飾の施された祝儀袋をうやうやしく差し出す。

もちろん蝶結びだ。

優「いいのに~~」

了「兄さんのことだから、たくさん包んだんでしょ?」

完「ポケットマネーだよ」

実は10万円入っているのだった。

あとで開封したふたりはびっくり仰天することになる。

和「ほらほら、今日は完がメインなんだから」

優「そうですよ~お二人はお子さんはまだなんですか?」

完「鈴さんと相談していずれ…」

鈴「私はいつでもOKですよ!」

鈴は自分の胸をドンと叩いた。

鈴「日々勉強してますから!

  お母様も妊娠しやすくなる料理を作ってくださってますし!」

完「最近大豆が多いなと思ってたんだ」

了「じゃあ最近は避妊してないの?」

優「こら、なんてことをきくんだ」

了「だって…」

完「し…し…してない…よ」

しどろもどろになってしまう完だった。

和「あらあら、してたの?全然聞こえなかったわ」

了「防音室だもんねお母さんの部屋」

完「一応…その…声は…抑えてもらってるからね…」

鈴と完は赤面してしまった。

優「うふふ、ふたりともかわいい~」

了「隔世遺伝でお父さんの体質受け継いだりして」

完「ありえないこともないね」

了「どうすんの教育…オレがお風呂での体の洗い方とか

  拭き方教えてあげようか?」

鈴「まだ気が早いですよ~~」

和が何やらぶつぶつ言っている。

完「どうしたのお母さん」

和「ケーキを5等分するのってむずかしいわよね」

完「貸して」

完が包丁でケーキに軽く目印をつけた。

チョコレートプレートなどの装飾ははずしてある。

和「あら、簡単にできちゃうのね」

完「簡単だよ、32等分するんだ。まあ、誤差は出るけどね」

了「オレできない…」

優「5人集まってケーキ食べる機会なんてそうそうないんじゃない?」

和がケーキを切って配る。

完が早速食べ始めた。

続いて他の面々も食べ始める。

完「ん、いつものところのレアチーズケーキだね」

了「ここのレアチーズケーキおいしいんだよね」

優「本当、美味しい~~」

鈴「濃厚で、でも後味がさっぱりしてて美味しいです~」

和「お母さんからのプレゼントは、ケーキとお料理よ」

完「十分だよお母さん」

了「兄さんの誕生日なのに唐揚げまで作ってるしね」

優が、誠の方を見た。

誠「んにゃ、あー、あ゛ーーーーーー」

優「はいはい、おむつね~」

和「ここでやっちゃっていいわよ」

優「食事の席で申し訳ないんですが失礼します」

了「つーか泣き声でわかるのか」

完「泣き出す前に優ちゃん、誠くんのこと見てたよね」

優「そろそろかなと思って」

和「母親ってそういうカンが働くのよ」

優が慣れた所作で誠のおむつを替える。

幸い、小便しかでていなかったので匂いはそれほどなかった。

優「おむつの替えがないのでケーキを食べ終わったら

  おいとましますね」

了「兄さん、柏木さ…違った、えーと、奥さんを大切にね」

完「もちろんだよ」

了と優と誠を、和と完と鈴が見送る。

(某県郊外 中畑家 駐車場)

完「車、新しくした?」

了「いや、これ嫁の車」

和「優ちゃんのこと嫁なんて呼んでると、

  誠くんに移っちゃうわよ」

了「いけね、これお母さんの車」

和「お母さん?」

優「ごっちゃになってますよお母様www」

誠「ばーばー」

和「あら~~おばあちゃんよ~~」

和が満面の笑みで呼びかけに応える。

優「ばーばーじゃなくておばあちゃんでしょ?」

誠「おばーばー」

了「寒空の中にいると誠が泣くから、ほら」

了が助手席のドアを開け、誠をチャイルドシートに載せる。

了「じゃ、ばいばーい」

優「ごちそうさまでした~」

誠「ばーばー」

和「またいつでもいらっしゃいね」

完「歓迎するよ」

鈴「また集まりましょうね!」

車は了の運転で走り去っていった。

(某県郊外 中畑家 ダイニング)

完「それにしても、いつぞやのホワイトデーの紅茶が

  まだ残っていたとは…」

鈴「すみませんすみません…もったいなくてつい…」

和「いいじゃない、乾いた物だから賞味期限切れてたって

  大丈夫よ」

3人はケーキを食べ終わって、ティータイムを過ごしていた。

和「今度は五体満足な子が生まれるように努力するわ~~」

鈴「私も努力します!」

完「そうだ、今日同僚からプロテインもらったんだった」

鈴「飲みましょう!」

完「うう、美味しい紅茶の後でプロテインは飲みたくないです…」

鈴「近頃のプロテインは美味しいものも多いんですよ~~」

完「また今度にします…今日は余韻に浸っていたいです…」

今日は完と鈴は一緒に風呂に入った。

湯船に浸かっている鈴が、体を洗っている完に言う。

鈴「実は、もうひとつプレゼントがあるんです…」

完「何でしょう?」

鈴「それは…うさぎさんの部屋で開封しましょう」

(某県郊外 中畑家 完と鈴の部屋)

鈴はダブルベッドに腰かけたが、

完は鈴に制されて鈴の前に立っていた。

鈴「ちょっとあっちむいててください」

完「こうですか?」

鈴「そうです」

しばらくして

鈴「もう向き直っていいですよ」

完「………………!!!」

そこには、裸体にリボンを巻き付けた鈴の姿があった。

鈴「プレゼントは私自身です。どうぞ召し上がれ…」

完はたまらず、鈴を押し倒した。

そして激しいキスをする。

鈴「ん…ん…、は、ん……」

完「鈴さん…色っぽいです。写真に撮りたいくらいです」

鈴「ダメです…その目に焼き付けておいてください…」

完「わかりました…」

完は体を起こすと、鈴のリボンの巻き付いた肢体を

くまなく見つめた。

秘部にリボンがまとわりついている…

完「これ邪魔ですね」

鈴「ひゃんっ!!」

あかりのついた部屋で、鈴の敏感な部分が晒される。

そこに完はそっと舌を這わせた。

鈴「あっ…ふぁ…んっ…んん…」

完「リボンを巻いていて興奮しましたか?

  鈴さんのここ、濡れていますよ…?」

鈴「あうう…」

図星だったのである。

鈴は期待のあまり、リボンを巻く段階から、

いやそれ以前から股間を濡らしていた。

完「我慢できません…入ってもいいですか…?」

鈴「完さん、いつもと違ってせっかちですね…」

完「鈴さん、その赤いリボン、似合ってます…」

完は鈴の耳に口づけしながら、鈴の内部に侵入していく。

鈴「あっ…う…んんっ…完さんの、硬い…」

完「鈴さん…召し上がれということは、好きにしていいと…?」

鈴「そうです…」

完「それなら」

完は鈴から離れ、仰向けになった。

完「自分でまたがって入れてください」

鈴「この恰好でですか…?」

完「そうです」

鈴は恥じらっていたが、完と向かい合うようにして

完の腰にまたがり、完の自身を自らの中へ導いた。

鈴「恥ずかしい…」

完「とてもかわいらしいですよ、鈴さん」

鈴が動くたび、お互いが快楽で追いつめられる。

やがて完も腰を使い出した。

鈴「あっ、やあっ、完さんっ!!」

完「しー…」

鈴「うっ、ぁ、っ…」

完が制すると、鈴は声を抑えた。

しかし、完は容赦なく鈴を突き上げてくる。

鈴「んっんっんっんっんんっん!!」

完「鈴さん…鈴さん…!!」

完は鈴の中に直接精液を流しこんだ。

同時に鈴も絶頂を迎えた。

のけぞり、痙攣し、軽い酸欠を起こし…

果ては完の胸元に倒れこんだ。

鈴「ふふっ」

完「どうしましたか?」

鈴「今度こそ、赤ちゃんできちゃうかもしれませんね」

完「そういう周期なんですか?」

鈴「そうなんです」

完さんの誕生日に排卵なんて、おめでたいですねと

鈴が笑う。

完「出産には立ちあいます」

鈴「お願いしますね」

そんな約束をしたのは深夜。

鈴は完の横に体を横たえて、完の腕枕で眠る。

完「…おやすみなさい」

鈴の寝息が聞こえてきても、完はまだ眠れなかった。

携帯電話でフランス語を音量を低くして流し、

ようやく眠りについた。

自分にはわからない言語のほうが眠りやすいのである。

(翌朝 中畑家 完と鈴の部屋)

鈴「はっくしょん!はっくしょん!は…はくしょん!!」

完「大丈夫ですか草餅さん!?」

鈴「こんな格好で寝たからですかね…っくしょん!!」

完「今日は仕事を休んでください、いいですね?

  それと、妊娠しているかもしれませんから、お薬もダメです」

鈴「大げさにしないでくだ…っくし!!」

完「とりあえずこのパジャマを着て、おとなしく寝てください」

鈴「熱がなければ仕事にいき…っくしょん!!」

完「くしゃみがとまらないじゃないですか、絶対にお仕事はダメです」

完は、鈴に寝ているように念を押すと、1階に下りて行った。

(中畑家 ダイニング)

和「あら、鈴ちゃんは?」

完「お母さん、たまごがゆ作って」

和「あらあら、どっちが風邪?」

完「鈴さん。妊娠してるかもしれないから薬は絶対に飲ませないで」

和「大根のはちみつ漬けも作ったほうがいいかしらねえ」

完「そうして」

完は携帯電話を操作し、最終医科学研究所に電話した。

完「もしもし所長?今日休みます」

卯月「どうしたの突然、風邪?」

完「私ではないのですが、妻が…」

卯月「あらあら大変、そばについててあげて」

完「助かります」

完は通話を終了すると、納豆ごはんをかっこんだ。

味噌汁を飲むと、即座に歯を磨き、

完「おかゆまだ?」

和「できたわよ、もっていってあげなさいな」

完「お盆両手で持っててドアが開けられないから

  お母さんついてきて」

和「わかったわ」

(中畑家 完と鈴の部屋)

和がドアを開け、たまごがゆを持った完が部屋の中に入る。

完「体温何度でした?」

鈴「38.5℃…です…げほっげほっ」

完「今度は咳ですか…」

鈴「離れてください…うさぎさんに移ってしまいます…」

完「そんなことよりおかゆを持ってきました

  鈴さんほど上手に食べさせられないかもしれませんが

  食事介助させてください」

鈴「そんな…自分で食べられます…」

完「いいから壁にもたれていてください、はい、あーん」

しばらく食事介助を受けていた鈴は、

鈴「もう大丈夫です、ひとりで食べられます」

完「だめです、はい、あーん」

ダメ出しを喰らっていた。

完「礼英に妊娠中でも服用できる薬があればいいのですが…」

鈴「そんなものあるんですか…?げほっげほっ」

完「しゃべらないでください、すいません僕が悪かったです」

鈴は黙って首を横に振った。

鈴がたまごがゆを食べ終えると、

完はまた最終医科学研究所に電話をかける。

鈴は体をベッドに横たえ、完のほうを見ていた。

完「もしもし所長?」

卯月「こんどは何?」

完「妊娠中に服用できる風邪薬ってありますか?」

卯月「あるよー 臨床試験済だよ」

完「家まで届けてもらえませんか?」

卯月「薬理の人間に向かわせるよ~」

完「助かります」

完は通話を終えた。

完「しゃべらないで聴いていてください。

  薬理の人間が妊娠中に服用できる風邪薬を

  持ってきてくれるそうです」

鈴は驚いた表情をした。

完「僕はお休みを頂きました」

鈴はさらに驚いた顔をした。

完「治るまで、少なくとも鈴さんの熱が下がるまでは

  休むつもりです」

鈴はぶんぶんと首を振った。

完「だめです。僕が看病します」

鈴はその瞳に涙をためた。

完「泣かないでください。夫として当然のことです」

礼英の薬は鈴をあっという間に癒した。

昼までには熱も下がり、くしゃみもせきも出なくなっていた。

が。

完「ぶりかえすといけないので、明日まで様子を見ましょう」

食事介助も続いていた。

鈴「自分で食べられます…もう熱もないですし…」

完「本当ですか?嘘をつきませんか?」

鈴「本当です!」

鈴は梅がゆの器とれんげを完から奪い取ると、

がつがつと梅がゆを平らげた。

完「よっぽどお腹すいてたんですね…」

鈴「いえ、元気なところを見せたくて…」

完「無理はなさらないでくださいね」

鈴「どこまでも優しいんですねうさぎさんは…」

完の携帯電話が鳴る。

完「もしもし、中畑です」

如月「奥さんおめでただって?」

完「かもしれないというだけの話であって

  確定はしていません」

如月「生理が遅れてるとかは?」

完「まだその段階に入っていません」

如月「排卵日前後にセックスした?」

完「はい」

如月「もしかして昨日?」

完「なぜ室長が鈴さんの生理周期をご存じなんですか?」

如月「いや、そこまでは知らないけど

   旦那さんのお誕生日だからしたのかなーと」

完「それは…その…しましたけど」

如月「その後裸で寝ちゃったの?」

完「まあそんな感じです」

如月「あちゃ~お大事に…せっかく休み取ったんだから

   精一杯いたわってあげてね~~」

完「そのつもりです」

通話が終わる。

完「情技の室長からでした」

鈴「段階がどうとか…何だったんですか?」

完「生理が遅れているかと訊かれたんです」

鈴「それはまだですね」

当然のようにベッドに入ってくる完。

鈴「移っちゃいます!」

完「他に寝る場所がありませんので」

嘘である。

了の部屋の押し入れには、客人用の布団がある。

完「それに、症状はもうほとんど落ち着いているのですから

  大丈夫でしょう」

鈴「明日職場に行ってもいいですか…?」

完「ぶり返すかもしれないからだめです」

鈴「少なくとも礼英の薬を飲んでいればそんなことはないと

  思うのですが…」

完「僕が心配だからダメです」

鈴(やさしい…)

そのまま夕食の時間まで、完の腕枕で眠る鈴だった。

完もいつしか、眠りに落ちていた。

張り詰めていた気持ちが、ほぐれていくかのように。

結局、鈴は妊娠してはいなかった。

生理は順調に来た。

のちに鈴が礼英で無痛分娩で出産し、女児をさずかるのは

もう少し後の話である。

優の出産

(10月24日 某県県庁所在地の産婦人科 分娩室にて)

優「痛い痛いいたいい゛いだい゛くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」

了「はい、ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!!」

優「ヒっいた、ヒっ、いた」

了「できてないできてない!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!」

優「ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!」

了「そうそうそうそう!!!」

優「了痛いよー!!鼻からティラノサウルス出ちゃう!!」

了「ときにおちつけ!!それは人体にはさすがに入らない!!」

助産師1「鼻からスイカくらいが妥当かと」

優「それでも痛いですよ!!痛い痛い痛い痛い!!」

助産師2「もうお腹のところまで出てますからね!もうひとふんばりですよ!」

了「お腹さするか?」

優「さすってぇ~なでてぇ~いいこいいこしてぇ~~」

こんな甘えん坊な優は未だかつていなかっただろう。

了「だから無痛分娩のほうがいいって言ったのに」

了が暖かい両手で優のへその下から恥骨までのあたりをやさしくなでる。

優「だって、出産の痛みを知っておきたかったし、

  きっとそれもいい思い出になるし、無痛分娩で子供に悪影響あったら

  やだもん」

助産師1「あ!脱力したのがよかったのか、するする出てきました!!」

助産師2「いきんでください!」

優「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

産まれてきたのは、男児の身体障害児だった。

右手の指は親指と中指が当たるくらいの距離で手指がすべて

内側に曲がっていて(指は伸びている)、両肘が90°くらいまでしか伸びない。

おまけに瞳は濁った水色をしていた。

眼球振盪だった。腎臓も少しだけ弱かった。

優は35歳になっていた。

身体障害者であることは、産まれる前からわかっていた。

それでも優は「産む!!育てる!!」ときかなかった。

了は優の根性と、あらゆるところで調べたであろう

論文も読んだであろう優の障害児の子育て論を聴いて

納得して出産に立ち会ったのである。

しかし、助産師たちの反応は

助産師1「これからたくさん苦労なさるでしょうが、がんばってくださいね」

助産師2「あんなに決意を固くしていたのですから、自信をもって育ててくださいね」

と、表面上は前向きな言葉を発しつつも、顔は気の毒そうに歪んでいた。

優「なんでそんな顔するのよ!私がいいっていってんのよ!

  もっと明るい顔しなさいよ!!ただでさえ男の子がほしかったのに!!」

優は激怒した。まるで自分が侮辱されたような感覚に陥ったのだ。

了「そうですよ、障害児だからって無事に自然分娩で生まれたことに

  変わりはないじゃないですか。バカにしないでください!」

了も珍しく声を荒げた。

助産師1・2「すみませ…おめでとうございます!!」

助産師たちは一瞬頭をさげかかったものの跳ね起きて、

とびきりの笑顔で祝辞を述べた。

某県郊外のマンション801号室 寝室

ふたりはベッドにねそべり、誠と名付けられた子供は

ベビーベッドで眠っていた。

優はベッドから手をのばし、乳幼児のプニプニと柔らかい頬を

やさしくなでていた。

優「優しい子になるのよ~ あなたには無限の可能性があるんだから

  左手はなんともないんだから、左手でいろいろやればいいのよ

  おかあさんも手伝ってあげるからね、愛してるわ誠」

優は今、母性に満ち満ちていた。その乳房はIカップに届く勢いで

膨らんでいる。当然、母乳も出る。

優「お乳が張って痛い~」

誠「オギャア、オギャア」

了「ちょうどよかったな嫁、おっぱいの時間だ」

優は起き上がり、誠を抱っこして、立ったまま授乳した。

優「ん~~~??」

誠「ん、んん、ばっ、んっ、んばっ」

優「そうなの~」

優はそれだけ言って、誠をベビーベッドに寝かせた。

すると誠はやすらかに眠り始めた。

了「日本語でおk

優「もうお腹いっぱいだって」

了「そっか…『ばっ』『んばっ』でわかるのか」

優「だって拒むように手で押し返してきたもん」

了「これからはこっちに背を向けて授乳するのはやめてください…」

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夜中2時間ごとに誠に起こされ、優は授乳する。

誠の泣き声で、了も起きる。

こんどは授乳風景をおがめたようだ。

了「いいな~、オレも母乳飲みたい」

優「ちょっとだけよ?栄養過多でお腹こわすから」

了「へーい つーか今のバストカップいくつよ!?」

優「Iくらいかなあ」

了「でっかくなったよな…」

了は優のパジャマをはだけ、さきほど誠が吸っていなかったほうの

乳首をやさしく吸った。

了「ばぁぶ~」

優「どんな味した?」

了「ほのかに甘い」

優「そうなんだ?私も飲んでみようかな、口移しおねがい」

了「そんだけ胸あるならクチまで届くんじゃね」

優「自分で自分の乳首吸うなんてやーだー!!口移し!口移し!」

了はもう一度、今度は誠の唾液がついた方の優の乳首を軽く吸って

口移しで優に母乳を与えた。

優「うん、ほのかに甘い」

了「でそ?」

眠りの時間がやってくる。

了「あのさ」

優「なに?」

了「次は女の子がいいね」

優「うん!次は五体満足な子供が生まれるように

  いろいろ勉強するね!今回もしたけど!」

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その後、一家は生涯女児には恵まれなかった。

それでも、十分幸せだった。

専業主婦とはいえ、障害児と健常児を同時に育てるのは

バイタリティあふれる優とはいえ、難しかったはずだ。

終わりよければすべてよし。

のちに誠は追悼ライブを開かれるほどの人格者になったのは、

また別のお話である。

一家の物語は、まだ始まったばかりである……

ロッソの歌

青木「次の曲、女性ボーカルにしようと思ってるんだ」

医療機関礼英 第3食堂 昼食時】

マカポー「Who?」

青木「目星はつけてある」

長瀬「だから誰よ?」

青木「ロッソ」

了「はあ!?」

了が驚く。

了「なんでいきなりロッソなの?」

青木「鬼ごっこの時にもらった休みで一緒にロックバンドフェス行って

   帰りに一緒にカラオケに行って声に惚れた」

長瀬「あ~あったなそんなの、懐かしい」

マカポー「ロッソの sing a song そんなにイイノカ…?」

青木「少なくともオレの曲のイメージにはぴったり」

離れた席で。

ロッソ「むっ」

ピアノ「どしたのロッソ」

ロッソ「情技の若手が私の話をしている」

ピアノ「ロッソ地獄耳すぎない?」

プリも「入ってきちゃいなよ」

ロッソ「うん、入ってくる」

いつになく積極的なロッソだった。

ロッソは麻婆豆腐定食の載ったトレイを乗せて

青木たちのいる席に向かった。

ロッソ「お邪魔します」

青木「ロッソ、ちょうどいいところに」

青木が自分の隣を勧めた。

青木「ロッソさ、今度オレが作った歌うたってくれない?」

ロッソ「ぶっ!?げっほげほげほ」

ロッソが激しくむせた。

ロッソ「わ、ワタスみたいなピザが舞台に立つなど…」

ロッソは少々太り気味である。

ピザというのはデブの暗喩である。

アメリカの太ってる人って毎日デリバリーピザばかり食べていそう、

という話からデブ=ピザになった。

長瀬「青木がロッソの声に惚れたみたいでさ」

青木「オレが言おうとしたのに」

青木はラーメンを一口すする。

青木「次の曲にぴったりなんだロッソの声。お願い」

青木はテーブルに手をついて深々と頭を下げた。

ロッソ「い、いつ発表するですか…」

青木「今度のクリスマス会」

ロッソ「それまでにやせられないでござる…」

ひたすら体型のことを気にするロッソだった。

了「そのぐらいの体型の人、他にもたくさんいるから大丈夫だと思うよ」

マカポー「我儘マシュマロボディひけらかしチャイナ!」

ロッソ「やだやだやだやだやだやだ…」

青木「ああもう!」

青木にしては珍しく声を荒げた。

青木「バンドリーダーのオレがいいって言ってるんだからいいの!」

長瀬「青木がキレたとこ初めて見た」

青木「オレが本気でキレるともっとひどいよ」

マカポー「Mr.Aoki 恐るべし…」

ロッソは麻婆豆腐を一口食べて、言った。

ロッソ「わ…ワタスで良ければ…」

青木「やった!じゃあ早速練習に入ろう!譜面は読める?」

すっかりやる気満々の青木だった。

ロッソ「譜面は読めないです…」

青木「じゃあイテボで打ち込んだやつ渡すから聞いて」

青木がメモリーカードを差し出す。

マカポー「用意周到スギヤセンカww」

了「青木すげえ」

長瀬「いつの間に用意したww」

ロッソはメモリーカードを受け取ると

ロッソ「歌詞カードとかありますか?イテボ聞きなれてないんで…」

青木「あ、そこまでは用意してなかった、あとで渡すわ」

【後日 医療機関礼英 講堂 クリスマス会】

龍崎「礼英主催のクリスマス会にようこそ!

   今日は皆さん楽しんでいってくださいね~

   それでは早速わが礼英が誇るバンド演奏から!」

マイクが龍崎から青木に移る。

青木「みんなああああああああああああああああああ!!!!」

観客席「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

青木「めんどくさい歌!いきます!」

 またそこでなにスネてんの

 (だってだってでもでもだって)

 あれほどボクが言ったでしょ

 (だってだってでもでもだって)

 そうやってスネてればきっと

 だれか来てくれると思ってんの

 ムシが良すぎ 都合が良すぎ

 ボクはキミの便利屋じゃないよ☆

 さっさとどっか行っちゃえよ

 ボクなんてアテにしてないで

 かわいいキミのことだから

 いくらでも候補はいるんでしょ

 さっさとボクを置いてって

 キミのおもりなんてつかれたよ

 かわいいキミのことだから

 突き放せば文句言うんでしょ

 めんどくさい めんどくさい

 キミのすべてがめんどくさい

 めんどくさい めんどくさい

 もうなにもかもめんどくさい!

 めんどくさい!

 めんどくさい!!

 めんどくさい!!!

 めんどくさい!!!!

叶具によるドラムソロ、矢野によるアルトサックスソロをはさんで

青木「めんどくさ-------------い!!!!」

観客「めんどくさーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

すっかり意気投合した講堂内。

青木「新曲は女性ボーカルでお送りします!『アクアリウム』!」

叶具が静かにドラムを叩き、青木も鈴木も矢野も控えめな音量で奏でる。

真ん中に琉球貨物のTシャツを着たロッソがマイクスタンドを前にして現れる。

歌が始まる。

 アクアリウムの中に映り込むラブソング

 決して特別な物じゃないけど

 私だけの心に残るそれ

 たったひとつの物だけれど

 流れては過ぎ去っていく

 世界に流されないように

 私の手はそれをつかんだ

 離さないように

 離れないように

 誰も聞いてくれなくてもいい

 これは私だけの愛の歌

 誰に届かなくてもいい

 これは私だけの愛の歌

 アクアリウムの中に映り込むラブソング

 ありきたりですてられたもの

 私だけが歌い上げるそれ

 たったひとつ言えることは

 流れては過ぎ去っていく

 世界とおんなじように

 私の手もすり抜けていく

 離れていくんだ

 離れていくんだ

 やっぱり誰かに聞いて欲しい

 これは私だけの愛の歌

 誰かひとりに届いてほしい

 届け私だけの愛の歌

 闇の中もがいて

 たどりついたアクアリウム

 ありきたりの歌たちの墓場

 その中の宝物を見つけて

 ありきたりなんかじゃない

 この歌は私の歌

 引きずり出された愛のかたまり

 誰も聞いてくれなくてもいい

 これは私だけの愛の歌

 誰に届かなくてもいい

 これは私だけの愛の歌

 やっぱり誰かに聞いて欲しい

 これは私だけの愛の歌

 誰かひとりに届いて欲しい

 届け私だけの愛の歌

しっとりとした矢野のアルトサックスソロで曲は終わった。

ぽつりぽつりと拍手が鳴り、盛大なものへと変わる。

二宮(この声…体型…オレの理想そのもの…!!)

客席で見ていた二宮はロッソに目を付けた。

それから二宮によるロッソへの猛アタックが始まるのである。

医療機関礼英 庭園】

ロッソ「いらっしゃいませ~安くしておきますよ~」

秋祭りの時と同じように、庭園には露店が並び、

職員や礼英の息のかかった大学がフリーマーケットを開いていた。

二宮「ローーーーッソさん♪」

ロッソ「あ、二宮先生、お疲れ様です」

ロッソは深々と頭を下げる。

二宮「歌、聴いたよ。ロッソさんっていい声だね」

ロッソ「あ…ありがとうございます」

二宮「歌詞はロッソさんが書いたの?」

ロッソ「歌詞は青木先生が…」

二宮「そうなんだ?てっきりロッソさんが書いたものと」

二宮は話している間中、ロッソの若干ふくよかな体をくまなく見つめていた。

その視線は、ロッソに危機感を抱かせた。

ロッソ(この人…性的にワタスに興味があるっぽい…?)

大当たりだったのである。

二宮「ねえ、もしよかったら今度一緒に猫カフェでもいかない?」

ロッソ(来た!!!!)

ロッソはあからさまに身をこわばらせた。

ロッソ「猫アレルギーなので…」

二宮「ハリネズミカフェもあるよ」

ロッソ「先端恐怖症なので…」

嘘である。

ロッソはなんとしても二宮の誘いを断りたかった。

二宮「フクロウカフェもあるよ」

ロッソ「首がぐるぐる回るのが苦手なので…」

二宮「じゃあカラオケ行く?」

ロッソ「ぐ…」

歌を披露した手前、歌が苦手とは言えない。

どこまでも回り込む二宮だった。

二宮「決まり!じゃあ日取りは…」

ロッソ「ま、待ってください」

二宮「あれだけ歌が上手なのにカラオケ嫌なの?」

ロッソ「いや、歌うのが嫌というか…なんというか…」

完「二宮」

二宮「あ?」

いつの間にか背後に完と鈴がいたのであった。

二宮「なんだよリア充

完「しつこい男は嫌われるよ」

二宮「しつこいって…お前いつからそこにいたんだよ」

二宮が若干けんか腰で完に食って掛かる。

完「猫カフェのあたりから」

二宮「陰険な奴だなー、それにオレが誰に興味抱こうと勝手だろ」

鈴「ロッソ…嫌?」

ロッソは激しく首を縦に振った。

二宮は大きくショックを受けた。

これまで女性からそんな反応をされたことがなかったのである。

二宮「そんな…オレのアプローチが通じない…!?」

ロッソ「あんまり最初から性的な目で見られるの嫌なんです」

ロッソは今度こそきっぱりと言った。

完「あ~あ、日ごろの行いが悪いから…」

二宮「うるせー!ロッソさん、気が向いたら連絡してね」

名刺を差し出す二宮だったが、ロッソは受け取らなかった。

そんなロッソの胸元に、二宮は名刺を押し付けて手を離した。

名刺はロッソの足元に落ちた。

ロッソの行動はいちいち二宮を傷つけた。

二宮「それじゃ…またね…」

すっかり肩を落として去っていく二宮。

ロッソ「またなんてないですから…」

鈴「二宮先生の日ごろの行いってどんな感じなんですか?」

完「昼間から女性と性的交渉したいとか口走るんだよ」

『セックス』とは言わないのだった。

ロッソ「最低!!昼間からセックスしたいとか!!」

鈴「しー!!ロッソ声が大きい!!」

ロッソ「やっぱ誘いに乗らなくて正解だったわー」

散々な言われようである。

青木「ロッソお疲れ~」

そこへ青木が差し入れのベビーカステラを持ってやってきた。

ロッソ「青木先生!ワタスの歌どうですた…?」

青木「ばっちり!あ、今度のクリスマスフェス行く?」

ロッソ「行きます行きます!」

青木「アフターでカラオケとかどう?」

ロッソ「行きます行きます!」

さっきまでとは打って変わってノリノリのロッソだった。

鈴「ロッソ、二宮先生より青木先生のほうが合うんじゃないの?」

青木「二宮先生?それなんの話?」

ロッソ「さっき二宮先生にしつこく誘われて二人に助けられたでござる」

完「それで青木くん、どうなの?ロッソさんは」

青木はほんのり頬を赤らめて答えた。

青木「ロッソは仲間っつーかなんつーか…」

ロッソ「ロックバンド好き仲間です」

鈴(ロッソ…鈍い…?)

【後日 医療機関礼英 第1食堂 昼食時】

今日は最終の若手が全員そろっているので、

友人規定で一緒に昼食をとっていた。

完「それはそうと二宮」

二宮「あん?」

完は鯖の味噌煮定食を食べる手を止めて、二宮に話しかけた。

二宮はそのままカルボナーラを食べている。

完「ロッソさんは青木先生と気が合うらしいよ」

矢野「誰?ロッソって」

完「情技の看護師。いつかの鬼ごっこに参加してた」

柏崎「どんなん?」

二宮はいそいでカルボナーラを咀嚼すると、言った。

二宮「魅惑のマシュマロボディに魅力的な歌声の彼女だよ!」

矢野「あー、クリスマス会で歌ってた彼女か」

柏崎「そのマシュマロボディっていうやつ、本人の前で言ってないよな?」

二宮「言ってねえよ!それより誰だよ青木って!」

完は、あ、しまったという顔をした。

完「えーとその…名前しか知らない」

二宮「鬼ごっこに参加してたか!?」

完「忘れた」

完らしからぬ答え方である。

二宮「おのれ青木…このオレをコケにしやがって…!!」

矢野「なに二宮、ひょっとしてロッソさんにアプローチして撃沈した?」

柏崎「それで青木って奴に持ってかれたわけか」

完「そうと決まったわけじゃないけど」

完は味噌汁を一口すすると、言った。

完「二宮、嫌われたね」

二宮「うるせー!畜生青木のやつぶっ飛ばしてやる…」

矢野「あーあー、男の嫉妬ってみにくーい」

二宮「矢野だって独り身だろうが!」

柏崎「二宮諦めろ、普段からセックスしたいとか言ってるのが悪い」

柏崎はチキン南蛮を平らげていた。

一方二宮は食が進まないようだった。

矢野「二宮、昼休み終わっちまうぞ?」

二宮「食うよ、食えばいいんだろ食えば!!」

半ばやけ食い状態だった。

その傍らで矢野はラーメンを平らげて、レンゲでスープを飲んでいた。

二宮「中畑、青木ってやつには会ったんだろ?」

完「あー、まあ」

二宮「どんな背格好してた?」

完「青木先生の身の安全を考えて答えないことにしておく」

完は鯖の味噌煮定食を平らげた。

二宮「チッ…このオレの獲物を横取りした罪は重いぜ青木…」

完「青木『先生』ね。あと、横取りしたと決まったわけじゃないから」

【同日 医療機関礼英 第3食堂 昼休み】

マカポー「まさかロッソがあんなに sing a song very nice とは…」

了「才能はどこに転がってるかわかったもんじゃないな」

長瀬「聴き惚れたぜ…いい声してやがんのな」

青木「歌声と地声が全然違うんだよロッソは」

マカポーはカルボナーラを、

長瀬はチキン南蛮を、

青木はラーメンを、

了は鯖の味噌煮定食をそれぞれ食べていた。

長瀬「それで青木、どうなんだよロッソは」

青木「どうって?」

長瀬「どうこうならないのかよ」

青木「うーん……」

青木はラーメンを一口すすってこう言った。

青木「ロッソはオレにはもったいないと思う」

全員が食べるのを止めた。

了「なんで?同じ情技の職員だろ?」

マカポー「why?」

長瀬「いくらなんでも謙遜しすぎじゃねえか?」

青木「二宮先生がロッソに名刺押し付けてるの見た」

青木以外の全員が『あちゃ~』と顔に手をあてた。

青木「どう考えても二宮先生のほうが高収入だし」

長瀬「でも…青木の気持ちはどうなんだよ?」

了「試しに告ってみ?」

マカポー「Go go Aoki !!」

青木「うーん……」

青木はチャーシューを頬張り、つかの間静寂。

チャーシューを飲み込むと、青木は言った。

青木「オレはロッソとの今の関係を崩したくない」

長瀬「関係ってどんな?」

マカポー「アレだ、rock band fes つながりダロ」

了「あーなるほど」

青木「音楽の好みも似通ってるんだよな…」

離れた席で。

ロッソ「はあ~~~~」

ピアノ「どうしたロッソ」

プリモ「そんなごっつい溜息ついて」

鈴「ひょっとして…二宮先生のこと?」

その場にいただけあって、鈴は察しがいい。

ピアノ「そういえば二宮先生、このところやたらとここにお昼食べに来るよね?」

ロッソ「そのたびに鬼の形相でにらみつけるの疲れた…」

プリモ「二宮先生となんかあったの?」

ロッソは事の顛末を二人に話して聞かせた。

ピアノ「まあ男なんてみんなチンポで生きてるんだから…」

ロッソ「だからってあんな視線投げかけるのはあんまりだあ…」

ロッソは頭を抱える。

プリモ「いいなあ玉の輿~、乗っちゃいなよyou」

鈴「ロッソにも好みという物があると思うの…」

プリモ「え~?二宮先生イケメンじゃん」

ロッソ「視線がセクハラ…この前も『そういう』目でワタスのこと見てた…」

後日。

二宮が青木に挑戦状をたたきつけることになるとは

誰にも予想がつかないのだった。

柏崎と雪の結婚式

医療機関礼英 講堂)

龍崎「ジャニュアリーウエディーーーング!!」

ステージ上の龍崎がマイクに向かって叫ぶと、

講堂の扉、後方からウエディングドレスに包まれた雪と

白いタキシード姿の柏崎が姿を現した。

二宮「おお…」

完「おめでとう柏崎…」

優「思い出すわね」

了「あの頃は若かった…」

マ「Wow!!ビュリホー!!」

ゆっくりと二人が壇上に上ると、龍崎は神父の恰好をしていた。

龍崎「汝(なんじ)健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、

悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、

共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか? 」

柏崎・雪「はい」

龍崎「誓いの口づけを」

そっと口づけを交わす二人。

矢野「いえーい出番だぜー!!」

龍崎の後ろの幕が上がると、バンドメンバーが顔を出す。

青木「行くぜ!!」

 同盟なんて関係ねぇ

 君のことはオレが守る

 同盟なんて関係ねぇ

 君のことはオレのものだ

 縛られてうごけなかった

 絶対不可侵条約

 とらわれたお姫様を

 助け出す王子はオレだ

 同盟なんて関係ねぇ

 君のことはオレが守る

 同盟なんて関係ねぇ

 君のことはオレのものだ

矢野のサックスソロ、叶具のドラムソロに合わせて

長瀬が軽快に踊る。

ボーカルはもちろん青木だ。

ベースボーカル青木、リードギター鈴木、ドラム叶具、サックス矢野という

編成だった。

バンド演奏が終わったあと、バンドメンバーは舞台袖にはけ、

かわりに同盟員が5人ほど出てきた。

その手にワインボトルを持って。

柏崎(殴られる…!!)

そう思った瞬間、

パパパパーン!!!

柏崎「……??」

クラッカーの破裂音だった。

同盟員「おめでとう、我々の完敗だ」

雪「皆さん…!」

雪が感動で涙ぐんでいる。

同盟員「新婚旅行は我々が紺野さんのために積み立てた貯金で行くといい」

柏崎「先輩…!!」

雪「ありがとうございます!」

かくして、礼英に職場恋愛結婚の夫婦が誕生した。

その後、礼英に職場結婚ブームが訪れることになる。

鈴の引っ越し

(某県郊外 完の家の玄関)

鈴「おじゃまします…」

和「これからはただいまでいいのよ」

鈴「ただいま帰りました」

1月は最も引っ越しが少ない時期なので、

予算に余裕を持たせたかった鈴はこの時期に

完の家に引っ越してきた。

以外と少ない荷物を持って。

家財道具の大半は処分した。

大量にあった同人誌も大半は売り、

思い入れの強い物だけを残した。

完「服以外の荷物は了の部屋に置いてください」

鈴「服はどうするんですか?」

完「うーん…」

和「了の部屋でいいんじゃないの?

  下着だけ完の部屋に置けば…

  でもそれじゃ不便かしら

  完の部屋がもうちょっと広ければねえ」

完「とりあえず服は僕の部屋に置いてください。

  後のことは後で考えましょう」

鈴「はい」

(完の部屋)

鈴「やっぱり…ちょっと無理がありますかね…」

完「新しく洋服箪笥を買いましょう。

  問題はどこに置くかですが…

  そうだ、この学習机を処分してここに置きましょう」

鈴「ええ!?いいんですかそんなことして!?」

完「草餅さんがいれば一人で机に向かうこともなくなるでしょうし」

鈴「ということは…フヒヒ…」

完「昼間から不埒なことを考えていないでしょうね?」

鈴「ばれました…」

完「まったくもう、草餅さんは」

完がゆるく拳を握って軽く鈴のおでこにこつんとする。

完「めっ、ですよ」

そう言った完の顔はほんのり赤く色づいていた。

鈴(うさぎさんかわいいいいいいいいいいいい)

萌え死んでしまう鈴であった。

完「草餅さん?どうしました?草餅さん?…鈴さん?」

鈴「はっ、なんでもありませんなんでも!!」

へなへなと床に手をついていた鈴であった。

(某県郊外 マンション801号室)

了「へえ、柏木さん引っ越し済んだって?」

携帯電話で了が完と会話していた。

了「学習机処分するんだー、あれもう長いもんね」

完「かわりに草餅さんの洋服箪笥を置くんだ」

了「ああー、それでか」

完「ところで了、草餅さんの同人誌が思ったより

  少ないんだけど…」

了「ある程度処分したんじゃない?」

完「気の毒なことさせちゃったなあ…」

鈴「全部持ち込んだら中畑先生の部屋の床が抜けます!」

完「わっ」

了「そんなに大量にあったんだ…」

突然会話に割って入る鈴であった。

完「今から業者に頼んで机処分するから」

鈴も完も今日は休みを取っていた。

了「うん。わかった。じゃあまたね~」

完「またね」

完は携帯電話を操作して通話を切った。

完「そんなにあったんですか鈴さんの同人誌」

鈴「量の管理人さんに注意されたことがあります…

  床が抜けそうだからどうにかしてくれと…」

完「そんなことまで口出ししてくるんですかあの寮は」

鈴「実際床が抜けたら死活問題ですから…

  それも同人誌で…」

しゅん、と首をうなだれる鈴であった。

鈴「でも、どうでもいいのに買っちゃった物も

  多くありましたし、思い入れの強い物だけ残って

  すっきりしました」

完「同人誌ってどうでもいいのに買う物なんですか?」

鈴「表紙と内容が違ったりすることもあります」

完「詐欺じゃないですか」

鈴「表紙詐欺ですよう…私の好きなキャラが表紙にいたから

  買ったのにそのキャラだけいなかったりとか…」

完「訴えて勝てますよそれ」

鈴「もともと二次創作自体がグレーなので訴えたりは

  しませんがけっこう悲しかったです…」

完「僕なら作者に抗議しますけどね」

鈴「事を荒立てたくないので…」

完「草餅さんは優しいんですね」

鈴「いえ、単なる自己保身です」

苦笑する鈴。

その頃、情技と最終で打ち合わせがあった。

完と鈴の勤務時間帯を同じにするという計画が

持ち上がっていたのだった。

医療機関礼英 情技第1談話室)

如月「あれですね、これで最終と情技がもっと仲良く

   なるといいですね」

卯月「そうだねえ、また合コンでもすればいいと思うよ」

如月「どうも最終の医師は最終の看護師にあまり

   興味がないみたいですし…」

卯月「紺野さん以外はどうでもいい感じだねえ

   その紺野さんも柏崎先生と結婚しちゃうし

   諦めて情技の看護師と結婚すればいいのに」

如月「そううまくいけばいいんですけどねえ…」

(翌日 医療機関礼英 最終医科学研究所内 廊下)

卯月「やあ中畑先生、ご婚約おめでとうございます」

完「ありがとうございます」

卯月「ふたりで一緒に通勤できるように、

   勤務時間帯一緒にしておいたから」

完「本当ですか?それは助かります」

卯月「もっと感動して見せてよ~~」

完「ええと…本当にありがとうございます」

医療機関礼英 情報技術開発室 廊下)

如月「やあ柏木さん、ご婚約おめでとう」

鈴「ありがとうございます」

如月「最終の中畑先生と勤務時間帯一緒にしておいたから」

鈴「ええ!?本当ですか!?いいんですかそんなことして」

如月「医師も看護師もいっぱいいるんだから大丈夫だよ」

鈴「ありがとうございます!」

如月「最終の中畑先生の車でここまで通いなよ」

鈴「そうさせていただけると嬉しいです」

如月「きっと喜んで運転手買って出ると思うよ」

鈴「そうでしょうか…」

如月「帰ったら相談してみたら?」

鈴「そうします」

如月と鈴が別れた後、ロッソが鈴に寄ってきた。

ロッソ「ね?私の言った通りだったでそ?」

鈴「ロッソ大当たりー!勤務時間同じになったよー!」

ロッソ「礼英ならこのくらい当然」

当然、柏崎と雪の勤務時間帯も同じになっているのだった。

ロッソ「ね、いつ子供作るの?男の子がいい?女の子がいい?」

鈴「まだしばらく子供は考えてないけど、

  男の子と女の子一人ずつがいいなあ…」

ロッソ「これからはヤり放題だね!」

鈴「ちょっと!誰かに聞かれたら…」

青木「草餅さん、バイブどこにあるかしらない?」

鈴「きゃああああ!!!!」

青木「うわああ!!どったの!?」

ロッソ「青木先生が急に話しかけるから驚いたんじゃないすか」

青木「ごめんごめん、欲求不満の患者さんがいてさ、

   バイブ欲しいって言うんだ、どこにしまってあるんだっけ?」

鈴「こちらです」

鈴は青木をナースセンターにある棚に案内した。

青木「でかいのがイイって言ってたな…」

マカポー「コレなんかイイんじゃナイカ?パールも入ってるゾ」

青木「うわでかっ!!外人かよ!?もうちょっと小さめのも

   念のために持っていこう」

情技での日常は、鈴が引っ越しても変わりなく流れていく。

最終でもそれは変わりない。

医療機関礼英 最終医科学研究所 廊下)

二宮「よー中畑、草餅さん引っ越してきてヤりたい放題だって?」

完「最後のは余計だよ、無事に引っ越しは済んだけど」

二宮「いいなー、どうせ勤務時間帯も一緒なんだろ?」

完「どうして知ってるの?」

二宮「柏崎がそうなったばっかりだからな」

完「ああ、なるほど」

二宮「あーいいなーセックスしてぇー」

完「二宮もいい加減相手見つけたら?

  二宮だったらよりどりみどりでしょ?」

二宮「オレも情技の女と結婚しよっかなー

   オタク趣味にはそこそこ理解あるつもりだし」

矢野「中畑婚約おめでとー」

完「ありがとう矢野」

矢野「オレにも将来を誓い合った彼女がいたんだけどさ…

   いろいろあって振ったんだよ…

   中畑は草餅さんのこと捨てたりすんなよな?」

完「そんなことしないよ、もしそんなことしたら

  この先一生出会いがないよ」

二宮「いやわかんないぜ、中畑ってけっこう情技の女の間で

   人気あるって噂きいたぞ」

矢野「なにそれ初めて聞いた」

完「僕も」

二宮「自覚なかったのかよ?罪だな~」

完「そういえば柏崎は?」

矢野「紺野さんとドイツ」

二宮「もう紺野さんじゃなくなるんだよな…」

矢野「嫌だあ~紺野さんのこと柏崎さんって呼ぶの嫌だあ~~」

二宮「あーオレも。紺野さんで慣れちゃってるしなあ」

完「僕も…」

礼英の平和な日常は続いていくのだった。

秋祭りの日

龍崎「秋祭り、はっじまーるよー!!」

(午後 国際医療福祉機関礼英 講堂)

大歓声に続いて、ペットボトル大合奏が始まる。

舞台袖では、青木らのバンドと琉球貨物がスタンバイ。

青木「あ、あ、青木です!サインください!」

琉球貨物「はーい、お、CD買ってくれたんですね~」

青木「出たのは全部持ってます!」

琉球貨物「懐かしい~これ初CDじゃん感動~~」

青木は興奮していた。

青木「オレたちもバンドやるんで聞いてください!」

鈴木「プロさんの前で緊張するなあ」

琉球貨物「いやいやリラックスでいきましょうよ」

ペットボトル大合奏は叶具のドラムに合わせて

軽快にリズムに乗っていた。

客席では。

完「わ~…大きいのから小さいのまでそろってる」

了「人数が数え切れない」

優「KINGくんかなり遠慮して叩いてるね」

了「大丈夫、次で爆発する」

ペットボトル大合奏団が舞台からはけると、

今度はエレキベースを持った青木、

リードギターを持った鈴木、

アルトサックスを持った矢野が現れた。

青木「めんどくさい歌、いきます!!」

めんどくさい歌が始まると、舞台袖左右から

二宮と長瀬が出てきて踊り出す。

矢野のサックスソロに続いて叶具のドラムソロ、

そこから青木のターン。

青木「めんどくさい!めんどくさい!」

会場がめんどくさいで埋め尽くされる。

青木「めんどくさい!」

会場「めんどくさい!」

そこになんと琉球貨物が乱入してきた。

琉球貨物「めんどくさい!めんどくさい!」

青木「ちょwwめんどくさい!めんどくさい!ラスト!」

全員「めんどくさーーーーーーーい!!!」

会場全体がわっと盛り上がった。

琉球貨物「琉球貨物、いっくよー!」

 やってやるぜ礼英(礼英!)

 なおせない病気なんかねぇ

 やってやるぜ礼英(礼英!)

 見えないモノなんかねぇ

 やってやるぜ礼英(礼英!)

 聞こえない言葉なんてねぇ

 やってやるぜ礼英(礼英!)

 話せないヤツなんていねぇ

 礼英!医療のパラダイス

 どんな患者も朝飯前だ

 礼英!患者のパラダイス

 どんな病気も今すぐきやがれ

 あきらめんな あきらめんな

 あきらめたら試合は終了だ

 あきらめんな あきらめんな

 ここには医療のすべてがある

 あきらめんな!あきらめんな!

 あきらめんな!あきらめんな!

今度は会場が「あきらめんな」で埋め尽くされた。

全員「あきらめんな!あきらめんな!」

龍崎「うっそこれ書き下ろし!?琉球貨物イカす~!」

琉球貨物「みんなありがとー!最後にー!」

全員「あきらめんなーーーーーー!!」

琉球貨物「今日の曲のCD売ってます!よかったら買ってね!」

青木「質問!どこで売ってますか?」

琉球貨物「総合病院の売店に置かせてもらってます☆」

青木「今すぐ買いにいきます!」

会場がどっと笑いに包まれた。

龍崎「本日の出し物は以上です!

   患者さんも関係者の方々もそうでないかたも

   今日はゆっくり楽しんでいってくださいね!」

講堂から人がぞろぞろと出ていく。

今日は秋祭りということもあり、

礼英の息のかかった大学なども庭で出店をだし、

フリーマーケットも行われていた。

(国際医療福祉機関礼英 庭園 フリーマーケット

ロッソ「お手にとってごらんください」

客「わ~これきれい~ひとつください」

ロッソ「500円になります」

客「安っ!いいんですか?」

ロッソ「じつはこれ失敗作なんです」

客「え!?どこがですか!?」

ロッソ「ここのところ、レジン液が漏れてしまいました」

客「ぜんぜん気になりませんよ!」

ロッソ「ありがとうございます」

了「へ~ロッソさんこういうの作るんだ」

優「きれい~私も記念に何か買っていこうかな~」

ロッソ「優さん!優さんが身につけてくれるなんて!」

ロッソはシートの上で荒ぶる鷹のポーズをした。

ロッソ「光栄であります!」

優「千尋ちゃん落ち着いてwww」

二宮「あれ~いないな~…どこいったんだろ」

矢野「誰探してんの?」

二宮「柏崎」

矢野「紺野さんと一緒に仕事だよ」

二宮「はあ!?今日は祭りだぞ?」

矢野「ふたりで留守番買って出たんだとよ」

二宮「リア充め」

(国際医療機関礼英 庭園 栗の木の下)

マカポー「ouch!テヤンデェバーローチキショー」

長瀬「なにしてんのマカポー」

マカポー「陸生のウニがいたから捕獲を試みたが痛いでござるよ」

長瀬「それは栗だwwwwww」

マカポー「おお、マロン!こんなところに!!」

如月「栗拾い進んでる?」

マカポー「ウニみたいに痛いでス」

如月「栗はね~靴でこうやってイガをむいて…」

長瀬「おお、室長器用ですね!」

如月「中身だけ拾うんだよ」

マカポー「Oh my god !!知らなかった」

如月「ちなみにそこに植わってる柿の木は甘柿。

   みんなスルーして取らないんだよね」

マカポー「秋の味覚get!!柿ムシャア!うめえ!」

長瀬「マジかよ初めて知った」

龍崎「そんなマカポーくんのためにロマンスグレーの

   庭師さんつれてきたよ~」

庭師「柿の実に手が届かないって?オラの高枝切りばさみで

   ちょちょいのちょいっと、ほれ」

マカポー「栗祭りの次は柿祭りじゃあ!!」

(国際医療福祉機関礼英 庭園 噴水)

完「今の時期は放水してませんね」

鈴「これはこれで」

完「出店で何か買ってきましょうか」

鈴「そうですね」

完「うーん…どれにしたらいいかわかりません…」

鈴「ベビーカステラ食べたいです!」

完「ベビーカステラ40個ください」

出店「40個で1000円になります」

完「すみません、一万円札くずれますか?」

出店「キビシイっすね~」

鈴「ここは私が!はい千円札です」

出店「助かります」

噴水のへりに腰掛けてベビーカステラをつまむふたり。

完「今頃了はなにしてるかな?」

鈴「優さんとご一緒でしたっけ」

完「すみません、ベビーカステラのお代…」

鈴「いいえ、いつもおごってもらってばかりですから」

(国際医療福祉機関礼英 総合病院 売店

青木「琉球貨物の今日のCDください!」

店員「こちらですね。GO!礼英」

青木「それですそれです」

店員「500円になります」

青木「やすっ!!」

店員「なんでも今日のために手焼きで作ったとか…」

青木「手焼き!?10枚ください!!」

店員「ちょww5000円になりますが」

のちに琉球貨物の「GO!礼英」はプレミアがついて

マニアの間で高値で取引されることになる。

有頂天高原旅行記 最終回

(ホテル前)

完「では帰りましょうか」

鈴「旅行、楽しかったですね!」

完「本番はここからです」

鈴「え?」

完は携帯電話を取り出すと、自宅の母に電話をかけた。

完「もしもしお母さん?

  今から帰るから。

  …うん。だから夕食は3人分用意しておいて。

  それじゃあ」

完が電話を切ると、鈴はきょとんとしていた。

完「これから僕の実家に寄ります」

鈴「え!?」

完「大丈夫です。僕の母はそんなに厳しくありませんよ。

  バレンタインデーのチョコケーキも

  おいしく味見していましたし」

鈴「でででででも私こんなラフな格好で」

完「有頂天高原で遊ぶならそれが普通です」

(某県 国道)

鈴「どうしよう…顔が好みじゃないとか言われたら…」

完「僕が母に軽くビンタしておきますから大丈夫です」

車内ではジャズピアノが静かに流れている。

完「母がどう言おうと僕の気持ちは変わりません。

  もし母が認めなくても、僕は鈴さんと駆け落ちします」

鈴「うさぎさん……」

鈴は感動した!

しばし無言の時が流れる。

鈴(うさぎさんとこうしてると安心する…)

鈴は隣の完の顔を見ていた。

完「ん?僕の顔に何かついてますか?」

鈴「いっ、いえ、なにも…ついクセで」

完「運転席の人を凝視するのがクセなんですか?」

鈴「うさぎさんを見つめるのがクセです」

完「……………………」

赤信号で車が止まる。

完は、自分のほうをむいたままの鈴に軽いキスをした。

鈴「なっななななにするんですかぁ!」

完「いつぞやのふいうちのおかえしです」

鈴「え、ふいうちなんてしましたっけ?」

完「瞼に何かついていると嘘をつかれました」

鈴「そんな昔のこと根に持ってたんですか」

完「僕にとってはそんなに昔ではありません」

そうこう言っているうちに信号がかわる。

中畑家はもうすぐそこだった。

(某県郊外 中畑家 リビング)

完「ただいまー」

和「おかえりなさい、お連れの方は?」

完「同じ職場の柏木鈴さん」

鈴「こ…こんばんは…」

和「あらーかわいらしいこと、鈴ちゃんっていうの?」

鈴「かわいらしいだなんてそんな…」

完「とりあえずあがりましょう」

鈴「はい」

完と鈴は玄関を上がり、ダイニングテーブルについた。

和「ちゃんと3人分用意したわよ、鮭のマリネ」

完「ありがとう。僕からのおみやげはこちらの鈴さん」

鈴「えっ!?」

完「結婚を前提におつきあいしてます」

和「あらあらまあまあ、お祝いしなくちゃ」

鈴「まっまだ早いですよぉ」

和「またまたぁ、有頂天高原で仲良く旅行してたんでしょ?

うちの完をよろしく頼むわね。

いろいろと不器用な子だけど根はやさしいのよ」

完「どうせ包丁もろくに持てないよ」

玲央医大では3食つきの寮に入っていたため、

完には料理の経験がほとんどなかったのだ。

鈴「わ、私も料理の腕はほめられたモノではありませんから…」

和「チョコケーキおいしかったわよ~気が向いたら

  バレンタインじゃなくても作ってほしいわ」

和は夕食をテーブルに置きながらそんな冗談を飛ばす。

鈴「あのこれ、つまらないものですが…」

鈴は紙袋から有頂天高原土産のクッキーの詰め合わせを

和に差し出した。

和「あらあら気を使わせちゃって…

  食後にみんなで食べましょ。

  書斎にもあとでお供えしなきゃね」

完「それは僕がやるよ」

和「あらそう?じゃあ、せきについたらいただきます」

完・鈴「いただきます」

食事が始まる。

席順は以下の通り。

鈴 完

和「若いっていいわね~~」

並んで座る二人を見比べながら和は上機嫌だ。

和「私とお父さんも、よく有頂天高原でデートしたのよ」

鈴「本当ですか?」

和「本当よ。そのころの写真が今でも残ってるわ」

完「父と母は本当に仲良しで、見ているこっちが

  恥ずかしい夫婦でしたよ」

鈴「見られないのが残念です。お悔やみ申し上げます」

和「今は書斎の本が忘れ形見ね」

そんな会話をしながら食事は進む。

鈴「おいしいですね、鮭のマリネ」

和「よかった~。完のお気に入りなのよ」

完「僕の誕生日は決まって鮭のマリネです」

鈴「私も作れるようにならないと…」

和「あらあらいいのよ、おうちのことは私にまかせて。

  鈴ちゃんだってお仕事あるでしょ?」

鈴「それは…完さんと相談の上で…」

完「うーん…鈴さんひとり増えたところで

  家計に負担はないよねお母さん」

和「そうねえ、家はもう立ってるしローンも終わってるし」

完「鈴さんさえよければ、家に入ってもらえると

  母も退屈しないでしょうし…

  でも、急に辞めるわけにもいきませんね」

鈴「私の後任が見つかれば、辞めるの自体は簡単ですが

  …私、今のお仕事気に入ってるんです」

和「そうよね、無理して辞めることないわ」

完「お母さん、毎日ハムスターとしか会話できなくて

  寂しいって言ってたような気がするんだけど」

鈴「えっ、その…お母様ってハムスターと会話できるんですか!?」

和「あっはっはできないわよいやだわ鈴ちゃんったらうふふ」

和は笑いのツボに入ってしまった。

和「うふふ、とにかく今のお仕事気に入ってるなら

  精一杯がんばってちょうだい。

  おうちのことは今まで通り、そこに鈴ちゃんが増えるだけ。

  いいわね、完?」

完「僕はいいけど…鈴さんは?」

鈴「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

和「あら大変、肝心なこと忘れてたわ」

完「何?」

和「鈴ちゃんはハムスター平気かしら」

鈴「平気ですよ。ハムスターかわいいですよね」

和はその一言を聞いて胸をほっとなで下ろした。

和「うちには今6匹のハムスターがいるのよ、見る?」

鈴「6匹!?見たいです見たいです!」

和「みんなでクッキー食べたら、見に行きましょ。

  その頃にはみんな起きてくるはずだから」

そしてお茶の時間が始まる。

和「鈴ちゃん、完とはどうやって知り合ったの?」

鈴「完さんの弟さんの紹介で…」

完「奇妙な合コンさせられて知り合ったんだ」

和「あらあらどんな奇妙な合コンだったのかしら」

完「鈴さん以外名札つけてない合コン」

和「ずいぶんとあからさまねえ」

鈴「そのあからさまな合コンで草餅とあだ名をつけられました…」

完「僕はうさぎさん」

和「ちょっwwwどこから出てくるのその名前www

  草餅…うさぎ…ぷっ、うっふふふあははは」

完「ここは笑うところだから気が済むまで笑っていいよ」

鈴「職場でもそう呼びあってますしね」

和「何かの暗号みたいっくふふふ」

完「とはいえ職場は別々だから食堂でしか会えないけど」

和「あら、最終の看護師さんじゃないの?」

鈴「私は情技の看護師です。だから同じ情技の弟さんの紹介で…」

和「情技にいるの?お父さんに会ったことあるのかしら」

鈴「私は担当ではありませんでしたが、お顔を見たことは

  食堂で何度かありました」

和「うちの完、お父さんに似てるでしょ」

鈴「言われてみると…そうですね」

和「でも、あの特異体質は遺伝しなかったのよ」

鈴「弟さんのアレですか」

和「知ってる?おもしろいのよねアレ」

完「まったくあの歳になってまでいじられてるなんて

  了は職場を間違えたんだよきっと」

そんなことを話しながら、お茶とクッキーが三人の胃の中におさまってゆく。

和「さてと。みんな起きてきたかしら」

鈴「ハムスターですね!楽しみです!」

完「何匹いるんだっけ?」

和「おじいちゃんおばあちゃんおとうさんおかあさん男の子女の子で6匹よ」

鈴「三世代!」

(某県郊外 中畑家 元了の部屋)

了の部屋の東側の壁面には、ラックが備え付けられ

そこにハムスターのケージが6つ綺麗に並んでいた。

鈴「みんな一人部屋なんですね~うわ~回ってる回ってる」

和「その回し車で回ってるのがはじめちゃん。おじいちゃんよ」

鈴「おじいちゃんですか…」

完「おじいちゃんと孫で3ヶ月くらいしか離れてないんだっけ?」

和「そうよ」

鈴「ええ!?」

そんな会話をしていたら、すっかり遅くなってしまった。

和「鈴ちゃん、今日はここに泊まっていったら?」

鈴「え、でも…」

完「明日は僕の車で一緒に職場まで行きましょう」

和「明日はお荷物まとめてここに帰っていらっしゃいね」

完「気が早いよ和さん」

鈴(うさぎさんちにお泊まり…うさぎさんの部屋…!)

鈴は興奮していた。

(某県郊外 中畑家 完の部屋)

完「狭いシングルベッドですみません」

鈴「いえいえおかまいなく…」

まず目についたのは机と本棚。

机の上は整然としているのに、本棚のまわりには

本タワーがいくつかできていた。

完「乱読するので散らかってしまって…あとで片づけます」

鈴(完さんのいい加減な一面!)

完「鈴さんはその間にお風呂…あ」

鈴「なんですか?」

完「下着の替えとか足りませんよね…」

鈴「大丈夫です。念のため1泊分よけいに持ってきてますから。

ただ…服は今日と同じになってしまいますけど…」

完「ハンガーにかけてファブリーズでもしておきますか」

鈴「そうですね」

鈴は本のタイトルを読もうとしたが、

鈴(…みんな英語だかドイツ語だかで読めない…)

挫折した。

学習机にはノートパソコンが置かれていた。

鈴(うさぎさんのネット履歴見たい…)

完「あ、星空の写真を渡す約束でしたね」

鈴「そ、そうでしたそうでした」

完はノートパソコンを機動し、デジカメから記録メディアを取り出した。

メディアをノートパソコンに差し込むと、

自動で写真がノートパソコンに取り込まれてゆく。

それが終わると、

完「鈴さんのデジカメのメモリーカードを貸してください」

鈴「はい」

鈴はこの時、旅行前にデジカメの画像を全削除しておいた自分に感謝した。

コスプレ画像がたくさん入っていたのである。

完は鈴の写真を取り込むと、さきほど取り込んだ星空の写真を

鈴のメモリーカードにコピーした。

完「これでOKですね。なにもしないのも悔しいので、

  フェイスブロックには蝶の写真でもアップしましょう」

完は慣れた手つきでフェイスブロックに蝶の写真をアップロードした。

「渓流の蝶」という題をつけて。

鈴「綺麗ですね…」

そのとき、部屋のドアがノックされた。

和「お風呂わきましたよ~」

完「はーい」

いつものクセでドアに向かいそうになる完だったが、

完「一番風呂は草餅さんに譲ります」

鈴「えっ、いいんですか」

完「父が生きていた頃、僕は二番目でした。だから…」

鈴「…わかりました」

完「タオルなどの場所は母に聞いてください」

鈴「はい」

鈴は部屋をでて、階段を降りていった。

完のフェイスブロックに、早速コメントがついた。

了:夏休みおめでとう

二宮:やることやったんだろうな?

矢野:幸せになれよ!

完(そういえば柏崎はドイツか…)

柏崎のフェイスブロックは大変なことになっていた。

題:結婚します

柏崎と雪が並んで立った写真がアップされていた。

写真の下には

「同盟規約の最終項目を参照のこと」

と書かれていた。

A:くやしいが君の勝ちだ

B:絶対に幸せにすること

など、礼英最終の医師からだと思われるコメントがずらりと並んでいた。

龍崎:おめでと~~☆

卯月:禁酒令は続行です。お幸せに

完「みんなマメだなあ…」

二宮:やりやがったなこの野郎!(笑)

矢野:一発殴らせろ!(笑)

完も一文書いた。

完:結婚式には呼んでください(笑)

(笑)は二宮と矢野にならってつけただけで

深い意味はなかった。

(某県郊外 中畑家 浴室)

鈴(シャンプーもリンスもひとつずつしかない…

  うさぎさん、母上のシャンプー使ってるんだ…

  そして今日は私もこれを使うんだ…!)

同じシャンプーの香りをまとって職場にゆく二人。

鈴は妙にドキドキしていた。

鈴(うさぎさんと同じにおいになれる!なってしまう!)

シャンプーもリンスもボディソープも

鈴のときめきを爆発させる材料になってしまう。

鈴(早く洗わなきゃ…)

鈴は念入りに髪を洗うと、リンスに手をのばした。

鈴(あ…すごいいい香り…)

シャンプーの時は気づかなかったが、やけに香りのたつコンディショナーだった。

鈴(これってひょっとしてあのイエースイエースイエース!のアレかな…)

その香りをまとった完を想像してみる。

鈴(最終のお医者さんがときめいちゃうようさぎさん!)

そのあとは光の早さで完受けの妄想を走らせるのだった。

入浴後、鈴はドライヤーで髪を乾かし、完の部屋へ向かった。

(某県郊外 中畑家 完の部屋)

ノックの音。

鈴「お風呂あがりましたー」

完「お疲れさまでした」

フェイスブロック巡りをしていた完は、

ノートパソコンをそのままにして立ち上がった。

完「僕がお風呂に入っている間お暇でしょうから

  インターネットでもしていてください」

鈴「いいんですか?」

完「セキュリティソフトは入れていますが、

  あまり危ないサイトには飛ばないでくださいね」

鈴「はい」

完「では、行ってきます」

完は階段を降りていった。

鈴(さてさて…)

鈴は完のネットサーフィン履歴を参照してみた。

ips細胞、再生医療などの医療情報などが大半で、

あとはロシアンブルーの画像が大量に出てきた。

鈴(ロシアンブルー、本当に好きなんだなあ…)

不用心なことに、フェイスブロックまで

ログインしたままになっていた。

鈴(こ…これはいじらないほうがいいよね)

鈴は詮索をやめ、自分のツイッパーを開いた。

そこに完からもらった星空の写真をアップした。

「有頂天高原最高でした!」とのコメントをつけて。

ロッソ:夏休みおめでとう!

鈴:ありがとう!楽しんできたよ!

ピアノ:リア充おつ~!!

鈴:うさぎさんかわいいよハァハア

プリモ:おみやげよろしく!

鈴:ふっ、ぬかりはない

そのコメントと一緒に、携帯で撮ったクッキー詰め合わせをアップした。

ツイッパーだけなら携帯でもできるので、鈴は別のサイトを見ることにした。

鈴(pixyなら大丈夫かなあ…ああでも大量にBL画像あるし…)

鈴は完のノートパソコンで一体なにを見たらよいのかわからなくなっていた。

鈴(…ハムスターの様子でも見に行こうっと)

鈴はパソコンをそのままにして部屋を出ていった。

同時に完が階段を上ってくる。

完「ご用事ですか?」

鈴「ハムスターが見たくなったので」

完「一緒に見ましょうか」

鈴「はい」

ふたりは元・了の部屋に入った。

となりあったケージで、顔を寄せあい

挨拶を交わしているかのように見えるハムスター。

完「一緒にしておくと、たちまち増えますから」

鈴「そうですよね…」

完「唯一このおじいちゃんハムスターだけ、さわれます」

鈴「他の子はダメなんですか?」

完「いえ、僕が恐がりなだけです」

鈴「ハムスター、さわってみたいです」

完「じゃあこのおじいちゃんを…おいで」

ケージの扉を開けると、「はじめ」がのそのそと

完の手の上に乗ってきた。

完「はい鈴さん、パス」

鈴「はい」

受け渡されるハムスター。

鈴「かわいいですね~~~」

完「ええ。母も親バカならぬハムバカですよ」

鈴「完さんみたいな息子さんもいて、ハムスターもいて、

  お母上は幸せですね」

完「いずれは鈴さんもここに…なんて…だめですか?」

鈴「私、結納金を稼がないといけません」

完への結納品といえば、高級な腕時計だろう。

鈴の給料では当分かかりそうだった。

鈴「うさぎさんの腕にはロレックスを…」

完「父のお下がりですがもう持っています」

鈴「あああ……」

完「おっと」

鈴の手からハムスターが滑り落ちそうになっていた。

そこを完がキャッチする。

完「ハムスターはこのくらいにして、そろそろ寝ますか」

鈴「はい…」

若干気落ちした鈴とともに、完は自室へ戻った。

(某県郊外 中畑家 完の部屋)

完「あらためまして狭いベッドですが…」

鈴「ふたりくらい寝られますよ!あ、でも

  うさぎさんがベッドから落ちないように

  うさぎさんは壁側で…」

完「いいえ鈴さんが壁側で。僕はこのベッドから落ちたことは

  一度もありません」

鈴「私が落としちゃうかもしれないじゃないですか」

完「そのときは一緒に落ちましょう」

鈴(心中!)

完「あと、母は防音室で眠りますが今夜は禁欲ということで」

鈴「ぼ、防音室?」

完「父が弟と同じ体質ですから…その…声が」

鈴「ああ…なるほど…でもそれで防音室ですか…」

ふたりでベッドに腰掛けて話していると、

完が壁掛け時計の時刻に気づいた。

完「もうこんな時間ですか。パソコンは終了して

  そろそろ僕たちも寝ましょう」

鈴「はい」

狭いベッドにふたりでもぐりこむ。

必然的に二人の体は密着することになる。

鈴「息子さんこんばんは」

完「おやすみなさい」

鈴「うーさーぎーさーーん」

鈴の手が完の股間にのびる。

完「ダメです。下手にさわると悪化します」

鈴「私の看病じゃダメですか?」

完「良すぎてダメです」

鈴「どっちなんですかそれ!?」

完「どっちにしてもダメです。さあ、寝ますよ」

鈴「うさぎさんのケチ…意地悪……」

完「もう夜遅いんですから寝ますよ草餅さん」

鈴「ぶーぶー」

完「ああ草餅さんが豚になってしまわれた…」

鈴「違いますよ!ブーイングです!」

そんなとりとめのない会話をしながら

ふたりはいつしか眠りに落ちるのだった。